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腎ぞうでつくられるタンパク質が老化した脳を活性化する!

漠然と「年をとることが怖い」といった不安を抱えてる方。
「最近、物忘れがひどくなってしまった」といった悩みがある方。

そんな皆様に朗報です

現在、老化による認知機能が低下してしまってもつける薬が存在しない、という大きな問題があります。しかし先日発表された研究で高齢者の脳機能の若返りに有望な手段が見つかったことが明らかになりました。

イェール大学とカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者たちがNature Aging誌で発表した研究で、klothoタンパク質の注射が高齢のサルの認知機能を改善し、その効果が2週間持続しました*1 。よって、この研究で認知機能の低下に対する新たな治療法の可能性が出てきました!

実はこのklothoタンパクといわれるタンパク質は、1997年に東京の国立神経科学研究所の病理学者、黒尾誠氏*2 によって初めて発見されました。彼は腎ぞうにある、klothoタンパク質が少ないマウスが人間の老化に似た症候群を持っていることが見つけました。これらのマウスには早期に心臓病、がん、認知機能低下、臓器不全を発症していたのです!対して、多くのklothoを生成していたマウスは、通常のマウスよりも20〜30%も長く生きられることも判明しました。

今回の研究ではその発見を元に、デュバル氏とその共著者たちはアカゲザルにklothoタンパク質を与えることで同じような効果がでるのかどうかを調査しました。人もアカゲザルも年齢を重ねるにつれて作業記憶 (Working Memory) が低下します。なので、年寄りの18頭のアカゲザルの作業記憶能力をテストしました。彼らは多数の区画の中に隠されたお菓子の場所を覚える、といった作業記憶を試されるテストをタンパク質の投薬から二週間の間に受けました。

すると、結果は二週間という期間において記録が投薬前と比べて記憶力が上がっていたことがわかりました!デュバル氏はこの結果からklothoタンパク質がなくなっても認知効果が長く持続する可能性があると予想しています。

もしかしたら、klothoタンパクが脳内のニューロン間の接続に影響を及ぼすことで、「記憶をよりよく受け取り、保持するためにシナプスを再設計する」という働きがあるのかもしれないということです。

Short Note: 脳はニューロンという脳細胞でできている組織です。その細胞の間にあるのがシナプスで、そのシナプスが脳内の情報伝達において重要な役割を担っています。情報伝達というのは様々な情報が感覚細胞から集まり、脳で情報を処理するために起きます。そして、認知機能はその情報伝達と深く関わっています。
でも、その認知機能は老化をするにつれてその機能が低下してしまいます。よって、そのklothoタンパクがもしかしたら認知機能の再生を助けてくれるかもしれない、という発見でした。

ヴァーディン氏は、klothoタンパクが人体実験で使っても大丈夫か確認したのち、最初に投与されるのはすでに認知機能の低下が見られる高齢者になる可能性が高いと考えています。そして、その結果さらに安全で効果的であることが証明されれば、若い人にも早いうちから認知症対策として投与される可能性があります。

このklothoタンパクは錠剤として投与できないため、毎週注射するタイプの薬剤として製剤化することが考えられているようです。

薬が苦手な人には嬉しいですが、注射が苦手な人には残念なお知らせかも…
でも、この研究が少しでも読んでくださった人の老化に対する恐怖感が少しでも薄れたらいいなと思います!

では、これにて初めての投稿から2回目の投稿を締めます。
最後まで読んでくださりありがとうございました!


参照文献:

元論文:
1*:Castner, S.A., Gupta, S., Wang, D. et al. Longevity factor klotho enhances cognition in aged nonhuman primates. Nat Aging (2023). https://doi.org/10.1038/s43587-023-00441-x
2*:黒尾誠. (1998). 新しい老化モデルマウス klothoの開発. 日老医誌 , 35巻5 号(p. 353-357). https://doi.org/10.3143/geriatrics.35.353

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