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WHOによる新しい発表、”アスパルテームに発がん性がある”は本当?
以前の記事で心臓病が歯磨きで予防できる話から、母にとにかく気をつけるように言われていた私の幼少期について少し話しましたが、あの頃はお菓子類やソフトドリンクを食べたり飲んだりすることをかなり厳しく禁止されていたことを思い出しました。
当時、確証もないような話がたくさん飛び交っていたのもあり、かなり気をつけていたと言われました。2000sの時代には人工甘味料に対して人々が過剰に警戒をしていた時だった*1、と知った時には納得しましたがやっぱり友達が食べていたお菓子やジュースに憧れていた幼い自分を思い出すと情報に振り回されないことも大事なのだと実感します。
ということで、数時間前にWHOより発表された「アスパルテームの発がん性の検証結果」が出されましたので、それについて書いていきたいと思います。
アスパルテームは砂糖の約200倍の甘さを持つ低カロリーの人工甘味料で、白色の無臭の粉末で、世界で最も広く使用されている人工甘味料です。天然甘味料と比べ安価なものなので、1980 年代以来、ダイエット飲料、チューインガム、ゼラチン、アイスクリーム、ヨーグルトなどの乳製品、朝食用シリアル、歯磨き粉、咳止め薬など、幅広い分野でのさまざまな食品および飲料製品に広く使用されている人工 (化学) 甘味料です。
癌は世界的に主要な死因の一つとして、その原因を解明をしようと、”発がん性”のものはどういったものか多くの研究が世にたくさん出ています。しかし、WHOによると、利用可能な科学文献を検討した結果、アスパルテームが癌やその他健康への影響に関する証拠には限界があることが指摘されました。
この調査にはWHOはもちろんのこと、”International Agency for Research on Cancer (IARC)"(国際がん研究機関)と"Food and Agriculture Organization (FAO)"(食糧農業機関)に所属する”Joint Expert Committee on Food Additives (JECFA)"(食品添加物に関する合同専門家委員会)が参加しました。
今回注目して欲しい点は、IARCとJECFAは、アスパルテーム摂取に関連する潜在的な発がん性の危険性およびその他の健康上のリスクを評価するために、独立した、ただし補完的なレビューを実施したということです。
IARC がアスパルテームを評価するのはこれが初めてであり、JECFA にとっては 3 回目でした。
以前まで国連の専門家によって 1981 年にアスパルテームの安全性を評価し、アスパルテームを過剰に摂取すれば発がん性の可能性があるということから”1日摂取量を体重1kg当たり40mg”として1 日の摂取許容量として承認されていました。
しかし、その証拠には制限があり、現在出されている論文からは確証がないということがわかりました。
WHOがこの結論に至った理由について、まずはIARCの見解をわかりやすく解説したいと思います。
"IARC classified aspartame as possibly carcinogenic to humans (Group 2B) on the basis of limited evidence for cancer in humans (specifically, for hepatocellular carcinoma, which is a type of liver cancer). There was also limited evidence for cancer in experimental animals and limited evidence related to the possible mechanisms for causing cancer."
(直訳)"IARCは、ヒトのがん(特に肝臓がんの一種である肝細胞がん)に関する限られた証拠に基づいて、アスパルテームをヒトに対して発がん性がある可能性があると分類しました(グループ2B)。また、実験動物における癌に関する証拠は限られており、癌を引き起こす可能性のあるメカニズムに関する証拠も限られていました。"
IARC Monographsと呼ばれる、人間にとって発がん性をもたらす環境要因を特定し、4段階に分類したものがあります。その段階には以下のように分けられています。
![](https://assets.st-note.com/img/1689300105994-Jm59b9TXIC.png?width=1200)
上からGroup 1は”確実に発がん性のある物質”として分類され、さらにGroup 2A、Group 2B、そして最後にGroup 3は”全く発がん性のない物質”として分類されます。
今回はアスパルテームが下から2番目のGroup 2B程度の危険性があるとされましたが、Group 2Bとされる3つに1つでも含まれる場合に規定されます。
• limited evidence of carcinogenicity in humans
• sufficient evidence of carcinogenicity in experimental animals
• strong mechanistic evidence, showing that the agent exhibits key characteristics of human carcinogens.
上記の内容を直訳すると、
• ヒトにおける発がん性の証拠は限られている
• 実験動物における発がん性の十分な証拠
•発がん物質の重要な特徴を示すことを示す強力な機構的証拠がある
したがって、IARCはアスパルテームの発がん性に関する限定的な研究結果から、”ヒトにおける発がん性の証拠は限られている”という点でこの人工甘味料の発がん性危険度レベルはGroup 2Bに決定されました。
それから、注意して欲しいのがこのIARC Monographsでは、ある物質が癌を引き起こす可能性があるかどうかに関する科学的証拠の強さを反映しており、特定の曝露レベルでがんを発症するリスクは反映していません。IARC の危険性評価では、あらゆる種類の暴露 (過剰摂取、職業病など) が考慮されます。
また、もうひとつの機関、JECFAによるリスクの評価についても書き残しておこうと思います。これは、特定の条件および暴露レベルの下で、特定の種類の危害、つまり癌が発生する確率を決定されます。
今回の調査を初めて行ったIARCは、さらに検討を行ったほうがいいものとして見解を発表しましたが、すでに3度調査を行ったことのあるJECFAからは、動物とヒトの研究における発がんリスクに関する証拠も検討し、アスパルテーム摂取とヒトの発がんとの関連性の証拠は説得力がないと見解を発表しました。
なぜなら、アスパルテームが200mg または 300 mg を含むダイエットソフトドリンクの缶の場合、他の食品源からの摂取がないと仮定すると、体重 70 kg の成人が 1 日の許容摂取量を超えるには1 日あたり9~14缶以上摂取する必要があります。
よって、WHOはアスパルテームについて、「人々が「かなり大量の」アスパルテームを摂取しても、何の悪影響も受けない」と結論づけました。
実はこの発表について日本語でも記事がすでに出ていたので見てみたのですが、
あれ、違う記事を読んだのかな?と一瞬戸惑いました。
その中で、
このニュース記事の方では詳細に書かれていたので、日本語で原文に近い記事を読みたい方はこちらの方が信頼性が高いので絶対こっちを読んでください。
対して、海外のニュース記事を翻訳して読める方は確認して欲しいのですが、これをきっかけにどれだけ日本と海外の情報格差がおきているのかをぜひ知ってください。
以上です。かなり長ったらしい、そして難しい内容の記事になってしまいましたが、日本で発表されたニュースに出た内容の質に軽くショックを受けたので今まで以上に真面目に書きました。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
参考文献:
引用サイト:
1* Rowe, K. (2020, January 6). 2020 Is Here | A Look Back at the Health Trends of the Last 20 Years! BrainMD Blog. https://brainmd.com/blog/health-trends-last-20-years
2*WHO. (2019, December 10). Preamble – IARC Monographs on the
Identification of Carcinogenic Hazards to Humans. Monographs.iarc.who.int. https://monographs.iarc.who.int/cards_page/preamble-monographs/
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