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カナダのヤンキーが酒もドラッグもバイクもケンカもやめられた訳

ロイはカナダに住むアスペルガーの高校生。

アスペルガーのためか感情のコントロールが難しく、やりたいと思ったら後先考えずに行動してしまう。そこにドラッグも加われば怖いものなしで、例えそれがどんなに危険なことでもやりたくなったらやってしまうのだ。

スケボーやチャリで車につかまって移動するのは日常茶飯事。そんな中、友人のピックアップトラックの前のバンパーにつかまりながらスケボーで移動してたら、スケボーがピューンとどこかへ滑っていってしまい、そのままピックアップトラックに足を跳ねられ、180度回転してボンネットとフロントガラスに激突!! 

車に乗っていた友人達は、ロイが死んだと思ってビックリ仰天!だがロイは無事で、アシッドでハイだったためか友人達の驚いた顔を見て笑っていた。しかも病院に行ってなぜ怪我したのか説明するのが嫌で、足の怪我は瞬間接着剤とガムテープの自己流応急処置で済ませたのだった。

バイクを手に入れてからはウィリーに夢中になった。ガールフレンドのメアリーを後ろに乗せてウィリーした時には、彼女は恐怖で大きな叫び声をあげ続け、降りた時には大号泣!! 二度とロイのバイクには乗ろうとしなかった。

そしてロイは背が高くてがたいも良かったため、上級生やフットボールチームの連中に絡まれてケンカになることもしょっちゅうだった。コミュニケーションが苦手ななアスペルガーの特性で、ぶっきらぼうになってしまい誤解されやすいせいもあるのだろう。

だが、ロイは小学生の頃からプロレスに夢中で動きの研究に余念がなかった。だからケンカを吹っ掛けられても体格差とプロレスで研究した動きで相手をねじ伏せるのは朝飯前。アスペルガーの、好きなことにのめり込みすぎるオタク気質がこういう場面では役に立った。

その上、パーティーでスタンという違う高校の上級生と仲良くなったことで、ロイの無敵のヤンキーモードに拍車がかった。というのも、スタンはこの地域でも有名なヤンキーのボスだったのだ。

ロイを嫌っていた一部の生徒達は、スタンだったらこのムカつくロイのことをやっつけてくれるだろう•••!と期待していたらしいのだが、その期待に反してロイとスタンは大親友に。ロイが面倒な奴らに絡まれてもスタンの名を出せば大抵の奴らは引き下がり、ほとんど誰もロイに手出し口出しできなくなってしまった。

そうなってからのロイはますますやりたい放題!

女子更衣室に解剖用の牛の目玉をばらまいて着替えに来た女子達をパニックにおとしいれたり•••。パーティーで外に停めてあった車を友人と持ち上げて移動させ、パーティーで酔っ払って出てきた 車の持ち主を混乱させたり•••。

いたずらされてどんなにムカついたとしても、もう誰もロイに仕返しできる者はいなかった。•••スタンを除いては。

スタンはパーティー好きで、どこかでパーティーをやっていると聞くと顔を出しに行き、ロイもよく一緒に行くように誘われた。

スタンはドラッグを手に入れるルートを知っており、パーティーで振る舞ったり売ったりすることもよくあった。スタンのおかげでロイもドラッグの入手に困ることはなく、スタンがいない時は代わりにロイにドラッグを売って欲しいと頼む学生達も増えた。

その内ロイはスタンのようにドラッグを売るようになり、自分用と売る用に大量のドラッグを持ち歩くようになった。あるパーティーでは皆の前でペーパーアシッドを通常の何十倍も口に放り込んで周りを慌てさせた。

そうこうしているうちに、ある日、ガールフレンドのメアリーから、話がある、と呼び出された。「あのさ、妊娠したみたいなんだけど•••。」そしてこうも言われた。「色々考えて、私、絶対産むって決めたからっ!」

「•••!!」ロイは何も言えなかった。でも、なんだか嬉しかった。「•••お前がそう決めたなら、俺、お前と赤ちゃん、大事にするから!!!」

そうしてロイとメアリーの娘が産まれた!スタンもロイの娘のことを我が子のように可愛がり、ロイの娘もスタンになついた。

その内、ロイはスタンからの集合命令が少なくなったことに気付いた。スタンに問いただすと、「お前、娘のためにもいつまでもケンカとか酒とかドラッグとかバイクの危険乗りとかバカなことしてないで、ちゃんと働いてくわせていけよ。お前死んだらあの二人どうすんだ?」

そう、スタンはロイの娘のためを思って、もうロイを危険なことには巻き込みたくなかったのだ。その気持ちを知ってロイも「確かにお前の言う通りだな•••。娘のため•••!」

こうしてスタンが言ってくれたように、ロイもちゃんと真面目に働きだした。仕事と娘の世話で忙しくなったロイはスタンと会うことも減り、酒もドラッグもケンカもほとんどやらなくなり、やりたいと思うこともなくなってきた。そしてバイクに乗ると危険なことをしてしまうと痛感していたロイは、ついに自分のバイクも売ることに決めた。

こうして、いつ死んでもおかしくはなかったロイも、スタンと娘のおかげで後先を考えるようになり、酒もドラッグもケンカもバイクもやめることができたのだ。

#2000字のドラマ

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