人間が起こす問題は「必ず解決できる」と思い込むと却って辛くなる
世の中で最も悩ましい問題はやはり「人間が起こす問題」ではないかと考えています。
家庭でも会社でも社会でも、人と人が一緒にいると何らかのトラブルは起こります。小さい話では「何度言ってもやってくれない」といったレベルですが、話が大きくなると不祥事や事件に発展することもあります。
このとき「人が問題を起こすには必ず原因があるはずだ、原因を究明して有効な解決策を立てることで問題の再発は防げるはずだ」というスタンスで問題に臨むことがあると思いますが、これが却って自分も相手も追い詰めてしまうのではないかと考えています。
というのも、「問題の再発防止」は確かに重要なことですが、相手は血が通った人間であるためそもそも理屈通りには動きません。ある日はできたことが次の日はできなかったり、その日の気分によって態度や行動が大きく変わったりすることがあります。
また、人間は人によって「できること」と「できないこと」がそもそも異なり、99%の人が問題なくできることがどうしてもできないという人がいる一方で、誰もできないことがいとも簡単にできてしまう人もいます。
実は管理職の方やチームリーダーの方向けに研修を行うと、「人の問題は必ず解決しなければならない」という呪縛に捉われている方をお見受けすることがあります。
一例を挙げますと「いつまでも仕事での基本動作が習得できない新人がおり、問題は一向に改善されないので自分自身の指導力に自信が持てない」といったお悩みを抱えているような方です。
一般的には「指導の原則」や「コミュニケーションのコツ」といった話をすればいいのですが、お話しを詳しく伺うとご本人の教え方やコミュニケーションの取り方云々の前にその新人が特別で、そもそも誰がやっても無理じゃないかというケースであったりします。
しかし、教える側が「人の問題は必ず解決しなければならない」と思い込んでしまうと、「ちゃんと教えられない私が悪い」と自分を責めてしまいます。
もちろん教える側が責任を持って教えることは大事なことですが、何でもかんでも解決できると思ってしまうと相手はもちろん、自分自身をも追い詰めることになりかねません。
かと言って「諦める」というわけにもいかないので、私なら次のようなアドバイスを行います。
言わんとしていることは「人間が起こす問題にはどうにもならないこともある」ということです。
ただし、諦めてしまうと何も得られないので、解決できないにしても今よりは良い状態を目指すことはできる、そのためには色々試行錯誤してみる、ということです。
実は通常の方法ではうまくコミュニケーションを取れない相手でも、あの手この手で試していくうちに話が通じるようになることがあります。
あくまで運の世界ですが、それでも「ダメで元々、うまくいけばラッキー」ぐらいに捉えたほうが相手に対しても自分に対しても前向きな姿勢で居られるのではないかと思います。
そういう意味では、人をまとめる立場の人、人を教える立場の人は「人が起こす問題は必ず解決すべき」と考えずに、「自分にできる範囲内で何とかすればいい」と考えたほうが長い目で見てうまく行くかもしれません。
今回もお読みいただきありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?