劇場版『あなたの番です』を観てきた!

この映画に限らず、ドラマの方にもあてはまることなんですが、僕が思うこの作品の大きな魅力の一つは「テーマがしっかりとしていること」です。次から次へと殺人事件が起きてしまうんですが、実は「愛」がテーマなんですよね。


【#178】20211225


人生は物語。
どうも横山黎です。


作家を目指す大学生が思ったこと、考えたことを物語っていきます。是非、最後まで読んでいってください。


今回は「劇場版『あなたの番です』を観てきた!」というテーマで話していこうと思います。


作品に関する情報が含まれていますので、ご注意ください。


☆濃密な「あな番ミステリー」


さて、昨日のことですが、『あなたの番です』を観にいってまいりました。聖なるクリスマスイブに血塗られた物語を観に劇場へ足を運ぶというロマンも何もないことをしたわけですが、思ったことも、学んだことも多々あるので、それを共有しようと思います。



二年前、視聴者に考察ムーブを引き起こしたドラマ『あなたの番です』が映画になって帰ってきました。ドラマでは交換殺人ゲームが行われ、何者かによって次々と人が殺されていくというミステリーが展開されましたが、今回の映画では、もしあのとき交換殺人ゲームが始まらなかったら、というパラレルワールドが展開されました。


ドラマでは、中盤、主人公:翔太の婚約者:奈菜が殺害されてしまうというショッキングな出来事がありましたが、映画では、そもそも交換殺人ゲームが始まっていないのですから、誰も亡くなっていません。


二年後、豪華客船でウェディングパーティーを行う運びとなり、住民のみんなが船の上で過ごすことになります。海の上を舞台に、連続殺人事件の幕が上がるというわけです。


もうね、とにかくテンポがすごい!


ドラマでは、半年にわたって描かれており、各話の最後にはいつも衝撃的な情報が明かされたり、衝撃的な出来事が起こったりしましたが、映画ではそういったシーンがいくつもみられ、伏線もりだくさん謎もりだくさんの濃密なミステリーになっております。



☆みんな狂っていて、みんな愛しい


『あな番』といえば、狂人ばかりが登場することで有名ですが(?)、映画でも住民のみなさんの狂気っぷりは健在で、それが時に怪しく、時に笑いを生みました。

今回笑っちゃったのが、木村多江さん演じる榎本早苗の狂気っぷり。彼女には、今シカゴに留学している息子がいるんですが、恐ろしいほど溺愛しているんですね。めちゃくちゃ過保護なんですよ。


今回、船上で殺人事件が起きるわけですが、遥か遠い異国の地にいる息子にも犯人の魔の手が及ぶかもしれないと思い、ある行動に出ます。



なんと、息子のいるシカゴまで泳いで渡ろうとしたのです。
#そんなバカな


横浜(多分)から出航した船が太平洋の沖に出て航海しているなか、船から飛び降りてシカゴまで泳いでいこうとしたんです。しかも、バタフライで。


そもそもシカゴにいる息子にも危害が及ぶという発想も無理があるし、太平洋を横断してシカゴを目指そうとするその手段にも、その精神にも首をかしげてしまいますし、選んだ泳法がバタフライって……すぐに力尽きてしまいますやん。

ツッコミどころが多すぎて、思わず笑ってしまいました(笑)



それがあな番的なコメディなんですよね。



ドラマでも、榎本早苗の狂気的な側面はたくさん見られたので、それをふまえて観たから、「え、なにこのやばいやつ」と引いてしまうことはなく、「やっぱり早苗さんさすが」という妙な納得感もあって笑いに繋がるんですよね。

こういったように、ドラマを観ているからこそ、なお楽しめたのかなと思います。それは、この映画の結末にもいえることです。




☆人それぞれの最愛


この映画に限らず、ドラマの方にもあてはまることなんですが、僕が思うこの作品の大きな魅力の一つは「テーマがしっかりとしていること」です。次から次へと殺人事件が起きてしまうんですが、実は「愛」がテーマなんですよね。


愛とは何なのか。誰か(何か)を愛するということはどういうことなのか。永年の課題と向き合った作品なのです。


主人公の翔太と奈菜は婚約しており、すっごくラブラブでした。ドラマの中盤では、そんな最愛の人が突然いなくなったのです。何者かによって命を奪われたのです。そのとき残された者はどうするのか――翔太は「復讐」のために生きることを決めました。それも一つの愛情表現といえます。


手をつないだり、キスをしたり、そういった行動と同じように、愛する人の命を奪った犯人に復讐することも愛情表現なのです。



そして、ドラマ版の犯人は西野七瀬さん演じる黒島沙和。人を殺すことが好きで好きで仕方がないという性格の持ち主でした。極論にはなってしまいますが、これも一つの愛なのです。少なくとも、制作陣はそれを一つのメッセージとしていると考えられます。「あなたが奈菜さんを愛するように、私は人を殺すことを愛している」といった趣旨の台詞を、黒島に言わせていましたから。



話をもとに戻しますが、映画でもテーマは変わらず「愛」でした。そして、今回、黒島は真犯人ではありませんが、彼女は自身の恋人に対して一つの愛情表現をします。


それは、「自分が死ぬこと」です。


愛する人と出逢って、普通の心を取り戻していると思っているが、以前のようにいつかは最愛の人を殺めてしまうかもしれない。でも、最愛の人が亡くなるのは、たえきれない。


「暴走するおそれのある殺人衝動」と「最愛の人を思う気持ち」に板挟みにされて、黒島は最愛の人のために、「自分が死ぬ」選択をするわけです。


実際は、もう少し複雑な話なんですが、そういった心理描写が描かれました。



最愛の人を失いたくないから、自分の命を生贄にする行為を「愛」と呼ぶのは、少し抵抗を覚えることでしょう。普通の人からすれば、そのような葛藤を経験することは一生ないでしょうから。


でも、彼女にとっては自分が生き続ける限り永遠の課題であり、愛だったのです。




今日はクリスマス。
あなたは誰と一緒に過ごしますか?


友達かもしれないし、恋人かもしれないし、家族かもしれない。


普段はなかなか口にできない愛を伝えてみるのも悪くないと思います。あなたにとっての愛を、最愛を大切にしていってください。



☆お知らせ


最後にお知らせします。


今僕は、「新しい『桃太郎』を共同制作でつくろう」という企画を行っております。

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「共生」をテーマに、『桃太郎』を一緒に作り直してみませんか?


興味を持たれた方は、是非、下のマガジンを覗いみてください。


最後まで読んで下さりありがとうございました。
横山黎でした。


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