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【ガリレオ】東野圭吾『透明な螺旋』の読書感想文

【#71】20210909


人生は物語。
どうも横山黎です。


作家を目指す大学生が思ったこと、考えたことを物語っていきます。
是非、最後まで読んでいってください。

今回は、東野圭吾さんの最新作『透明な螺旋』から考える
「テーマを支えるように紡いでいく」
というテーマで話していこうと思います。



☆ガリレオ10作品目


本の紹介をするというのも
久しぶりのような気がします。

今回紹介するのは
東野圭吾さんの代表的なシリーズであります
「ガリレオシリーズ」の最新作です。


物理学者の湯川学が
難攻不落な事件を科学の力で解いていく
ミステリーシリーズ。


突然男性の頭が発火してしまう事件とか、
超能力、透視、予知夢など、
非科学的な現象を科学の力で証明していく面白さに
多くの読者がはまりました。


さらに、ドラマ化や映画化もされて、
主人公を演じる福山雅治さんの
「実に面白い」というセリフや
「ガリレオポーズ」は流行し、
その人気ぶりはすさまじいものがあります。


シリーズ累計1400万部の売り上げを叩きだしています。
今まで9作品出てるわけですから、
単純計算で、平均一冊150万部くらい売り上げているわけですよね。
もう、恐ろしいですよね(笑)


そんなガリレオシリーズの記念すべき10作品目。
そのタイトルは『透明な螺旋』
テーマは「親子」です。
もっといえば「母と子」


千葉県の房総沖で、ある男性の遺体が発見されます。
警察が捜査していくなか、
その事件の関係者に、
ガリレオ先生こと湯川学の名前があることを知ります。
徐々にほどけていく、
事件の謎と、湯川学の秘密。
愛する人を守ることは罪なのか、
壮大なメッセージをつきつける切ない物語です。

これまでのガリレオって、
いわゆるHOWDUNIT(どうやったか?)のミステリーだったんですよね。
「ありえない」事件、「不可解な」事件を、
科学の力で解いていくっていう、、。


それに比べて、
今回の話は、科学ゼロです(笑)


これ、いつになったら不可解な謎が出てくるんだ、、
と思っていたらですね、
最後の最後まで出てきませんでした。

事件関係者の人間関係や、
事件の背景に隠された秘密などを
丁寧に描いていくミステリーだったんです。


だから、
少し拍子抜けした感じになってしまったんですよね。
それを抜きにしても面白い作品ですが、
科学トリックを期待して読んだなら、
期待外れに思うかもしれません。

若干、僕も思っちゃいましたし(笑)



☆絵本『ぼくは何?』の存在効果


今回、絵本作家のおばあちゃんが出てくるんですけど、
その人の書いた絵本が二冊登場するんですね。

で、そのうちの一冊の参考文献に
湯川学の著書があったことで、
そこから事件との繋がりができるわけなんですが、
もう一冊の方は、
その存在自体は事件の本筋には関係ないんですね。
でも、確かに大きな効果をもたらしているんですよ。


その絵本っていうのは「ぼくは何?」というタイトルで、
生まれたばかりの白い鳥が、
自分の親を探すという話で、
結局自分の親が見つかるんですが、
実はそれがなんとカラスで、
自分は遺伝子の関係で色素が抜け落ち、
白くなってしまったカラスであることを知ります。
いわゆる「アルビノ」というものです。
で、その子どもの鳥は、
黒いカラスを嫌っていたこともあり、
その事実を受け入れるのに苦しむという物語です。


実は、この内容が、
『透明な螺旋』の今後を予言しているんですよね。
これは、作者の明らかな意図だと思っていて、
話の本筋には関わってこない絵本の内容を
まあまあ丁寧に紹介しているということは、
そこに何かしらの意味があるわけで、
個人的な解釈では、
この『透明な螺旋』という作品を象徴するような存在だと思いました。


このあたりも手厚く固めた物語となっているので、
物語全体に一貫したテーマを常に感じながら、
考えながら、読み進めていくことができます。

そんな風に誘導されていくので、
物語終盤に、とんでもない真実が待っていますが、
突飛だなあと思うことはなく、
意外な展開には違いないけど、
納得できるんですよね。


伝わってますか?(笑)



☆テーマを支えるように紡いでいく


まとめると、
その作品で掲げたテーマを考えさせるために、
あるいは、メッセージを伝えるために、
物語細部までこだわって、
それらを支えていくと、
読者を誘導することができるよねってことです。


冒頭申しました通り、
この作品のテーマは「母と子」で、
「大切な存在を守ることは罪なのか」
そういった疑問を投げた作品となっております。

そのメッセージに辿り着かせるために、
事件があり、
登場人物があり、
絵本「ぼくは何?」のような小ネタがある。

テーマから遡って物語を構成していくと、
一貫した物語がつくれるというわけです。

僕も一応、
作家を目指しているので、
プロの書いたものから得た気付きや学びを、
これからも残していこうと思います。


☆お知らせ


最後にお知らせします。


今僕が書いている『メッセージ』という小説についてです。
以前から共同制作という形で、いろんな人の意見を聞きながら創作していました。
ついに、先日、第一章の第一稿を公開したので、
是非、ご覧になってみてください。
そして、ツッコミどころあると思いますので、
意見や感想、質問など、コメント欄に残していってくれると嬉しいです。

興味を持たれた方は、是非、下の記事をご覧になってください。

ということで最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
横山黎でした。


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