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摩擦という接触刺激と身体反応 PT・OTのための動作分析

こんにちは。ReHub林です。

理学療法士・作業療法士の方で、バランス反応は必ず評価する項目の1つだと思います。
多くの場合は、姿勢反射や代償方法、バランス検査の数値を評価することが一般的ですが、それに加えてもう1つ考慮したいのが、今回のテーマです。

それは”接触刺激に対する身体反応”です。

今回は以前YouTubeでアップした動画を参考に解説していきます。

YouTube洗体動作サムネ

まだご覧になってない方は、コチラ👉「実況洗体アラウンジャー」

なぜ接触刺激か?

バランスをとるのになぜ接触刺激?と思うかもしれません。
バランスに関わる要素は様々ですが、姿勢制御を2種類に分けるとしたらフィードフォワード制御とフィードバック制御が挙げられます。

フィードバックの情報としてメジャーなのは、足底などの支持面となる部分の表在感覚や、関節覚などの深部感覚が挙げられますね。
それ以外では何があるでしょう?
今回、焦点を当てるのは皮膚の緊張状態です。皮膚の緊張状態は筋膜を介してその深層にある筋緊張の状態も反映していることが多々あります。
※もちろん例外もあります。

筋は効果器であると同時に受容器です。筋が受容器として正常に機能するためには適切な緊張状態が保たれていなければなりませんよね。皮膚も同様に、適切な緊張状態が保たれ、伸張や緩みの度合いが情報として中枢神経系にフィードバックされます。

この皮膚・筋の繋がりが、機能的に保たれていることがバランス反応におけるフィードバック制御に大きな役割を果たしています。
それを評価するために”接触刺激と身体反応”という視点が重要なのです。

接触刺激に対する正常な反応

右背部

ここで例として洗体動作から紹介します。

一般的に、摩擦という接触刺激に対して、ヒトは表層の緊張を高めて通過させようとします。
身体を洗う中で、擦られる部位が能動的な探索によって、洗体タオルに向かっていく反応が生じます。
擦られに向かっていきつつも、タオルを通過させるために緊張を高めています。

では、緊張が高まらない場合はどうなるのでしょう?

接触刺激に対する異常な反応

画像2

正常に緊張が高まらない場合、ということは皮膚やその深層の筋の緊張が低い状態です。

本来、緊張を高めて通過させるはずなのに、低緊張な状態では洗体タオルの摩擦に対して皮膚が一緒になって動いてしまいます。
これでは、情報が適切にフィードバックされないため、反対側に比べて左背部が拡がりながら向かっていく反応が生じていません。

このような接触刺激に対するエラーは多くの片麻痺患者の麻痺側などで特に顕著に認められることがあります。

実際に、この異常な反応に対してダイレクトにアプローチした結果、バランス反応が改善した動画もアップしてあります。

洗体動作でバランスUP?PT・OT治療場面の不思議

動画はコチラ👉洗体でバランスUP?

セットで評価したい身体反応

身体の摩擦という接触刺激を加える際に、セットで評価するべきもう1つの身体反応があります。これもバランス反応として非常に重要なポイントです。

左肩

それは、接触刺激よって生じる反力に対して姿勢を保持しようとする反応です。
上の画像は、”実況洗体アラウンジャー”の中での一場面です。肩を上から擦る際に、上からの接触刺激に対して、左肩甲帯が拮抗して向かう反応が乏しかったのです。

身体を擦るという刺激は、単純に表層が擦られるだけでなく、身体を動かそうとする外乱が加わります。
この画像では、外乱の行きつく先が左坐骨です。肩からの接触刺激に対し、左坐骨で反力を受け止め、本来はその反力に抗するように左体幹の緊張を高めることで身体の剛性を高めます。
このような身体反応の繋がりがあるからこそ、肩甲帯が接触刺激に対して向かっていく探索活動が生じるのです。

まとめ

摩擦という接触刺激に対し、「通過させようと緊張を高める」身体反応が生じます。
※ちなみに、深層を動かそうと圧を加えると逆に緊張が緩みます。

このように接触刺激に応じた正常な反応があればこそ、皮膚やその深層に繋がる筋からのフィードバックが適切に行われ、バランス反応に寄与します。

擦る位置、角度、タイミング、強さによって、ヒトは本来どのような反応が生じるのか?
是非お試しください。
きっと、バランス反応を評価する一助になるでしょう。

また、擦るという外乱によって生じる反力を意図してコントロールすることで、四肢・体幹のバランス反応をコントロールすることも可能です。

最後に。。。

リハビリ場面では、「お腹に力入れて!」というセリフが横行していますが、随意運動として力を入れたところで、それはバランス反応とは異なる反応です。随意運動で獲得した反応は随意運動の中で発揮されます。

無自覚に生じる身体反応を評価・コントロールすることで、実際の活動場面に反映されるのではないでしょうか。


いかがでしたでしょうか?
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