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入浴動作のココが面白い!!PT・OTのための評価・治療のヒント

こんにちは。ReHub林です。

以前の記事「PT・OT入浴動作分析~含まれる要素は実に多彩~
では、入浴に多くの動作を含んでいること、洗体動作における身体反応について触れました。特に、洗体動作における”洗いー洗われる関係性”を深く掘り下げて解説しましたので、まだの方は上のタイトルリンクからご覧ください。

また、洗体動作については、以下2つの動画を配信中です。動画視聴も合わせてご利用いただければ、より一層理解が深まるかと思います。

👉「実況洗体アラウンジャー!PT・OTのための動作分析
👉「洗体でバランスUP?PT・OTが知るべきバランス練習のヒントと臨床の不思議

入浴動作の面白さ

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様々な動作と課題特性を含んでいるということは、評価・治療の視点もそれだけ多岐に渡るということです。
関わるセラピストの意識と技術次第で実に多くの問題を解決することができます。

実際に、以前私が学会発表した「生活リハビリのあるべき姿を考える ~入浴でのリハビリ介入の効果~」では、同じ「入浴」という課題の中で、歩行能力向上、排泄動作の介助量軽減、食事動作の自立度向上、他者への攻撃性の改善などなど。関わり方次第で、実に多くの問題を解決することができました。

セラピストの能力が試されますね。
これだから入浴動作は面白いのです。

今回は、着目する部位を2つに限定して、各部位の反応を引き出すために、どのような意図を持って関わるかを解説します。

中には実際の入浴場面ではなくても実施可能なものもあるので、最後まで読んで頂けると嬉しいです。

肩甲帯・肩甲骨の動きを引き出す

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服を脱ぐ時、服が前開きか被りかによって刺激を強調する方法が変わります。
前開きならば、左右の前身頃が肩を通過する際に衣服が引っかかる抵抗を徒手的に強めます。
被りならば、衣服を捲くりあげる時に体幹をうねらせるように抵抗を加え、それに続く肩甲骨の動きを引き出します。

洗体に関しては、イメージしやすいかもしれません。
洗体タオルで擦る接触刺激によって、肩甲帯や肩甲骨の探索反応を促します。
洗い−洗われる関係性の中で接触刺激に拮抗してくる動きを引き出すため、引き出したい運動方向に対して擦っていきます。

これは、次のチャプターの「体幹・股関節の動きを引き出す」とも繋がりますが、最低限座位や立位のアライメントは整えながら行います。
坐骨や足底などの支持面が洗体によって生じる床反力検出しやすい状態にするためです。
結局のところ身体反応というのは、全身が1つのシステムで繋がってあるため、完全に分離することは不可能ということですね。

身体をお湯で流す時も同様の視点で流します。シャワーによる温熱刺激は強力な感覚入力となります。
ただ流すだけでなく、かけるお湯に合わせて手で擦って肩甲骨などの反応を引き出すとよいでしょう。

脱衣~洗体までの流れを清拭と着衣でも同様の視点で関わります。

前半との違いは何だと思いますか?

答えは水分(湿気)です。
脱衣では身体も服も乾燥しています。
洗体では身体も洗体タオルも水分に覆われています。

洗体後の清拭と着衣では、布が乾いていて、身体は湿気を帯びていますね。

このように性質が異なる両者が擦れると、摩擦係数が高くなります。
その分、接触刺激を入力−探索しやすくなります。

反応を引き出す大チャンスですね。


体幹・股関節の動きを引き出す

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ここまでくれば、お伝えしたいことの大部分は伝わっているかもしれませんね。

脱衣では、靴下を脱ぐ際に踵に靴下の張りを強く与えることで、下部体幹の緊張を高め、股関節屈曲を引き出すことができます。
靴下の着脱については、動画を配信していますので、下リンクからどうぞ。

👉「靴下の介助でヒトの動きが良くなる!誘導のポイントとビフォーアフター

下衣の脱衣に関しても、すでに排泄動作に関するトピックで紹介していますので、下に関連記事・動画のリンクをご紹介します。

👉「排泄介助。ズボンの上げ下ろしで動きを変えるポイント」(動画)
👉「排泄動作の要素」PT・OTが人としての尊厳を守るための動作分析
👉”脱がしー脱がされる”排泄動作 PT/OTのための動作分析

下衣の操作では、下衣の張りと摩擦を利用します。
脱がしー脱がされる関係性の中で、臀部が下衣の摩擦による接触刺激に対して向かっていく反応を引き出すことで、股関節の反応を強調することができます。

洗体動作においても、同様に足部や臀部を擦る際の刺激によって下肢屈曲・伸展をするように身体を擦る角度などを調節しながら行います。

1点、脱衣と異なるポイントがあります。
ここでは、シャワーチェアを使用した状況を想定します。
座位の制御が不安定な患者は、特にシャワーチェアの背もたれに依存する傾向があります。背中~臀部を擦る中で、シャワーチェアと背中の隙間を作るように誘導します。

この誘導には大きく分けて2つの狙いがあります。

①背中への接触刺激に対する体幹の前後傾により、下部体幹・股関節の反応を引き出すこと
②シャワーチェアの背もたれと接触ー離れるを繰り返すことで、患者自身と座っている座面・背もたれとの関係性をより明確なものにすること

以上です。
患者の障害像に応じてこのどちらか、もしくは両者を洗体の目的として患者と関わります。

もし浴槽に入るならば、跨ぎ動作や浴槽内でのしゃがみ込み・立ち上がりにおいて、荷重位置をコントロールしつつ、過剰努力を抑えながら体幹・下肢の屈伸を行うことをお勧めします。
患者の能力に応じて、跨ごうとする瞬間のわずかな重心移動と片脚支持の補助などを絶妙にコントロールする必要があります。
下手をすれば悪い反応を引き起こし、望んだ反応が出にくくなりやすい、非常に不安定な動作です。

こればかりは、文章で伝える術はございません。患者の反応次第です。

お風呂から上がると、清拭・着衣ですね。

肩・肩甲帯のチャプターでお伝えした通り、お風呂から上がった後は身体が湿気を帯びています。
この湿気を利用しつつ身体反応を引き出す点は、どの身体部位であれタオルや衣服による接触刺激を強調するということがポイントになります。

全ての要素について詳細に解説すると膨大なボリュームになってしまうため、「体幹・股関節の動きを引き出す」についてもこの辺で終わりにしたいと思います。

まとめ

今回は、入浴動作において服を脱ぐところから最後に身体を拭いて服を着るところまでを対象に、身体各部位の反応をどのように引き出すか、という視点で解説しました。

入浴らしい課題特性としては、「摩擦という接触刺激」と「湿気の変化によって同じ課題であっても異なる刺激となる」という点でしょうか。

シャワーチェアや手すり、動作を誘導するセラピストの位置など周辺環境の設定にも十分気を配ることで、治療効果は全く変わってくるでしょう。

せっかくなので、次にリハビリする際は、これらの視点を参考にして頂けると嬉しいです。

この記事が、課題と環境から患者の障害像を的確に評価し、最適解に辿り着くためのヒントになることを心から願っています。
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