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自分の身体の動きに気付いていますか?〜フェルデンクライス身体訓練法〜

筋トレやランニング、ウォーキングなどがブームになっている昨今。時代背景もあり、健康志向が高まってきていますね。

我々理学療法士としては、運動習慣や自身の身体をケアする機会を持つ方が増えるのは、疾病予防の観点からとても喜ばしいことと思います。

ところで、自分自身の身体がどのように動いているかを気にして運動していますか?

日常生活の中で、ご自身の身体の動きに気付いていますか?

筋トレのような運動は力を入れて頑張る分、自分自身の詳細な動きに気付くということは難しいように思います。

今回は、『自分で自分の身体の動きに気付く』ということを追求する方法として、フェルデンクライス身体訓練法(フェルデンクライス・メソッド)というものを紹介したいと思います。

この記事を読むと、
●フェルデンクライス身体訓練法の大枠を理解できる
●自分自身の身体を知るというセルフケアの重要性を知ることができる
●理学療法士にとっては、クライアントにセルフケアの方法を伝える際の視点・アイディアが増える


自分自身の身体と動きを理解するということ

前回の記事では、理学療法場面において理学療法士がクライアントの身体を理解する必要性とその方法について書きました。

言ってみれば、クライアントの身体の外側からクライアントの身体の内側をのぞき込む、といったベクトルの話です。

理学療法士とクライアントとの間でクライアントの身体についての認識を共有していく中で、お互いに情報が整理され、クライアントの身体についての理解が(お互いに)深まるということでした。

一方、今回お話したいのは、クライアント自身がクライアント自身の身体を探求するという取り組みです。

言うなれば、クライアント自身が身体の内側から身体を探索するというベクトルです。

先ほど書いたように、筋トレは健康増進という観点からとても有効なものと思います。ただ、筋トレの悪いところは、筋肉に対して負荷をかけなければならないという点です。

筋肉に過剰な負荷をかけることで筋肉の損傷を引き起こし、その修復過程でより強い筋肉が作られる、というのが筋トレによる筋力増強の原理だからです。

筋トレを行う際の意識は、筋収縮感に向くことが多いのではないでしょうか。「目的とする筋肉が働いているか?」「その筋肉に効いているか?」ということがフォーカスの対象ではないでしょうか。

これでは、自分自身の身体を知るということになりません。

今回紹介したいフェルデンクライス身体訓練法では、次のように考えられています。

要するに、学ぶためには、感覚の力を研ぎ澄まさなくてはならないのだ。ただ力だけに頼ってほとんどのことを行おうとするならば、求めているのとは全く正反対のことを実現する破目になるだろう。
(M.フェルデンクライス著, 安井武訳:フェルデンクライス身体訓練法, p81, 1982)

力めば力むほど、感覚は鈍くなります。これはみなさん経験があるのではないでしょうか?

恐らく、筋トレの最中は詳細な身体の動きに気付くというのは難しいと思います。

筋トレを否定したいわけではなく、それとは逆のベクトル、自分の身体の内側に意識を向けていくというベクトルのトレーニングも必要なのではないか?というのが今回お伝えしたい内容です。


フェルデンクライス身体訓練法って?

フェルデンクライス身体訓練法、もしくはフェルデンクライス・メソッドと呼ばれたりするものがあります。

モーシェ・フェルデンクライス氏が考案した方法で、柔道や東洋医学の考え方などを応用したもののようです。

専門的に学んだ訳ではないので勝手に語ったら怒られるのかもしれませんが、この方法では自分の身体に気付くということを重要視します。

多くの運動、体操やワークなどでは、動くということを目的としがちではないかと思います。

フェルデンクライスの特徴的なところは、重力や身体の反射を用いて必要最小限の努力で生じる運動を行い、そのときに生じる感覚に気付く、自分の身体や動きに意識を集中する、というところです。

どうやら指導者が一つ一つの指示を出し、クライアント側がそれに従ってワークを行う、というのが基本的なやり方のようですが、やり方を理解していれば自分一人でもできるように思います。

感覚的にはヨガとかピラティスに近いのかなと思います。


フェルデンクライス身体訓練法はどんな方法か

フェルデンクライス身体訓練法では多くのワークが紹介されていますが、内容をイメージしやすいように一つ紹介したいと思います。

立ったまま、風にゆれる樹のように、からだをかるく左右にゆらせる。背骨と頭の動きに注意を払う。10〜15回くらい小さく静かな動きをくりかえして、動きと呼吸のつながりに気付くようになるまで続ける。
ついで、左右のかわりに前後に同じ動きをやってみる。(中略)
今度は、頭のてっぺんが水平に円を描くようにからだを動かす。膝から下の力だけでからだを動かし、くるぶしだけが動いている感じになってくるまで続ける。…
(M.フェルデンクライス著, 安井武訳:フェルデンクライス身体訓練法, p105, 1982)

このように、非常にゆっくりというか、努力を要さない動きの中で身体の動きに意識を集中していきます。

そして意識を向ける場所も少しずつ変えていき、次第に揺れるための努力を最小限にするような身体の動かし方の会得を目指していきます。

グーグルが社内研修に取り入れて一時期話題となったマインドフルネスの考え方が含まれているのも、おもしろいですね。


まとめ

今回は、フェルデンクライス身体訓練法もしくはフェルデンクライス・メソッドというものを紹介しました。

この方法の大枠は、自分自身の身体に意識を向け、自分で自分の身体や動きに気付くというものです。

自分自身の身体がどのように動いているのかを知らなければ、楽に動くことはできません。

また、自分自身がどのように動いているのかを知らなければ、筋トレをするにしても適切な動きができないかもしれません。

常に指導者が動き方を修正できる環境であれば問題ないのかもしれませんが、人間の動きはどうしても変なクセや偏った使い方などが生じてしまうものです。

筋トレを否定するつもりは全くないのですが、自分自身の身体を知り、楽に動くというのを追求するのも良いものですよ。


より深く学びたい方へ

フェルデンクライス身体訓練法−からだからこころをひらく
今回紹介したフェルデンクライス身体訓練法を紹介した書籍です。
なかなか古い本ですが、発案者のモーシェ・フェルデンクライス自身が書いた書籍ということで、興味のある方はこちらから読んでみるのが良いのではないかと思います。




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