伊国トモリ

野生の劇作家。戯曲を書きながら、演劇や映画の表現について考えています。

伊国トモリ

野生の劇作家。戯曲を書きながら、演劇や映画の表現について考えています。

マガジン

  • 伊国トモリ作品集:カルぺ・ディエム/2023

    2023年に書いた戯曲とかエッセイです。 『カルぺ・ディエム』/「戯曲か、小説か、あるいは別の「何か」か」/『光の速さで生きて』/「メランコリーの彼岸」/『冷たい熱視線』/「過去のおれよ、どうか笑って手を振り返してくれ。」

  • 電脳天使 18-22

    気付いたら駅のホームにいた。 その電車はシーサイドを走っている『水彩奴』、何も見えない、何も見たくない『盲目』、平城京から追い出された下人の物語『The Inner City』、ボクとキミとの「とある距離」の話『星に願いを』、父と息子の運命が狂いだす『因果平衡』、お笑いに人生を呪われた男の半生記『しかく』、2人の女学生が向かうのは夢の終着駅『光の速さで生きて』。——2018年から2022年までに執筆した短編集4本、読切3本を収録した有馬風音の作品集。

  • 雑記林

    鬱蒼と生い茂る雑記の林。徒然なるままに形成された記憶と記録の生態系。

  • 忘れ者の日記

    土をいじくって、出てきた記憶を記録しています。

  • メランコリーの彼岸

    創作活動を始めて5年経った記念のエッセイ。

最近の記事

【エッセイ】波打ち際にて/忘れ者の日記9

寄せては返す自己愛の波打ち際 砂の文字が流され消えて鬱向くナルシス。 眠れない日が最近多い。少しだけだけれど、体調にも影響が出てきているような気がする。別に重大な問題を抱えているわけでもないのに、ただぼんやりとした不安に包まれる日がある。わたしは基本的にネガティヴだから、一人きりになった途端、あーだこーだと、考えたくもないことを考えてしまう。特に、ベッドに入って、自室の白い天井を、ぼーっと見ていると、その白色がスクリーンみたく、その日あった嫌だったこと、後悔している

    • 【詩】プロスペロー独白

      魔法は解けました フラフラ目眩だ 汗ばんだ背中 妖精はおらず 杖もない 会うすべもない 心は嵐 粗探しばかり 周りから見れば同じキャリバンか 荒野の獣とはボクのことだ アア 除け者のプロスペローよ もう一度奏でてくれないか フルートの名手エアリアルよ バッハの無伴奏ソナタを ホラ パパと無愛想なママも一緒だ 風が待ってくれよと ボクの服を掴む 震える声で掴む どこにも行かないよ 嘘だ どこにも行けないだけなんだ どうか忘れてくれるな 風の妖精はボクに言った

      • 【詩】硬いからだがあるからだ

        硬い服を着ている やわらかなからだを守るため 硬い服を着ている 前に着ていた服はヒビが入って 割れてしまった 白いからだが外へでた 残りは硬い殻だから カラカラ乾いた音が鳴る もっと硬い服を着る ワルしかいなくたって 割られることも 笑われることも 気持ち悪がられることもない そんな硬い服を着る けれど、いつしか小さくなって とうとう脱げなくなってしまった もはや私服の硬い服 硬い殻だがヒビだらけ ボロボロだから 白いからだがにじみでる

        • 【短編集】3 映画みたいなオフィス/誰かいる宇宙

          これは、2020年3月~4月にかけて執筆した短編集『誰かいる宇宙』の1篇「映画みたいなオフィス」SF編、インド映画編、時代劇編を再掲したものです。(2024年5月30日) 映画みたいなオフィス SF編プレゼンしている人  ヒラ プレゼンを聞いてる人 フルリ プレゼンを聞いてる人 役員 上手にヒラ、フルリと役員たちは下手で椅子に座っている。 ヒラ 「惑星フルリへの人類移住計画の概要は以上です」 フルリ 役員と耳打ちして何か話している。ヒラへ。「Xxxxxxxxxxx.X

        【エッセイ】波打ち際にて/忘れ者の日記9

        マガジン

        • 伊国トモリ作品集:カルぺ・ディエム/2023
          10本
        • 電脳天使 18-22
          39本
        • 忘れ者の日記
          8本
        • 雑記林
          35本
        • メランコリーの彼岸
          7本
        • 【SF戯曲】因果平衡
          7本

        記事

          【短編集】2 軍靴の音/誰かいる宇宙

          これは、2020年3月~4月にかけて執筆した短編集『誰かいる宇宙』の1篇「軍靴の音」を再掲したものです。(2024年5月28日) 軍靴の音 操縦士とキツネ並んで座っている。 両者の距離は少し離れている。 操縦士「なあ、ゴメンて」 キツネ「知らないよ」 操縦士「俺が悪かったって」 キツネ「知らない!」 操縦士「キツネ~」 キツネ「エ? 誰のことですか?」 操縦士「もう、拗ねるなよ~」 キツネ「拗ねてませんけど?」 操縦士「拗ねてんじゃん」 キツネ「拗ねて

          【短編集】2 軍靴の音/誰かいる宇宙

          【短編集】1 砂漠の飛行機/誰かいる宇宙

          これは、2020年3月~4月にかけて執筆した短編集『誰かいる宇宙』の2篇「巻頭歌」と「砂漠の飛行機」を再掲したものです。(2024年5月27日) 巻頭歌ぼくときみとのあいだには とんでもないほど距離がある 異星間交流 無重力な空間に ケーブルを敷こう 言葉は宙を浮きつ沈みつ あぶくとなってとけていく そうだ、言葉を勉強しよう モノクロコピーの語学本が 色づいて見える その時間がふたりを 運命の人にしていくのだから ねえ、教えてよ きみの星の言葉を

          【短編集】1 砂漠の飛行機/誰かいる宇宙

          【エッセイ】「何も変わっていない」と言われたい/忘れ者の日記8

           本当はもっと早く書き上げたかったのだけれど、ここ数日間、少し鬱っぽくてなかなか手をつけられなかった。ごめんね。 こんな風に書き留めて、10日くらい経ってしまった。ここ2週間、自分でもびっくりするくらい忙しいかった。(いろんな所で繰り返している話題だから、もう詳しく書かないけど、もちろん、心を亡くしている。) だから書けなかった。書きたいことがたくさんあった、ということは覚えているのだけれど、2週間も経つと、それがどんな内容だったのかは、もうほとんど忘れてしま

          【エッセイ】「何も変わっていない」と言われたい/忘れ者の日記8

          【エッセイ】VHS段階/忘れ者の日記7

          思い出せるぎりぎりの記憶、日付けが記された大量のVHS、掠れた映像、それは平成の画質そのもの、叩けば直るでしょう? 人生は選択の連続。無限にも思える100通りの可能性、その中から選び取られたたった一つの選択、打ち捨てられた99の可能性……。その最初に位置するのは、名前ね。しかも、これだけは自分で決められない、物心ついたときには、すでに当たり前のものとして持たされているもの。打ち捨てられたもう一つの名前、わたしは最初「ソラ」になる予定だった。どんな漢字だったかは聞かされていな

          【エッセイ】VHS段階/忘れ者の日記7

          勝手に報われろ/忘れ者の日記6

          勝手に報われろ。 わたしは自分にそう言い放った。 こんな気持ちになったのはホントウに久しぶりだ。日記を書く書くと言いながら、全然書いていなかったのだけれど、今日のことは忘れてはいけないような気がしたから、文字に残しておこうと思う。 演劇部を引退して6年目に入ろうとしているのだけれど、わたしはずっと部活の話をしている気がする。多分あと10年経ったても、そうなんだろう。部活のこと以外に話すことをほとんど持ち合わせていないということも確かにあるのだけれど、それだけあの場所に、

          勝手に報われろ/忘れ者の日記6

          eeee感じ!!!!/忘れ者の日記5

           最後に聴いたのはいつだったろう。連続テレビ小説『エール』の「星影のエール」とか、TBS系連続ドラマ『義母と娘のブルース』の「アイノカタチ」だったろうか。彼らの音楽は厚みのあるメロディーに乗った真っすぐな歌詞が魅力なんだ。でも、これらの曲を初めて聴いたとき、わたしは昔——わたしが小・中学生だった頃——のように感動できなくなっていた自分に気付かされた。わたしは暗くて、卑屈で、ひねくれてしまったのかな。  わたしが彼らの音楽に出会ったのは、2008年——わたしが8歳のとき——で

          eeee感じ!!!!/忘れ者の日記5

          異界から目薬/忘れ者の日記4

           物忘れが激しいことに定評のあるわたしなのだけれど、その一方で物を無くしたと思い込むこともよくある。  今日はそういう日だった。わたしはあまりにも物忘れが激しいので、毎日使うものはいつも決まった場所に置くようにしてる。今日は、その「いつも決まった場所」になかったのだ。イヤ、正確にはそこにあったのだけれど、一回目に確認したときには、そこにはなかったのだ。わたしがそれをどこか他の場所に置くなんてことはほとんどありえなかった。だって、次の日に「ない!」と言って、朝からバタバタと探

          異界から目薬/忘れ者の日記4

          高所恐怖症、タイムマシーン、Swing/忘れ者の日記3

           ふと、思い出した台詞。なんで急に思い出したのかは分からない。多分、とても大事な台詞だったように思う。でも、わたしは高いことろが苦手なんだ、いわゆる高所恐怖症というやつ。きっかけもよく分からない。気づいたときには、すでに高い所は苦手だった。これに関連して思い出したことは、高校生の頃、定期試験のとある科目で学年1位の点数を取ったとき——たしか96とか94とかそんな点数だったように思う——、嬉しくて両親に報告すると「なぜ100点を取れなかったのか」と言われ、その次の試験で成績が下

          高所恐怖症、タイムマシーン、Swing/忘れ者の日記3

          忘れっぽいな/忘れ者の日記2

          ひそかに、誰にも言わずに立てていた今年の目標があったのだけれど、1回もやらずに1ヶ月と14日が経ってしまった。やはり、目標は誰かに宣言するに限る。そういうわけなので、今日からできるだけ日記をつけて生きたい。昨年末、その年の振り返りを書こうとしたら、まったく、なにも思い出せなかったことが今でも口惜しいのに。ホントウは、車載カメラみたいに見たものぜんぶ記録しておきたいのだ。それだけ記録とかに執着しているのに、記憶力がダチョウ並みにしかなくて、日々の忙しさに追われると、日常

          忘れっぽいな/忘れ者の日記2

          漂う書き言葉/忘れ者の日記1

           過去に書いた文章が手元にある。パソコンの奥深くに眠っていたのを偶然掘り出した。おそらく、2022年の1月に書いたものだと思う。結構おもしろいことを書いていたので、少し長くなってしまうが、全文をここに展示しておこうと思う。  資金調達ができず、ここに出てきているタイトル『光の速さで生きて』の撮影が頓挫した後に書いたものだと思う。演劇一辺倒だったぼくが「映像」問題に取り組みだしたのは、コロナウィルスが流行しはじめた時期だった。ぼくは今は亡き「Zoom演劇」に、——ぼくの目から

          漂う書き言葉/忘れ者の日記1

          過去のおれよ、どうか笑って手を振り返してくれ。

           2023年はオンオフが激しかった。上半期はずっとエンジンがヴヴンとかかっていたけれど、秋に入ってからすっかり燃料切れを起こしてしまっていた。そこからは惰性。ただただ転がるように過ごしていた。しばらく元に戻ることはないだろうな。 〇今年書いたものたち  ・戯曲『カルペ・ディエム』1月 noteにて公開 ・エッセイ「脚本か、小説か、あるいは別の「何か」か」1月 noteにて公開 ・戯曲『光の速さで生きて』5月 noteにて公開 ・戯曲『マキナ・ハートビート』第一部 6月 未公

          過去のおれよ、どうか笑って手を振り返してくれ。

          7.全日本脳内自分反省会選手権大会優勝

          優勝してしまった。夢の話ではない。今回は脳内の話だ。 ぼくは以前、「悪い癖:どうしてずっと忙しいのか」という記事を書いた。参考の為にURLを載せておこう。 なぜかTo do リストが増え、そのうえ気持ちもなんだか忙しない、そんな状況を分析した記事だ。手前味噌で申し訳ないが、なかなかおもしろいことを書いている。特に重要だと思われる部分を抜粋しよう。 無意識の思考場所。それが、ぼくにとって、全日本脳内自分反省会選手権大会になってしまった。挙句、優勝してしまった。もう何も考え

          7.全日本脳内自分反省会選手権大会優勝