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23000字で書く『リフォームで絶対に失敗したくない人へ贈る本』

これは2017年に書いて、編集者の方に認められた原稿です。
出版は諸事情により、見送ったお蔵入りの本書ですが、無料で公開しています。
PCデータ整理中に発見された本書は、約4年前の執筆時、ほぼ原文のままなので、コロナウィルスに関連する内容が考慮されていない事は、ご容赦ください。


『リフォームで絶対に失敗したくない人へ贈る本』
      ~クレーム産業が教えるリフォームの基本~
目次
はじめに
【宣言】全てのリフォームのプロとお客様に贈る。

第1章
【リフォーム屋という不思議な生業】
 ・無資格、未経験、技術無しでも、
  リフォーム工事は売れる。
 ・職人ブローカー
 ・大手ハウスメーカーと、町の工務店との違い。
   ・職人の違い
   ・どちらがリフォーム上手か?
 ・リノベーションとリフォームと改修の違い
 ・なぜお客様は、ハウスメーカーに頼んだり
  職人へ直接頼んだりせず、リフォーム屋さんに頼むのか?

第2章
 【賢いリフォームと駄目なリフォーム】
 ・賢いリフォームの3大条件とは。
   ・賢いリフォーム計画
   ・賢い予算組
   ・賢い業者選び
 ・駄目なリフォームとは

第3章
 【クレームが創るリフォーム業界】
 ・リフォームの中はクレームの種で満ち溢れている。
 ・見た目はベテラン、中身はペーペー。避けては通れぬクレーム通り
 ・お客様と言う、ド素人との戦い。依存と確認不足がクレームを呼ぶ
 ・クレームが生む、業界の成長。

第4章
 【リフォーム屋の限界】
 ・最後は職人次第
・早くて安くて腕が良い職人
・職人の暴走
 ・成熟したお客様の錯覚と向き合う。
 ・現場でのミスは永遠に消えない。
 ・完璧なリフォームとは幻である。


第5章
【本当に幸せなリフォームとは】
 ・会社の利益が、お客様の利益である。
 ・良質な関係性とは無敵である、悪質な関係性と言うのは地獄である。
 ・完全なる納得が生み出す幸せなリフォーム

巻末特集
■マンションリフォームの基本
【マンションという聖域】

あとがき
【感謝】



はじめに
【宣言】
全てのリフォームのプロとお客様に贈る。

私は、リフォームとは人間の生活において『衣食住』の内の住について非常に重要な役割を果たす存在だと思っている。
平均年収420万程度の時代、古くなったから建て直すなんて流行る訳は無く、直しながら住み続けることが当然である。
家が古くなり、使い勝手が悪くなったり、住宅設備が壊れたりすれば直すしかない。
ここではっきり言うとリフォームは大変な労力を伴い、心身ともに少なく無い負担となる。
そして大事な家を守るために、行わなければならない一大イベントである。

しかしながら、リフォームと聞くと、簡単にキレイに家を直せると言うようなイメージがあり、誰でも簡単に苦労することなく、リフォーム会社に依頼をすれば、後は自動的に、リフォーム工事が無事終わるものだと、勘違いされている消費者が多い。

『クレーム産業』、
そう称されることが多いリフォーム業界では、前述のような、現実と理想との大きなギャップが、リフォーム業界をクレーム産業と呼ぶ原因をつくっている。


お金を払って、怒り苦しむ消費者。


お金を貰って、悩み叱責される業者。


それらはリフォーム業界の一面としては珍しくはなく、常識であり日常でもある。

なぜそのようなギャップが無くならないのか?私は常に考え続けてきた。
ひとつの答えとして、消費者たちは、リフォームの表面にしか触れることが無い。
それはリフォーム会社のホームページに輝く、リフォームの成功例だったり、チラシなどの謳い文句だったりする。
また、ときにはテレビで綺麗な芸能人が電動工具を用い、日曜大工の域を超えたDIYなるオシャレなリフォームをしている風景をみることや、数か月の苦労を2時間程度に圧縮し、良い部分を抽出し、感動を作り出す番組もそうだ。
それらはリフォームの普及という意味では大きな功労者だと言える。
しかしながら、そういった表面的な綺麗さ感動を、簡単に味わえると誤解されている消費者も多いのも事実だ。

勿論、リフォーム工事には簡単な面もある。
一日で玄関ドアがキレイに変わったり、一週間で新しいお風呂に変わったり、そして、それに感動し、幸せを感じるお客様。それにやりがいと喜びを得る担当者。
感動の瞬間、喜びの声、それらは仕事の中に無数に溢れている。
そんな当たり前の光景もリフォーム業界の日常である。
しかしながら、それだけは無い。


打合せ中、工事中等々、最終的に無事に工事が終わったとしても、一時的であれば、

『幸せでは無いお客様』も多く存在している

そこで私は、お客様が持つリフォームへの『理想のイメージ像』と『現実』とのギャップを、埋めることが、『幸せなお客様』を増やすことに繋がり、『そうでは無いお客様』を減らすことになると気付き、その方法を探った。

そのギャップを埋める為には、ほんの少し【リフォームの基本】を知って貰うだけ良いのだ。
だから、私はこの本に【リフォームの基本】を詰め込んだつもりだ。
ただし、小難しい専門的な知識を羅列している本では無いので、ご注意頂きたい。
この本を手に取り、真剣に家を守ろうという強い気持ちがある人だけに伝えたい、本当に使える知識のみを詰め込んである。
これらは、家守る人へ向けた実用書で有り、バイブルで有り、メッセージなのだ。


このリフォーム業界では、毎日のように感動が生まれ、クレームが生まれている。
簡単なイメージが定着している業界ではあるが、複雑な部分も多く、現実として、毎日どこかでクレームが起きたり、施主や業者の悩みを生んでいたり、しているのである。


それは、それだけ数多くのリフォーム工事が世の中で行われていることを意味する、そして、需要が多い上に、簡単なイメージがあるので、異業種からの新規参入が相次いでいることも、周知の事実である。

無論、新規参入者や、リフォーム業界が悪だと言うことでは無い。

経験や知識が無い業者が溢れる中、家を守ろうと思う人たちを、私は真剣に応援する。
それは、自らの家を守る施主に対してもそうだが、大切なお客様の家を守ろうと思うリフォーム業者についてもそうだ。

このクレーム産業において、負の連鎖を無くすため、またより多くの幸せを生むために、本書をリフォーム工事で大失敗をしたくない全ての人に贈る。
世界中の真剣に家守る人、全ての業者、全てのお客様へ。


                 2018年1月   リフォーム思考


第1章【リフォーム屋という不思議な生業】


・無資格、未経験、技術無しでも、
      リフォーム工事は売れる。


営業担当が、一度も工事をしたことが無いような工事でも、売れてしまうのがリフォーム屋の不思議なところである。
何か形有る商品を売る訳では無いので、無形な商品独特の難しさはあるが、現実として、経験が薄くともイメージのみで売れてしまうことが多くある。

実際には、正確な見積もりが有り、施工技術を持つ職人がいて、社内には経験豊富な同僚社員が居るからこそ、成せる業なのだが、見たことも触ったことも無い物が売れる業界なのである。

つまり、トイレ工事で有れば、施工方法を知らなくても、本体を見たことが無くても、カタログと見積もりだけで契約がとれるということである。

例えば、外壁塗料について無知で、塗装職人と会ったことが無くても、お客様から信頼を頂けさえすれば、工事の契約が頂けるのである。

と、いうことは、大規模な住宅改修工事であったとして、経験の浅い担当が契約をし、工事を進めることが出来るということになる。事実そうである。


ちょっぴり恐ろしい話しだが、そこに、施工技術を持たない職人がいたり、経験豊富な社員がいなかったりすることも、無い話しではない。

しかしながら、無資格、未経験、技術無しでも無事に工事が終われば問題は無いし、そういう成功のケースは多い。
ただし、お客様の立場で在れば相手の営業マンがどうなのかは気になるところだろう、しかしながら業界として経験の浅い営業が、あなたの担当となるケースは少なくない。


もし、相手の経験が浅いと感じ、不安になったので有れば、現場管理の方法や、熟練の職人の有無等、社内の体制を確認しておくことをお勧めする。
一番大事なところは、その工事や、あなたの質問に対して、経験が無くとも、しっかりと調べて対応してくれたかどうか、その対応が適切で有れば、むしろ、そのリフォームは成功に近づいていると言える。

もしも、あなたが経験の浅い営業で在れば、しっかりと下調べを行い、技術的な裏付けのある行動を取れば問題は無い。
分からないときには、施工方法を調べ、社内で相談し、自分が素人だと忘れず、判断を誤らなければ、大切なお客様を被害者にすることは無いだろう。


・職人ブローカー


ブローカーとは、仲買人を意味する言葉である。

職人ブローカーとは専門の職業では無く、私が造った造語であるが、リフォームの営業は職人に対して、またお客様に対し、ある種、ブローカー的な立場になることがある。
それは、建築業界全体でもそうではあるが、元請と下請の関係がある以上、実際に施工する職人をお客様に提供するという面では、ブローカー的な存在だと思う。

実は、この関係性を理解しているか否かで物事の捉え方が変わってくると言える。
ブローカーという何やら怪しげな響きだが、決して何か悪いことしている訳では無い。

職人という、技術を持った商品があるからこそ、高品質な工事を、未経験な営業でも提供できるのである。
例えば、お客様が支払った施工費が5万円だとすると、5万円が職人の手元に入ることは無く、
職人へ2万、材料費1万、会社の利益として2万と言う様な割合で分配されているのだ。
つまり、職人にとっては技術を買ってくれる営業は、お客様で有り、そのお客様のお客様である施主は、大お客様となる。

ここで大事なことは、職人ブローカーと職人の関係性が、良い関係を築けているかどうか、
また職人ブローカーが抱えている職人の内で、一番の職人をウチに提供してくれるかどうかだ。

残念ながら、ブローカーの感じが良くても、提供される商品が良いとは限らない。
しかし、お客様の立場で言えば、職人についてしっかりと語れる営業担当に任せた方が安心だと言える。
職人について自信を持って語る担当者や、職人の名前や細かい情報を話せる担当者は、関係性が深いと分かる。それは、職人だけは無く、設備機器もそうだと言える。

営業担当の立場で言えば、ブローカーで在る責任として、職人との関係性を築くことは勿論、
お客様と職人との間に立たなければならない。扱っている商品が物では無いことを考えれば、
その責任は重く、そして誤解されやすい立場にある。

完璧な職人ブローカーというものは存在しない。しかし、お客様が支払う対価というものは、職人の分、材料の分、それと会社の利益を含んでいる。


自動的に、お客様へ掛けられる予算は、支払額とイコールにはならない。
つまり、会社の利益分の対価を、お客様に提供するのも、職人ブローカーの仕事だと言える。


・大手ハウスメーカーと、町の工務店との違い。
   

さて、大手ハウスメーカーにリフォームを頼むことと、町の工務店に頼む違いとは、
なんだろうか。

■職人の違い 

不思議なことに、大手のハウスメーカーでも、町の工務店でも、同じ職人が工事に来る可能性が有る。多くの職人は個人事業主という形で活動していたり、少人数の施工店として活動をしていたりする。はっきり言うと、どこの仕事を請けようが自由なのだ。
職人からすれば、やりやすいかどうかが違うだけで行う仕事、つまり技術レベルは同じだ。

中には、年間を通じてハウスメーカーの仕事しか行っていない職人もいるし、メーカー独自の施工専門店なので、他社の仕事を請けていない会社もある。

同じ職人歴で在れば、起用不器用の差こそあれ、大きく変わらないと思われるかもしれない。
私の経験から言えば、職人の腕は会社の方針で変わると言える。
作業の技術、工期の厳守、マナー、気遣い、安全面への配慮。
大手で有れば、厳しい管理の中で工事を進めていくので高い意識が育つが、予算の面で厳しい企業だったり、仕上がりへこだわりが薄い企業の場合だったりすると、次第に腕が落ちていく。

結論としては、大手ハウスメーカーの場合は安全面の意識が高い職人が多く、また特殊な技術を持っているので特殊な工事は任せた方が良いだろう。
町の工務店の場合でも、大手ハウスメーカーと同じ職人が作業を行うこともある。
更に、金額的には、大手よりも安く済むケースが多い。あとは、個人の好みだろう。

■どちらがリフォーム上手か?


一般的な感覚として、大手の方は人が多く、アドバイザーがいたり、施工管理がしっかりしていたり、高価なソフトを使って図面やパースといったイメージを作ってくれるという対応をしてくれる可能性がある。
それらの多くはその通りである。

そして勿論、その反面、費用は高くなることが多い。
意外な事実としては、大手であっても、駄目なときは駄目である。
それは人間が介入している以上、避けられない部分でもある。
では、大手以外はどうなのか?

町の工務店であってもリノベーション専門店などは、大手に負けないクオリティがあると思う。
それは想いが違うからである。
数名の社員で行っている、個人経営のようなリフォーム屋さんの場合は、大手の場合は年間100棟の内の一棟に過ぎないが、少数精鋭の会社で有れば、年10棟の内の1棟となる。もうこの時点で、気合が、身の入り方が違う。
残念ながら、大手のようなシステムは無いし、人手が限られている分、施主への負担は大きくなるだろう。しかし、施主以上に仕上がりにこだわりを持って携わってくれるメンバーが居たり、大手に負けないプレゼンテーションを披露してくれたりすることもある。
ここは、もう相性の問題となる。
ここまでは、大きな工事の場合で、そうではない工事の場合について触れてみよう。

はっきり言うと、町の工務店の方が小工事は安く、そして、動きがいい。
なぜかと言えば、町の工務店で有れば自社の社員が作業を行うことで即日対応が可能なケースが多いからだ。大手の場合は、下請けを呼んでの対応となるので時間も予算も掛かるケースが多い。


今後の付き合いを考えれば町の工務店でも悪くない。
あとはリスクの問題である、事故、物損の時に差が出ることがある。
安全面では、大手が一番良い。
金額的には、個人の職人に頼むことが一番だが、腕の良い職人は元請の仕事が忙しく、なかなか来てくれなかったり、見積もりが遅かったりする、そしてクレームの際の対応には非常に個人差が激しいだろう。まして知人で有れば、その後の関係性を考えると施工不良も言えず、その後のアフターメンテナンスも頼みにくいなんて声も聴く。
となると、一口にリフォーム上手と決めきれない部分がある。
まず、小工事で有れば、地元のリフォーム会社や、個人店に相談してみよう。
百万円超えるような中規模のリフォームで有れば、数社から見積もりをとるか、小工事の際に続けて相談をしてみることをお勧めする。
多くのリフォーム会社は相談無料、見積無料である。
500万前後の規模で有れば、相見積もりをしておいた方が良い。
なぜ、良いのかというと、単に金額の比較や仕様の比較など、ありきたりの理由では無い。


相見積もりをとる一つの大きな理由。それはなぜか?
多額の金額をかける以上、万が一、クレームが起きたときに過去の自分を責める代わりに業者を責めることがある。業者への100%の信頼、それは施主の怠慢である。
怠慢という言葉は、万が一のクレームや不備が有った際、他にも見積もりを取ればよかったと思ってしまったときのみ、施主へ適用される。

工事によって使い分けること、よりもまずは相談をしてみることをお勧めする。施工するのは職人であるので、技術は同等だと考えて良い、あとは工事中のイメージをどこまで説明してくれるか、その差が大きい、
細部まで説明してくれるので有れば期待して良い。
本当にリフォーム上手な会社は、リスクもしっかりと説明してくれる。
是正期間、クレーム時の対応、その辺りを、契約で気持ちが高ぶったときにこちらから話せるかどうか、実はそこが大きなポイントである。
一応、左に大手から個人まで頼む場合のポイントと特徴を載せておくので、ご参考になれば幸いです。

※大雑把に一般的な部分のみをまとめた為、会社や担当者により、例外もあることは、ご理解ください。

【大手ハウスメーカー】
会社の信用、安定感が有る。
有名なので問い合わせし易い。

○金額は高いが、保証や工事中の安全対策は最高レベル。
 子会社、協力会社が多く工事時期の希望が通りやすい。
△小規模工事や緊急性の在る工事の場合、動きが悪い。

【中小のリフォーム会社】
大手程では無いが、信用と安定感が有る。
施工対応範囲は支店の場所によるが、割と広い
チラシやネットでの検索で見つけ易い。
○しっかりとした会社組織で、対応も良く
 大手よりも安い。
 小工事への対応、アフターメンテナンスも期待できる。
△社員数によるが、人手が限られているので
 担当によって提案やサービスに差が有ることが多い。
 担当のレベルにもばらつきがある。


【個人のリフォーム会社】
専門店で有れば、二十四時間対応だったり、県内対応だったりと
かなり動きが良い。
元々大手に居た人が独立したケースも有り、本当の意味で少数精鋭が期待できる。
対応件数が少ない分、より親身に接してくれる。
金額も安い。
△社長が営業のケースも有り、話しが早いが現場管理が甘い場合や、
 アフターメンテナンス対応が迅速では無いケースがある。
 目立った宣伝をしていないので探し出すのは難しい。
 設立間もない会社だったり、下請けをしながらだったり、選んだ会社によっての、ばらつきが非常に大きい。

【職人、個人経営店】
安くて腕も確かだが、知り合いや近くに住んでいないと頼みにくい。
下請けの合間に行う工事となるので、工事の希工期は通りにくい。
直接施工者に話せるので希望通りになりやすいが、アフターメンテナンスや保証等は無いと思った方が良い。


・リノベーションとリフォームと改修の違い

非常に大きな括りで言えば家の修理という意味では同義語である。
言葉と言うのは、表現の仕方ひとつで、その言葉が持つイメージが大きく変わることがある、
例えば、社長と言う言葉で言えば、株式会社の社長でも、自分ひとりだけ会社でも同じく社長と表現できる。また、代表取締役社長や、CEO、代表、肩書きの表現ひとつでイメージが変わる。


物で有れば、マフラーもストールも、同じく首に巻く布だが、物は違う。
リノベーション、リフォーム、改修については、明確な違いは存在していないが一般的に言われていることと、客層、注意点を説明しよう。

■リフォームについて
これが一番王道と言える表現になっていると思う。
改修工事と言うと仰々しく感じてしまうが、リフォームと聞くと手軽に感じてしまう。
客層として、幅広い世代が当てはまるだろう。
注意点としては、専門店かどうか、詳しいのかどうかくらいかな、
水廻り専門店に外装工事は頼まない方がいいし、外装専門店に内部リフォームは相談しない方が良いと思う。
リフォームという言葉の注意点は、誰でも掲げる言葉であることを認識しておこう。
異業種でも突然リフォームというメニューが看板に出ることも珍しくは無い。
建設業許可を取っているのか?建築士はいるのか?そんなことよりもまずはリフォーム工事について深い知識と経験があるのかどうかが重要で、先のアフターメンテナンスまで考えているのかどうか考える必要がある。
業者であれば、最後まで付き添う覚悟が無ければ看板を出すのはよそう。
お客様であれば、そこの会社は最後まで付き合ってくれる会社どうか見極めよう。


■リノベーションについて
リフォームにプラスの要素として、デザインを付け加えたものである。
簡単に言えば、オシャレなリフォームという感じです。
例えば中古物件でも、リフォーム済みと、リノベーション済みでは消費者にすると価値が違うように感じるものだ。
1000万規模のリフォームで、デザイン性を付加した物はリノベーションと呼べるだろう。
注意点としては、どこまでの予算を掛けてどこまで手を加えるのか。また、大規模であるがゆえに、工期についても余裕をみてあるかどうか、工事中、進捗と現状の予想工程について、どこまで施主へ報告し、仕上がりについても施主の希望に合わせられるかが重要なポイントである。また、依頼する場合で言うと、規模が大きいが故に、見積もりが大雑把になりがち、どこまで細かい見積もりや図面等々の資料が揃えられるか、そろっているかが大事なポイント。


・なぜお客様は、ハウスメーカーに頼んだり
  職人へ直接頼んだりせず、リフォーム屋さんに頼むのか?

それは、人とはリスクを恐れる生き物であるからである。また、面倒くさがりな人も多い。
だからこそ、リフォーム業者紹介サイトが存在している。

まず家を建てたハウスメーカーについては、疎遠であったり、小工事で頼みにくかったりして頼めないというケースがある。
また新築時にトラブルがあったり、なかには既に倒産していたり、するケースが有る。
最近ではリフォームについては、リフォーム屋さんへというイメージも浸透しており、お客様自身がハウスメーカーには頼めないと思い込んでいることもある。
あとは、ハウスメーカーもリフォーム専門の子会社を作っている場合も有るが、以前、高いという根強いイメージもある。


職人に直接頼まない理由。

理由ナンバーワンは、
「恐い」
実際に見た目が超恐い職人も居るし、優しい職人も居るし、勿論、顔だけの問題な訳はなく、一般の人がなかなか、名前も聞いたことが無い古びたお店に突撃する勇気は、まず無い。


あとはリスクである。
今はネットが普及しているので調べてから行くのが基本である。
そもそも拙いHPしか無いような個人店に今の顧客は流れない。
そして、実際、工事中にトラブルになることも多い。

『フェンス壊してしまいました。新しくするのに半分出しますからお客さん半分出してください。』

現実である。
また、
『奥さん、ごめんなさい。間違えて、この木も切ってしまいました。』
無論、次の依頼は無いのである。

誤解が無いように書くが、ちゃんとした人もいる。そして、直接に頼むと安いので単純な工事や作業で有れば、それで良いと思う。
ただし、職人さん個人の当たり外れの差が大きい為、リフォーム会社に頼まない分、リスクが大きいことは事実だ。


第2章【賢いリフォームと駄目なリフォーム】

・賢いリフォームの3大条件とは。

ここでは、賢いリフォームを行う為の条件を説明していく。
お客様目線での説明となるが、これらの情報を押さえておかないと今後の提案、契約への影響が大きい、つまり、対お客様としたときには、
必ず、これらの条件を確認し、未定で有れば聞き出し、一緒に決めていくことが重要なのだ。

・賢いリフォーム計画
リフォームをするにあたって、まず行うこと、それはお客様が自分自身で計画を組むことだ。
専門的な知識が無いから出来ないということは無い。
何が優先順位として高いのか、それを行う上での障害となる点、気になる点が有れば、それを列挙する。それだけで良いのだ。

例えば、お風呂を直したいという漠然とした要望が有れば、
部分的な補修で良いのか?ユニットバスに交換するのか?
ユニットバスに交換するので有れば、洗面所はどうするのか?
洗面所の壁紙や洗面台はどうするか?
メーカーはどこが良いのか?
お客様の視点で言えば、ここら辺迄の考えが有れば、業者との打ち合わせをスムーズに進む。
あとは、工事の時期について具体的な希望工期が有れば、それも重要だ。
そして、予算についても希望の金額、出せる金額の上限が有ればそれも伝えておこう。

ここからは業者側として、お客様の要望を聞き出し、実現可能な工事計画を作ることが必要である。それには、お客様の要望を聞き、気付いていない注意点まで掘り起こすことが重要
である。
例えば、ユニットバス交換で有れば、窓を交換するかどうか、洗面所の内装を行うかどうか、
追加の電気工事が必要かどうか、給湯器は再利用か、交換か。
再利用物は何か、位地は移動するのかどうか。

はっきり言って、ここを曖昧なままで進めると工事中、各工程がスムーズに進まない可能性が非常に高くなる。
そして、プロも見落としがちな点としては、その地域に何らかの協定があるのかないのか、
またその工事は建築法上、民法上、問題がないかどうか。
特に外溝工事は注意が必要である。
※市役所に行けば、だいたいのことは教えてくれるし、相談したということは十分なリスクヘッジだと言える。

マンションの場合、どこまで養生できるかどうか。

あと、是正期間も工期である。
ここは注意が必要だ。

ここまでをしっかり押さえておけば、OKである。
次に予算について話しを深めていこう。


・賢い予算組

いくらかかっても良いという条件で有れば、最高だが、そんなことは滅多にない。
ローンを組むかどうか、組み込むか、
どこでローンを組むのか、現金はどうか。
そこら辺は勿論、重要。
見積もりの額を比べるだけで有れば、相見積もりを取れば良い。
しかし、それだけでは本当の予算は見えてこない。

本当の予算組とは、
まず、条件によっての見積もりをとる、このオプションを付ければプラス○万、グレードを落とせばマイナス○万。
そして値引きの限界も確認する。
ここからが重要で、追加で掛かる可能性について確認をすることが必要である。


浴室改修時に内部が腐っていたり、外装工事の際に足場を組んでから高所の腐食が分かったりすることも有る。
その辺りでいくらくらい追加になる可能性が有るのかは、事前に確認、説明が必要である。
更に、関連した諸費用についても確認が必要。
ガス工事については別途なことは多いので、どのくらいかかるかどうか、とか。
工事中の物損や事故の際の説明まで受けておけば安心だろう。
更に更に、工事の種類によっては、補助金や、減税が受けられることがある。
そこまで考えることが、賢い予算組である。
そして、そこまで対応が出来る業者は良い業者である。


・賢い業者選び


ここまでの賢い計画、賢い予算組について
理解し、対応を疎かにしない業者で有れば良い業者であると言える。
ここでのポイントは賢い業者を選ぶのでは無く、工事内容に合わせた賢い選び方を紹介する。
正直、その地域ごとに多種多様なリフォーム会社が存在する為、一概にこの名前の会社に頼みなさいと言い切ることは出来ない。


例えば、畳の交換工事や、壁紙の張り替えだけで有れば、ご近所の畳屋さんやクロス屋さんに飛び込んでみるのも有りだと思う。一番安くなるだろうが、まったく気の利かない親父さんに振り回されてしまう可能性も有る。
まずはチラシや、インターネットで地域名+リフォームと検索してみれば出てくるだろうし、町の立て看板なんか出ている業者でも良い。
ホームセンターやハウスメーカーでもOKである。
一番大事なことは相性だと思う。

賢い選び方のポイントと注意点を紹介しよう。


□見積もりに明細が書いてあるかどうか。
→商品であれば品番、定価、色、サイズの明記を確認。

□支払いについて
→これは金額や支払い方法、会社によって様々だが、前金一部先払いか、折半か、少額で有れば工事完成後に一括払いが多い。工事開始前に全額一括払いというケースは要注意である。


□リスクを理解してくれる。
→こちらの要望に対して、使い勝手悪くなるとか、耐久性が下がるとか、リスクについての説明が有るかどうか。リスクを知っているかどうかが大事なのだ。


□工事後も付き合っていけるかどうか。
→アフターメンテナンスや小工事への対応有無、調子の良い営業マンの、頑張ります!とか、やっています!という勢いを信じるのも良いが、小工事や点検について会社としての」システムがあるのかどうか、その辺りが分かれば尚良い。


□信用できる営業マンか否か。
→はっきり言って、あなたの目の前の営業マンはド素人かもしれない、
それはこの業界では珍しくはなく、一見するとベテラン営業マンが、営業経験は豊富でも他業種からの転職組で、リフォーム知識が0な場合も事実有る。
大事なことは、会社として責任を持てるかどうか、施工や管理のフォローが出来ているかどうかだ。賢い選択をするためには、まず、そこの見極めが肝である。


・駄目なリフォームとは


対して駄目なリフォームを列挙しよう。
これらは前述の逆のことなので、すぐに分かる。
先を見据えていない工事、やっても無駄なこと。やってもクレームになること。
優先順位の間違え、見た目だけ表面だけの直し、業者が自身の利益しか考えず、お客様へは工事のリスクの説明が無い。


しかし残念ながら、素人にはそれがそうか分からない。
素人であるお客様だけでは判断が出来ないのだ。
そうなると、信頼できる営業マン探しが駄目なリフォームを避ける上では一番有効だと言える。
もしかしたら、駄目なリフォームとは業者探しの時から始まっているのかもしれない。
また、駄目なリフォームとは業者の都合で進められるケースがある、
相見積もりが必要な理由のひとつである。
医療の世界で言えば、セカンドオピニオンである。複数の専門家から意見を収集し、それをまた専門家へぶつける。
難解な選択肢を与え、そこに正確かつ信頼できる答えが出されれば、そこに信用が生まれる。


駄目なリフォームとは、それが駄目だと認識出来ず、また認識しようとも思わない。
そして、業者から将来の現実を伝えられないまま、そのことを知ろうともしない。
そういった無関心も大きな原因のひとつかもしれない。


第3章 【クレームが創るリフォーム業界】

クレーム産業と称されるこの業界について、その原因を解体して調べていこう。
まず、リフォームやリノベーションは、綺麗な部分のみがお客様の目に触れることが多い。
それは、商売なので綺麗なイメージを与えることは当然である。
HPやチラシ、専門誌等に、綺麗な施工例を載せ、単純で低価格をアピール。
響きのよいキャッチフレーズが溢れ、完成後の住宅でインタビューを受ける幸せ一杯な家族。


これらは現実である。
しかし、その幸せ一杯になるまで、羽陽曲折、困難な道のりが有ったはずである。


それを知らず、それに気づかず、このクレームの種の中へ飛び込んでくるなら、クレームが起きないことが奇跡だと言える。
無論、そうならないようにすることがプロの仕事でもある。

経験上、たったひとつの打ち合わせ不足、確認不足が時限爆弾のように突然爆発する、そしてそれは爆発するその間際に発覚し、大クレームという大爆発を巻き起こすことがある。
残念ながら、長く経験をしている者であれば、そんな経験は一度や二度では無いはずだ。


・リフォームの中はクレームの種で満ち溢れている。
例えばこんな種がある、参考までに潰し方も教えておく。

色違いの種
→打合せシート複写で乗り切れる。日付、お互いのサインを書いて保有しておけば問題無い。
次回の約束
→打ち合わせシートと、手帳への記入、カレンダーのアプリでもいい。
アラームや、前日に時間確認の連絡をする予定をつくっておくことも有効だ。
工事中の不満
→常に通えなければ、連絡をする。
連絡が来ない
→一方的な連絡だとそうなる。連絡を取り合う形にするとか、相手が商社等なら相手から連絡が来るような伝え方の工夫も必要だ。
手直し多発→施主点検の前に点検と是正日を決める。
工事中に分かる事実。過去の物損箇所や、手抜き?と思われるような箇所
→隠していた等と誤解されないよう、報告は迅速にする。
あれ?高さが違う。
→事前に図面等で確認する。そして、お客様は数字を見ていないことが多いので高さや等、明記してお客様へ自覚して頂くことと、共有することが非常に重要です。


・見た目はベテラン、中身はペーペー。避けては通れぬクレーム通り
さて、求人情報をみてみよう。


だいたい45歳くらいまでは無資格、未経験でもOKの会社が多い。
つまり、あなたの目の前にいる、コミュニケーション能力抜群のリフォーム営業マンは、
実は入社間もない新人くんである可能性がある。
この業界では多いことで、定着率が低いからだ。
入れ替えが起こる理由は多くの場合、激務である。
それはクレームが多いから激務となる場合も多い、
そして、そういった激務に追われた素人が更にクレームを生んでいく。

複雑なシステムのなかで、素人が百戦錬磨の職人とやりとりし、ハードルの高いお客様と向き合う。
そりゃ、一歩間違えれば揉めるわな。

だからってそれが悪いわけではないのが
複雑な事情。
10年選手もミスる。
20年選手もクレームを起こす。
残念ながら、その状況によっては起こってしまうのだ。

つまり、大事なことはそれをカバーできる会社の体制。
そして、客で有れば、しっかり会社に責任を取らせてあげることを前提に対応にあたることが大事。
多くのクレーマーは、普段のストレスをぶつけてきたり、金銭的な譲歩を引き出す為に切れたりする。
結論から考えていけば、最悪の場合?最終的には裁判で解決できる。
そこまでいくと、両者の負担、特に施主への負担は尋常では無いと思う。会社は専門の弁護士へ任せれば良いのだ。

しかしそれはある種、最悪な解決だという意見もある。

その前に不具合を可能な限り徹底的に是正をして、必要に応じて金銭的な譲歩をし、円満に解決を図る。多くの業者はこの選択をとる。

大事なことはお客様であれば、契約の際にそこまでの覚悟を決めて任せられるかどうかだ。


・お客様と言う、ド素人との戦い。依存と確認不足がクレームを呼ぶ

もう、うちは○○さんに任せたから。
あとは勝手やってプロに任せるわ。

こういう傍からみると理想的なお客様との関係性だが、私の経験上、これを真に受けると痛い目をみる。


これは、本当の意味で信頼しきっている場合と、そうでない場合がある。
そうでない場合とは、信頼では無く、お客様の責任放棄で有り、完全なる依存だ。


前述の痛い目とは、このパターンのときに起きる。
はっきり言ってお客様はイメージを買っている。
つまり、イメージで契約をしている場合がある
上手く終わればそれに越したことはない。
○○さんに頼んで良かったわ。また次もお願いね、
となるだろう。
しかしながら、そうでは無かった場合、性質が悪い。
そうなるとは思っていなかった。
聞いていない。
狭い。
高い。
段差がある。
話しが違う、こういったことは無い話しじゃない。

よくある話だが、大事な部分を疎かにするからこうなる。
プロに任せたのだから、確かにその通りである。
しかし、お客様もプロでなければならない。
リフォームの?いや違う。リフォームをされるお客様のプロなのだ。
何も難しいことでは無い。
確認し、書面に残して各自署名しておけばそれで良い。
複写の書面に打ち合わせ内容を記載し、各自サインして各自持っていればそれでいい。


それだけのことで多くのことが防げるのだ。


ここは譲れないポイント、ここが不明確だと思ったら聞けば良いのだ。
聞けない、聞かないなら、最後に言うなという話しである。
しかし、ここで誤解を恐れながらの釈明をすると、両者ともに最低限の打ち合わせをした上でのことだから、そんな単純な話しでも無いことは事実である。
例えて言うなら
赤という色にしたなら、どんな赤か確かめようよ。
高さや幅は数字で、現地で確認しようよ。
防げないようなヒューマンエラーは仕方ないが、まったく確認しないのは全然ダメなのだ。


・クレームが生む、業界の成長。

これには賛否両論有ると思うが、クレームを『お客様の不満』
と言いかえると割とすんなり腹に落ちるとおもう。
住む人、使う人からすれば、長持ちした方が良いし、お手入れが楽な方が良い。
そんな理由で住宅設備機器は日々、進化している。

施工業者も、製造したメーカーからすればお客様である。
このお客様の場合は、施工性や簡易さが求められる。

また商品だけではない、リフォームの営業マンの質も同様である。
過去に起きたクレームがあるからこそ、同じことを繰り返さないように、
会社としてのルールを厳しくしたり、システムをつくったりして、会社として成長し同時にその会社の営業マンの質も上がる。

ハウスメーカーもそうだ。今は上場しているような巨大ハウスメーカーも無数のクレームを受けながら、それらを克服することで今の地位がある。
業界は、日々、進化しているのだ、


第4章  【リフォーム屋の限界】


・最後は職人次第


理想の職人は『早くて安くて腕が良い職人』そういう職人も居ないわけではないが、多くの場合は、3つ揃うことはない。無論、職人も人間なので性格が有り、特徴がある。

また3つ揃うような、そういう職人は仕事が絶えないので、仕方なくそうでは無い職人に頼むしかない場合もあるのだ。
それを上手くバランスをみてコントロールするのも仕事なのだろうが、人を使うのは容易なことではない。
結局のところ、良い職人が居なければ良いリフォームが出来ないが、少し腕の悪い職人でも、リフォームは出来る。
これがリフォーム屋の現実で有り、限界で有り、課題で有る。



・職人の暴走


暴走と言っても、バイクで走りだしたり、突然暴れ出したり、するわけではない
お客様の為だと誤解をし、錯覚を起こしてしまうことがある。
人間である以上、錯覚は起こす。
これを理解していない人間が非常に多い。
思い込み、アンカリング、偏見、バイアス、そういった心理的現象が当然のように、誰にも気付かれずに起こっているのだ。
施工性を優先し、施主の希望が反映された図面を優先しない。
自分に都合いい理由をつけて連絡をしない、良かれと思って手間を省く、手を抜く。


あっ道具を落とした。パッとみて傷が見えなかったから無いと判断し、傷を隠す。
傷が見えていても、材料を取り直すと工期が掛かって迷惑を掛けると本末転倒なことを考え、善意で傷を誤魔化す。
そこは見えないところだから、そこはマニュアルより、こうした方がキレイだし何より楽だからと、手を抜く。
そういった暴走はよくある。それを防ぐためには執拗な連絡と確認しかない。
人間は錯覚する生き物で有り、怠けてしまう生き物である。
この限界については、リフォーム屋は常に向上することを追及するしかないのだ。

実は、これは現場での職人にだけに言えることでは無く、実はリフォーム会社の中でも起こり得る事実なのである。

この【ごまかす技術】という部分の技術力が高いと、巧みな話術や表現で、こうするしか無かった、こういう状況だった、こんな事は今まで無かった、お客様はこう言っていたなどなど、都合の良い解釈が出来るように事実を捻じ曲げるって芸当が、日常茶飯事に起きているなんて現実に心当たりは無いだろうか?っと、このハナシは、今はココまでに留めておきます。

問題の解決能力や打開する力が高い場合には、信頼して良いのですが、やたらとごまかす技術力だけが高い人には注意が必要です。


・成熟したお客様の錯覚と向き合う。


私が選び、信じたリフォーム屋さんにミスは無い、とお客様は信じて疑うことがない。
成熟したお客様の長年の経験からくる鋭い御意見、正確な指摘は常識的で、かつ明快で、ごもっともな事が多い。

なぜこんな失敗が起きるのか?こうすれば防げたのではないか?


ミスをした側からすれば、成熟したお客様の自らの経験や長年の含蓄を振り回す正当的な意見の前には、手も足も出ない。
実はここにも、人間は人間で有る以上、錯覚は起こす生き物という観点が抜けている。
しかし、それを認めてしまうと、そんな甘えたものは仕事としては成立しない。
成熟したお客様の有難い説教に向き合うこと。
これはリフォーム屋の限界で有り、避けることの出来ない尊い仕事である。

防ぐ方法は、無いことは無い。

例としては、下地が原因で仕上がりに影響が出るケースである。

内部で有れば、下地の不陸をクロスが拾ってしまい、表面に凹凸が出たというクレームのパターンが有る。

なぜ新しくしたのに凹凸が出る?

これは正しい意見である。

もし、事前に下地からのやり直しを提案していれば、そこをケチって表面だけ直したのだから仕方無いとなる。

外部で有れば、古い塗膜や、建材が原因で不具合が生じるケースなのだ。

これも交換や、上からカバーする工法を提案した上で起きたパターンで有れば、印象は大きく変わる。

しかし、一番大切な事は、こういった事前の説明を、双方が認められる明確な記録に残しておくことである。

メールや、見積り書、打ち合わせ時の複写シート、写真、動画、録音等々、後でお互いに見て納得できる記録で有ることが望ましい。

本当に簡易的に、カタログの選んだ商品の横に、お客様にサインと日付を書いてもらい、写真を撮ってカタログは、お客様の手元に残すとかでもOKである。

なぜなら、誤解を承知で書くと、成熟したお客様は、記憶力が低下している事がありますし、記憶違いというか誤解もしがちです。

そして怒りやすい。ことも有ります。

そういった特徴をもつ相手と向かい合う為には、互いの為に適切な準備が必要です。


   


・現場でのミスは永遠に消えない。


現場では、人が歩いて動いて工具で固定して、カッターで切って、丸鋸で切ってノリを付けて、インパクトで固定してつくっているんだよ。
ノーミスは無い。


ノーミス、ノーリフォームだ。
バカみたいな表現だが意外と本質に近い。馬鹿な解釈を防ぐ為に書くが、傷が有ってもいいとか、そういうことではない。見間違え、勘違い、それらのヒューマンエラーの塊だという意味でしかない。
それは大きなシステムでしか補えない。
大きなシステムとは大手にしか出来ないことでは無く、現場単位でも
可能である。例えば、常に同じ施工方法をすること。
同じ材料を使うこと。
お客様に少しお金を多く払って頂き、いつも以上に丁寧に時間を掛けて施工すること。


そういったことは行おうと思えば出来ることでは有るが、それは同時に顧客を失うことになる。
そんなことを求められたのならお客様は一瞬で他のリフォーム店へ行くだろう。
お客様は常にいつも、最高のサービスを少しでも安く提供されたいと思っている。
そして、お客様は、ミスを無くすこと対して対価を払いたいとは思わない。
それを当たり前だと思っているからだ。
しかし、ミスを無くすためには、お客様から対価なり、自由を制限させて頂くなりのご協力が必要なのだ。
しかし、それはある種のパラドックスで有り、叶わぬ願いである。
でもそれは建築業界の永遠のテーマなのだとおもう。


・完璧なリフォームとは幻である。


完璧の定義によっても異なるが、新築を基準とした場合、それは確実に幻だと言える。
確かに、新築に準ずるリフォームもある、一度、スケルトンと言う骨組状態にして中身を全てやりかえる場合、ある程度は新築に近くなると言える。
これはこれで成り立っていると思う。
しかし外溝だとか、ガス管だとか水道管だとかまで考えると、新築と同等だとは言えない。
大規模に金を掛けて直すのだからそれなりに、それ相応に仕上がる。
そして更に完璧を求めるハイクラスなお客様は、あっさりと建て替える。
外溝から何から、全て完璧な新築である。
そこには、ざっと5000万円という多額な予算が掛かっている。
これが現実である。


私の考える、リフォームとは営繕工事を行う際に、少し良くしようよと言う程度のものである。
その少しが人によっては、300万円の高級キッチンを入れたり、500万円で屋根を高級な金属屋根に変えたりとなる。これもリフォームの現実である。
部分的なところだけ見るので有れば、それは完璧であるだろう。
しかし、全体をみたときに新築に負けない完璧かどうかで考えると、完璧では無い。
新築に負けない完璧なリフォームをしようとすれば、予算は確実に超える。
400万、500万掛けて新築に近いリフォームにしてあげたい、したい想いはある。
しかし、予算という高い壁の下ではそれは幻で有り、その壁の前に立つとリフォームの限界を感じる。


第5章【本当に幸せなリフォームとは】


・会社の利益が、お客様の利益である。
会社が儲かれば良いのだ、その為には良い仕事を提供し、お客様に儲けさせてもらうしかない。


そして、それでしかお客様を救えないのだ。


これは不当な利益を得る事を肯定しているのではない。
本当は100万の工事を200万で契約をして、営業50万、会社50万で分けなさいということでは無い。
分かり易いので新築を例えとして説明します。
例えば、新築の建売を買ったお客様、買って3年で雨漏りしました。
しかし、既に建売業者は倒産しています。そうなると、お客様は自力で直すしかなくなります。
そういった保険に加入していれば、費用は保証されますが、精神的な不安や労力までは保証されません。
少し大袈裟な表現になりますが、会社が在れば雨漏りの対応については一切合切任せることが出来ることになる。それはお客様を救うことだと言えます。


そもそも雨漏りする家を造るなんて。
そう思われる方も多いと思います。それが一般的な正常な感覚です。
しかし、現実は違います。
そういう家だってあるのです。それは、中小の工務店に限らず、大手ハウスメーカーだって同じです。しかし、しっかりと対応しているからこそ、無論、社会的な問題にはならず、一般のひとの知るところとはならないのです。


リフォームに話しを戻せば、
床の軋みや、歪み、床鳴りが気になると連絡を受ければ、その施工した業者は対応に行くでしょう。施工したのが最近で有れば無償で直すと思います。
外壁屋根塗装をして1年経たずに剥がれたなら、すぐに駆けつけて確認し、対応してくれることでしょう。


新築の雨漏りについても、リフォームの施工不具合についても、
その労力に対して、お客様から代金を頂くことは出来ないのです。
ですから、そのためには会社としての利益が必要だと言えます。
リフォーム会社の安売り合戦を否定するわけでは有りませんが、多くのお客様の立場で言えば、安いことは嬉しいことでしょう。
しかし、これから長く使っていく、住んでゆく家のことですから、依頼する会社がどこに力を入れているのか、よくよく考えていくことが重要です。
その会社が利益を何に使っているのか、工事後のアフターメンテナンスのシステムはどうなのかが重要なことなのです。
決して工事代金が高いから品質が良い、安いからダメというわけでは無く、大幅な値引きをしてくれたから、そこに決めたとか、そういう決め方だけでは幸せにはなれない。


お客様から得た利益を吸い取るだけ吸い取って終わりの奴らに任せることを否定はしませんが、
お客様から頂いた利益を常にお客様へ還元している会社、現金で返すとか物質的な物だけでは無しに、アフターメンテナンスに注力している等の会社に頼むことをお勧めします。
あなたの目の前の依頼先の会社はどうなのでしょうか?聞いて確認してください。
そこを見極めていく先に、本当に幸せなリフォーム生活が待っていると断言できます。


・良質な関係性とは無敵である、悪質な関係性と言うのは地獄である。
ここで書く良質な関係とは、客様とリフォーム業者のことであるが、それは職人とリフォーム会社にも当てはまることが多い。
良質な関係性を簡潔な言葉で表すなら
『お互いに信頼し合う、緊張感有る関係。』となる。


この【緊張感】が大切で、ガチガチな緊張ではなく、程よい距離感のことである、「親しき中にも礼儀あり」、にも近い。
お客様と業者の関係で有れば、仕事の話しは仕事の話しとして、適正な金額を提示し、業者はそれ相当かそれ以上のものを提供する。
その繰り返しによって、どんどん信頼が増してゆく。


リフォームについて、家のことについてはまず、あなたに相談する。という関係性。


これが良質である。
一種の絆のようなもので有り、そのためには努力と縁が必要になる。
職人と業者間でも同じことが言えると考えている。
あくまで理想の形ではあるが、こういう関係性を持つことは珍しくはない。ただし、全てのお客様、職人とまではいかないので、理想に近づけられるように、良質な関係を意識できればそれだけでも大分違う。
それは、あなたがお客様側で在っても、業者側でもだ。
一番大事なことは、良質な関係性の上では、緊張感が有り、互いを尊重し合っているので、無理なお願いや、言い訳や、誤魔化しは存在しない。
少しハードルが高いかもしれないが、そうなればそれは同時に、競合他社の相見積もりだったり、クレームだったりというものが無くなることを意味している。
これが理想、縁であり絆であり無敵である。
さて、その逆の悪質な関係とは、深い説明は不要だと思うが、まったくの逆である。


「信頼を失い、疑いの目で見られる」このとき、緊張感というのは片方がもう片方に与えるものとなり、力の均衡は大崩れで、この状況ではまともな仕事は生まれない。
地獄といっても過言では無いケースもある。
万が一、こうなった場合には対処はひとつしかない。


『逃げずに立ち向かう。』殴りかかるとか対抗するという意味ではなく、相手の要望に対して出来る限りのことをしてあげる。これしかないのだ。
誤解を恐れず続けると、リフォーム会社が世界に一社じゃあるまいし、世界に一人のお客様でもない。


時期、時が経てば関係性が良くなるか、または完全に消えるはずだ。
これは楽観的な思考ではあるが、どんなに頑張っても悪質な関係性が長年に渡って0とはいかない。
これは片側の努力だけではどうやっても実現出来ず、お互いに良質な関係性を目指すことでしか、実現できないからだ。
良質な関係性を目指す道のりは険しい。が、目指す価値のあるゴールである。


・完全なる納得が生み出す幸せなリフォーム

『完全なる納得』とは、
リフォームを行う計画は勿論、計画の前からのことも含めてである。
全てにおいて完全なる納得をしていれば、起きたことについて、どうこう言うことも慌てふためくことも無いだろう。
勘違いしないで頂きたいこととしては、完全なる納得と妥協は違う。
起こったこと全てに携わったという自負が有れば、例えば些細なミスや思い違いがあっても、結果としては幸せなリフォームになる。


これは、単純な色の間違えだったり、工事中に起きたクレームだったりを気にするなと言っているわけではない。
そういうレベルの低い、あからさまな発注ミス、打ち合わせ不足、施工不良のことを許せというつもりは毛頭ない。
確かに、工事中の些細な埃や言動など、重箱の隅をつつくような事を気にしていては疲れてしまうので、常識的な範囲で、ある程度の理解は必要だと感じることはある。
しかしながら、お客様であれ、業者であれ『完全なる納得』抜きに幸せなリフォームというものは存在しない、成立しないのだ。


もう少し噛み砕いて言うと、過去未来において、打ち合わせ、工事中、工事後通じて果たして、あなたの行動は、
問1
「本当に、あなたが納得出来る行動でしたか?」
問2
「それは、相手を納得させられる行動ですか?」
もし、答えにNOが有れば、自らの行動に責任が有ったと分かり、それに納得できるでしょう。


もしも、不慮のクレームが起きたとし、この二つの質問の答えがYESだったのなら、
『この結果は全てあなたの責任ですが、納得できますか?』
この問に、あなたはどう思うだろうか?
結論から明かせば、業者の立場なら誰がここで働くこと、会社を興すことを決めた?続けているのは誰だ?となる。
答えは自分だ。
お客様の立場なら、そこに頼むことを決めたのは誰だ?そしてそれを止めなかったは誰だ?
となる。


決してこれは逃げ口上ではなく。
リフォームの本質の部分で、如何にリフォーム業者選びが重要で難しく、工事後に不満が起きやすいかを表している。
それは、お客様にも業者にも言える。
『完全なる納得』これを得るためには、非常に多くの労力を伴い、努力も必要になる。
しかし、その先にしか幸せなリフォームは待っていない。
完全なる納得が出来るリフォームをするには、完全なる納得をする覚悟を持ったお客様と、それ以上に覚悟あるリフォーム業者とが巡り会うことでしか実現しない。
そこにしか幸せなリフォームは生まれないのだ。
これが、本当に幸せなリフォームの答えである。

巻末特集
■マンションリフォームの基本
【マンションという聖域】


私はマンションとは、ひとつの街であると考えている。
同時に聖域でもある。


この聖域というのには2つの要因がある。
まず1つ、外部の改修工事に関して言えば、戸建とはまったく違う、言わば野丁場という世界で、戸建リフォーム、つまり町場の職人とはまったく別物である。
そこには大規模改修専門の会社が有り、専門の職人がいる。そして、専門的な知識であったり、経験だったり資格だったりが無いと通用しない世界である。
町場の方から見れば、そこはもう聖域である。
請負金額も桁違いで、そこへ辿り着くまでには色々な事をクリアしていかなければならない。
ここについては、この辺にして、これ以上は、ここでは書かない。

2つ目、これは最初に街と書いたことに続くのだが、この街で工事をするには申請と許可が必要となる。
このマンションという名の街は、個人の所有物でも有るが、共有の部分が多いのだ。
それは、エレベーターだったり、廊下だったり、敷地内の工事車両を停める場所もそうだ。
賃貸の場合、リフォームはオーナーが行うだろう、しかし、個人所有の場合は、各個人で業者を探さなければならない。


ここで大事なことがひとつある。マンション工事の場合、戸建と違い、そのリフォーム会社がマンションリフォームの経験や知識を、しっかり持っているかどうかが重要となる。
実際に工事をしたとき、または工事をしようと思わなければ気付かない事実がいくつもある。
例えば、7階建のマンションで一階の床のコンクリートを、配管工事のために機械で砕く。
そうすると、7階の住民からクレームが来る。
思っている以上に、コンクリートは音を通すのだ。
また、駐車する際にも色々とルールがある。場所は勿論、縁石や歩道に乗り上げて良いか悪いか、ここら辺は事前にマンションの管理人へ確認すれば分かる。
そしてそのマンションの管理人(管理会社)も協力的な場合と、非常に厳しい場合がある。


経験と知識あるリフォーム会社で有れば、どんな管理人ともしっかりと相談と打ち合わせをしたうえで工事に取り掛かるだろう。
しかし、意外な落とし穴でクレームが起きるケースがある。
過去にマンションの敷地内でボヤ騒ぎが有り、敷地内が完全禁煙なのに職人に伝わっていなかったりとか、土日祝は工事が出来ないということを考えずに工程を組んでしまったりとか、そういうことが現実として起こり得るのである。
では、どんなところへ頼めば良いのか、それはマンションリフォームのコツを掴んでいる会社、またはその担当者だ。


コツとは、前述のような内容である。そのマンションごとのルールを調べ、必要に応じては管理人や理事長の元へと相談に訪れる。
そういった動きを分かっていれば、そうそう大きな問題は起きないものだ。
更に理想としては、そのマンションで過去に工事を行っており、クセを分かっていれば任せて問題無いだろう。壁を壊した内部の状況や、床の張り替えの際に、床材を張る前に下地を直す必要があるとか。


もしマンション内で悪い評判の会社が有れば、そこに頼む必要は無いとは思うが、頼もうと思った会社が過去に同マンションでクレームを起こしていたとしても、事のレベルによるが、一度失敗し学び、今回の工事に活かしてくれると思えば、さほど気にすることもないだろう。


ここで簡単にまとめてしまうが、マンション工事にとって大切なことは、そこがある種の聖域だと認識しているかどうかだ。それは、業者だけではなく、お客様自身もそうだと言える。


あとがき
【感謝】

私がここまで書き切れたのには多くの人との出会いや繋がりがあって、その中で沢山のことを、学ばせて頂いたからであると改めて感じている。
現場へ行き、お客様から喜びの声を聞くことも有れば、罵声や怒号を浴びたこともある。


新築の引き渡し直前、夜に一人ポツンと、無数に残った是正やら掃除の多さに途方に暮れたこともある。
マンション外装改修工事、6階の足場の上で外壁の剥がれ落ちる寸前のタイルの著しい劣化状況をみて、同席した職人が諦め、一瞬の茫然自失を味わったこともある。


正直、社内でも罵声に耐えた時期もあった。
それでも誰よりも現場に行き、お客様の為に、そして会社のために働き、学び続けてきた。
そして、それを形にしようというとき、多くの方が力を貸してくれたことには感謝しかない。

リフォーム業界は生活に必要なので、形は変われども無くなることは無い、つまりクレームも同様に無くならないのだ。
残念ながら、今日もクレームよって病む人もいれば辞める人もいる、困っている人もいるだろう。
この本の冒頭で述べたように、この本は世界の全ての人へ向けて書いたものだ。


多くの人の目に触れる情報は、綺麗なものが多い、キレイなデザインの空間で憧れの暮らしだったり、笑顔のお客様と担当者だったり、お客様向けに見せるものに本質は映っていない。
本質の一面は見せているとは思うが、そもそも見せる部分ではないので、それもそのはずだ。
この部分について語られるのは、業者間での愚痴だったり、ネット上やSNSサイトの評判だったりとかなり偏ったものしかないはずだ。


それもそれでいいと私は思った。
でも、だからこそ私は筆をとった。
私にしか、書けない、読んでくれている『あなた』へ伝えたいことがあったからだ。
この本は、リフォームという、よく聞く言葉の中に含まれている、建築知識やら事例等々、全ての事柄を網羅し、書き切れたかというと、そうでは無い。


100人居れば100通りの思うことがある。それくらい裾の尾が広いテーマであることは承知している。
しかし、それでも私が今まで味わってきた酸いも甘いも、清濁も、そして感謝され感謝すること。


それらを書き残したことで、このクレーム産業に、この国に、業界の新米に、ベテランに、怒れるお客様に、そんな失敗をしたくないお客様に、すこしでも良い影響を与えられたのなら、それに勝る幸せは無い。


生意気にも、そんなことを感じながら、ここに筆を置く。

                                  リフォーム思考

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