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育児休業をプロティアン・キャリアの文脈で捉えなおす(仮)

育児休業に入って間もなく、変幻自在の主体的な人生を送るプロティアン・キャリア理論に出会い、自身の人生設計に光明を得たことを先日noteにまとめました。
そして、1年間の育休期間において、「育児休業をプロティアン・キャリア理論の文脈で捉えなおす」ことを一つの大きな目標において、検討・行動していくことを決めました。

育休生活5か月が経過して、理論そのものに関する理解を深めるほかに、育児へ向き合うことによる様々な気づきが日常にあふれています。
今回は、この5か月で得た気づきを振り返り、プロティアン・キャリアの考え方を用いながら、育休生活をより豊かに、育休期間を人生の宝物とするための育休への向き合い方をほどいていきます。

ただし、あくまで、(仮)!まだまだ育児生活は発展途上です!

アイデンティティの揺らぎと(永続的)再構築

プロティアン・キャリア理論のキャリア観の特徴をおさらいしておくと、次の点が挙げられます。

  • キャリアのオーナーは自分自身であり、その成否は、自身が定義した心理的成功の度合いによる。

  • 他者との関係性のあり方、または関係を通じてキャリアを形成する。

  • 心理的成功に向け、自らが変化することによって環境や関係にアプローチすることで、望むキャリアを実現する。

  • プロティアン・キャリアを実現するためには、アイデンティティとアダプタビリティが必要不可欠である。

このうち、育休とアイデンティティの考え方については、プロティアン・キャリア理論以外のキャリア理論の考え方も踏まえて、以前整理してみました。

上記でまとめたとおり、育休により、それまで当たり前であった組織からの期待が一時的に途切れることは、自己概念と現実(経験)との不一致と、自己の未来に向けた連続性の不安を生むことになります。これこそが、なんかモヤモヤするアイデンティティの揺らぎの正体。そして、その揺らぎが大きいほど、組織人であることに依存しきった自己概念を持っていた自身に気づく。
育休という機会は、まずは、その現実に目を向けさせ、そして一定期間を経て次のステップにアイデンティティをいざないます。つまり、「アイデンティティの(永続的)再構築」です。

組織人として受ける期待は移りゆくことと同様に、役割自体も永続性を持つものではありません。この当たり前の現実に気づくことにより、自身が持つ役割期待に応じたサブ・アイデンティティも拡大・成長・変化することを想定することができます。そして、日々の大小さまざまな選択の連続により、アイデンティティを意識的に、永続的に再構築していく、そんな意欲と覚悟が拓かれることとなります

これは変化へのオープンネス。VUCA時代に必須と言われるマインドセットとも言えます。

新しい関係性を築く

上記で述べたアイデンティティの(永続的)再構築は、それまでの依存的な自身と組織との関係性をバージョンアップすることも意味します。職場に行けば、役割が与えられ、誰かから期待され、それなりに努力して成果を出せば褒められる。外形的なこのサイクルは変えなくていい。けれど、このサイクルの意味を自分で考えること。その意味にフォーカスすることで、自身がこの組織における役割を通じて何を果たそうとしているのかが明らかになり、自ずと個人と組織は対等の関係に近づいていきます

また、私の場合、子が生まれ新たな家族が増え、7年間続いた夫婦と娘の3人の家族生活のバランスが変化することに、期待とも心配とも言える不思議な感覚を持っていました。実際、子の誕生は、同時に家族内の新たな関係性を生むことになりました。
そして、自身の育児休業による育児への専念。夫婦間、親子間の関係は、それぞれ生活リズムとともに大きな変化にみまわれることになります。

この家族内関係には、まだ落ち着きは見られません。日によって変化するそれぞれの役割と感情。娘は頼りになるお姉ちゃんでもあり、友達の影響を受けやすかったり、急に不安定になることもあります。
むしろ、生活習慣として染みついていた、かつての家族内関係にも当たり前なんてなくて、その都度、環境や個人の状態に合わせて最適な状態を模索しながらアップデートしていくものなのかもしれません。

育児休業は、半ば強制的に、上記の関係性を再構築する機会となります。この新しい関係性の構築への適応こそが、柔軟な人生設計を可能とするアダプタビリティと言えるでしょう。

キャリア資本に意識を向ける

個人と組織との関係が対等になる、あるいは、家族内関係を柔軟に組み替えてアップデートしていくためには、私や他者がどんなアウトプットにコミットできるかを明らかにすることが重要となります。自身が与えられた役割を果たすだけの「使われる資源」であるならば、自分に何ができるか、何をなしたいかを考える必要などありませんでした。一方、永続的な役割などなく、少なくとも会社員人生は退職という終わりから逃れられません。ならば、自身を「成長する資本」と考えて、どんな種類の資本を蓄積し、さらに未来の目標に応じてこれからどの資本を形作っていきたいか、自分で設定していくほうがいい。

育児休業は、強制的に実務から離れる機会。だからこそ、直面する実際の仕事に惑わされず、これまでの仕事経験の意味にフォーカスすることができます。経験の意味を紡ぎ、未来に向けて構成することが、キャリア資本を要素とする人生の物語を作ることでしょう。

「育児は仕事の役に立つ」
この考えに、私は大きく首肯するけれど、そもそも、どんな経験も、自身の未来を構成することに役に立たないものなどないのかもしれません。育児も仕事も人生におけるタスクの一つであることに変わりなく、その価値は対等で、いずれも人生を充実させるための要素となります。
重要なのは、経験に対し、自ら意識的に意味を付与すること。そして、数々の意味を織り合わせることで、人生の物語を作ること。

育休期間は、こんな物語を編集する時間を与えてくれます。

心理的成功に向き合う

人生の正午に育休を決意し、そのゴールを考えた際、改めて一人の人間として、価値に目を向けることの必要性を感じました(下記note)。

所属組織の存在を前提としない自身の価値に向き合い、「社会にどんな価値を提供したいか」を考える機会。

同時に、本来、育児は、子の健やかな成長という価値に自ら責任を負い、休業による育児への専念は、その価値へ自身がどのように向き合うかを問われることになります。

これら諸々の「価値」を考えるきっかけは、自身が生きていくにあたっての数々の選択の機会において、どの価値に重点を置いて決断していくかの指針の材料となります。
これから、私自身が定義する心理的成功に満ちた人生を送るための第一歩は、そんな自分発の価値に向き合うことから始まります。

育児休業の人生における価値(仮)

以上をまとめると、育児休業は、人生において次のような、またとない機会として捉えなおすことができます。

  1. アイデンティティの揺らぎから、意識的に再構築する機会

  2. 組織や家族、その他の他者と新しい関係性を築く機会=アダプタビリティを向上させる機会

  3. 過去を振り返り、キャリア資本に気づく機会

  4. 未来に向けて、キャリア資本を築く機会

  5. 心理的成功を見つめなおし、人生を再構成する機会

「アイデンティティ」「アダプタビリティ」「関係性」「キャリア資本」「心理的成功」「未来構築」。これらはすべて、環境変化に応じて変幻自在に自己実現を果たしていくプロティアン・キャリアに必須の要素。つまり、育児休業という機会が、各人のプロティアン・キャリアの実現にとっての促進剤となりうるということ。

これらは、ダグラス・ホール教授および田中研之輔教授が提唱するプロティアン・キャリア理論の考え方をベースに、私なりに育児休業を捉えなおした仮説です。だからまだ、根拠のない想像。
まずは、残りの育休期間、私自身が経験することで、自信を持って育休を人生の価値ある期間としよう。そして、さまざまな体験者の事例を踏まえて整理して、根拠を構成していこう。

目指すは、「男女問わず、育休明けのプロティアン人材で満ちた社会」へ。

育休に入った頃には想像だにしなかった目標が新たに生まれました。

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