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育休中の課題に答えるもの:プロティアン・キャリアとの出会い

育児休業に入ることに伴い、突如として自身に生じたアイデンティティと組織との関係性に関する課題。それは、組織人として充実した仕事生活を送っていたときには想像だにしなかったものでした。

その課題に私なりの答えを出すべく手探りで動き出した「人生の正午」におけるタスクとゴール。前回のnoteでも述べたインプットとアウトプットの機会を家事と育児の合間に埋め込んでいきました。

そんな活動の中、出会った現代版プロティアン・キャリア理論。この理論と実践が、抱えていた課題の答えにつながる(かもしれない)糸口を見出します。

今回は、育休とプロティアン、両者を結ぶ紐帯をほどいていきます。

関係性に着目するキャリア理論

キャリアコンサルタントは業務上人の心の動きに触れる場面が多い。このため、自然、キャリアコンサルタントになるための学習も、心理学的アプローチが大きな部分を占めることとなる。実際に自身がキャリアカウンセリングを行う際にも、心理学の知見を活用して個人の内面に迫り、気づきを促すアプローチは、有用でとても奥が深い。

一方で、単に、内面的なアプローチを重ねて職業観や人生観を形作ったとしても、その内面的活動のみでキャリアを形成していけるものではない。まして、キャリアコンサルタントは他者を援助するもの。自身の周辺環境を理解したうえで自己概念へ迫るならまだしも、支援対象となる他者の置かれた環境や環境へのアプローチの可能性を無視した支援はありえない。
つまり、自分以外の他者との関係性に目を向けずに、一人でキャリア形成などできない。キャリアは個人的であると同時に、社会的なものと言える。

プロティアン・キャリア理論の大きな特徴の一つに、この関係性に着目し、関係性のあり方によってキャリアが形成されていくと考える「関係性アプローチ」がある。つまり、自ら関係性を作り、変化・成長させ、広げ、深めていくことにより、望むキャリアを実現していくことを意味する。
このことは、育休に伴い、組織との新しい関係性を模索しようとする自身の課題にとっての光明に感じた。

人生のキャリア形成というキャンバスにおいては、会社も上司も同僚も、ひいては、家族や親友などごく身近な人から時代を代表するような人・組織まで、すべて私との間には対等な関係にある。その関係は、私がどんなキャリアの絵を描こうとするかによって柔軟に形や位置を変える。
私にとって、これまでの固定化された関係性を描く思い込みに満ちたキャンバスは、その鎖が一度に解き放たれて、キャリアの展延性は限りなく高まっていく感覚を得た。

なお、現代版プロティアン・キャリア理論と実践手法は、ダグラス・ホール教授の理論を現代社会に即してバージョンアップのうえ、田中研之輔教授が2019年に提唱された。詳しくは、同教授が共同代表を務める一般社団法人プロティアン・キャリア協会のサイトに分かりやすくまとめられている。

「心理的成功」を定義する

プロティアン・キャリアとは、変幻自在のキャリア形成のあり方を意味しており、自身の課題感に沿って解釈すれば、以下の特徴を持った考え方である。

  • キャリアのオーナーは自分自身であり、その成否は、自身が定義した心理的成功の度合いによる。

  • 他者との関係性のあり方、または関係を通じてキャリアを形成する。

  • 心理的成功に向け、自らが変化することによって環境や関係にアプローチすることで、望むキャリアを実現する。

  • プロティアン・キャリアを実現するためには、アイデンティティとアダプタビリティが必要不可欠である。

この考え方を踏まえると、自身にとっての心理的成功がどのような状態かを常に想像し続け、その状態に向けて行動を繰り返す、そのプロセスこそがキャリア形成であると表現することができる。

自身の場合に当てはめると、組織との関係性の再構築の課題に向かうには、自身にとっての心理的成功を定義し、それを実現するための組織との関係性を模索することになる。

では、そもそも「心理的成功」とはなんだろう。「人生の正午」のゴールに関するnoteにまとめたとおり、組織との依存関係にない自身を想定したとき、私そのものが社会に提供する価値(=存在意義)に視点が向かう。つまり、何を提供できるか、何を提供したいか。
その価値を提供し続けることこそが、心理的成功の状態を意味するのではないだろうか。

日本における育児休業を捉えなおす

幸い、育休に入って間もなくプロティアン・キャリアの考え方に出会い、それからの行動の指針を早期に得ることができた。
自身にとっての心理的成功を改めて考え直し、それに相応しい関係性を築いていくための行動を見出す。
あとは、行動あるのみ。

そして、もう一つ。貴重な育休生活における大きな目標が追加された。

育児休業をプロティアン・キャリアの文脈で捉えなおす。

育休のきっかけのnoteに綴った「育休の人生における意義」に関する仮説。これらをプロティアン・キャリアの文脈で説明できるかもしれない。
そんな期待とともに、価値ある育休を自身で証明すること、そして、それを発信することが、自身が社会に提供できる価値のうちの一つかもしれない。


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