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【読書感想文】仮面の告白(あまりにも抽象的で、自らが読み返してもなんだこれってなったのだ。皆にも見て欲しい。)

 すまぬ。今日は残業と学校でもう寝る寸前である。3年前に書いた仮面の告白の感想文だ。興味のある人だけ読んでくれたまえ。おそらく読んだ事ない人は意味が分からないかもしれん。しかし、意味あるものだけがこの世の全てではない。読者諸君はそれを肝に銘じて欲しい。おやすみ。感覚で読んでくれ。

感想

 全ては、愛の追求と美の理想。
 美への執着が彼の偏愛を形作る。汚穢屋の悲哀、死を予感させたジャンヌダルク、兵士の汗の匂い。幼い頃から死の想像を愛し、手の届かない悲劇的なものに憧憬を抱く。その憧憬に自分を投影し、官能的な欲求が少しずつ目覚めていった。彼のあらゆる空想には、熱烈な願いにも似た絶望が滲み、心は死と夜と血潮に向かっていく。神輿が家の前になだれ込んだ光景も、担ぎ手たちの淫らであからさまな陶酔の表情が、彼の心を充たした。
 聖セバスチャンの白く引き締まった裸体には、矢が食い入り、殺される美がある。彼は官能的な激甚な喜びをそこに見出した。そして、初めての不手際な悪習を体験した。

 中学で出会った近江という男に、明白に肉の欲望と繋がった恋をした。彼は、近江によって、嗜好の体系を築く。触れたい誘惑と理性で葛藤した。ただ、近江の腕に凭れて歩いた時の喜びは無上だった。この恋は、近江の荒々しい生命力に対する嫉妬によって終わる。嫉妬は、寸分違わず好きな相手に似たいという熱望。それは、叶わない愛の秘儀だった。

 彼は、女の魅惑を少しも感じなかった。誰もこんなものだと、明らかな欺瞞に気づいたまま、自分に暗示をかける。悪習の際も、一度たりとて女を心に浮かべなかった。また、接吻への虚偽の要望に縛り付けられ、彼は精彩を欠いた内気な時期を過ごす。
 女への愛は真面目に考えたが、心にその疲れが溜まると、自らを理性の勝った人間に見立てた。冷ややかな持続性のない感情を、女に飽き果てた男の態度になぞらえ、大人ぶりたいという衒気を満足させる。欲求無しに愛せるものだと信じた。

 彼にとって未来は重荷。人生は義務観念で始めから彼を締め付けている。そのせいか、死を恐れたが、死を待ちかねた。いつか他人の中で、晴れ晴れと死にたい。そう思った。
 園子と出会う。彼女は、心を動かす美しさを持ち、清らかな気持ちと慎ましい感情を彼にもたらした。自分が値しないと分かるが、卑屈にはならない柔らかな存在。愛さなければならぬ。そう感じた。
 だが、彼は目の前の幸福に迷う。園子がいる手前、正常な人間を装うことに、得体の知れない不安を感じる。接吻でそれは明らかになった。何の快感もない。憔悴してしまった。彼女から逃げなければならぬ。自分の常識的な訓誡ではどうしようもないほど、愛と欲望に齟齬があった。園子は真っ直ぐに愛してくれる。でもそうできる園子に自分は嫉妬する。気がついた。彼女を愛していればこそ、彼女から逃げなければならないと。

 結局、彼の異常な欲望を、よしんばずっと穏当な形でも充たしてくれるような機会は、この国にはなかった。ただ園子に会いたいという純粋な気持ちと、男への肉欲が、彼を残酷に二つに引き裂いた。
選択から逃げ続けた彼に、園子と別れる時が近づく。別れに気がつくと、それは一種情熱に見紛う、暗い神経的な焦燥に。……然し、それにしてもそれは終りのないダンスだった。
 別れの時刻。園子はいなくなる。しかし、彼の中では、男の肉体への怪しい動悸が胸底を走り、未だにギラギラと凄まじい反射をあげていた。
肉付いて離れない仮面を思い切り引き剥がし、彼は自分自身を力強く世に晒した。


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