「半自伝的エッセイ(28)」アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ
チェス喫茶「R」から徒歩5分ほどのところにイタリアンレストランがあった。大通りから細い道に曲がりさらに路地を入ったところにあるビルの二階という立地のせいで知らない人はまったく知りようのない店だった。私は「R」の誰かからその店の存在を聞いて時折訪れていた。マスターとも顔馴染みだったが、その日はいつも店を手伝っている奥さんの姿がなく、マスターが自分でお冷やなども運んでいた。帰り際に理由を尋ねると、奥さんは体調がすぐれずに床に伏せているという。医者にも見せたが原因がまだわからない。