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うた

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気ままに書いた散文詩や、短編小説たち。 一話完結のものを集めました。気軽に読んでやってください。
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2020年8月の記事一覧

パレード

まだ、誰も僕を見つけてはいない。

極彩色の紙吹雪
ステキに陽気な音楽
溢れんばかりの歓声

ここが世界中のどこよりも
醜い闇を映し出す鏡であることを
僕は誰よりも知っている。

まだ、誰も僕を見つけてはいない。

キャンディをねだる子供たち
バルーンを配るピエロ
顔を赤らめた飲んだくれ達

喩え神様が読み飽きたシナリオでも
何も知らない哀れな役者は
台本通りの幸せを演じている。

まだ、誰も僕を

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夜を盗みに

何かが起こりそうな
冷たい夜の気配に誘われて目が覚める。

きっと二度と朝は来ないだろう。
これが最後の冒険になる。

深呼吸して、闇の音。
夜の街を流星の速さで疾走する。

出来損ないの私はきっと虎にはなれないだろう。
けれど、この夜を盗むことはできる。