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ナッジとスラッジを見分ける
「行動経済学の使い方」(大竹文雄 著)を読んで、行動経済学で学ぶ基本要素の一つである「ナッジ」について、より深い理解を得ることができた。
ナッジは、コンビニで並べられる商品の陳列方法や、政策や広告など、幅広い所で活用が進んでいるが、中には完全に利益目的でこの概念が使われているものもある。
ナッジ:人々の行動をより良いものに誘導するもの
スラッジ:人々の行動を私利私欲のため、よくない方向に誘導するもの
と本書では分類されている。
「ナッジ」については、近年その効用をめぐって、批判的な意見も出ているが、本書では基本的に「ナッジ」の社会的有用性を支持する立場に立った説明が行われている。
ナッジの設計は概ね次のようなプロセスで組み立てられる。
① 介入を試みようとする人の意思決定プロセスを分解する。
② 各プロセス毎にどういった障壁があるのかを理解する。
③ その障壁に対する効果的な打ち手を考える
例えば私が甘いものが好きでやめられないとする。
甘い物を食べることを決めるプロセスは、
今すぐ甘い物を食べて現在の満足を得る or 糖尿病リスク等を考えて控える
といった選択の問題があったり、仕事で疲れてくると甘い物を食べてしまう、というタイミングの問題などがある。
その人が持っている意思決定の癖や置かれている環境に応じて、最も効果的な打ち手を考えていくのが「ナッジ」で行われる基本的な戦略だ。
適切なナッジが作られているかどうかを判断するために、本書では、イギリスのBehavioural Insights Teamが開発した、EASTという指標が紹介されている。これは
Easy(簡単か、情報量は多すぎないか)
Attractive(魅力的か、人の注目を集めるものか)
Social(社会的規範や互恵性に訴えかけているか)
Timely(意思決定をするベストのタイミングか)
といった要素の頭文字を取ったものだ。
思い返せば、我々は無意識の内にナッジを生活の中に取り入れていて、部分部分ではこういった要素を活用していることもあるだろう。
例えば宿題をなかなかやらない子供に対して、直接「やりなさい」というよりも、「周りの友達はみんなやっているよ」といった社会的規範を活用する(Social)とか、子供の気分の良いタイミングで宿題の話をする(Timely)といったことだ。
そして、ややもするとこうした工夫が行き過ぎてしまって、意図せずして「スラッジ」になってしまっていることもあるのかもしれない。
これだけナッジもスラッジも世の中に出回ってくると、それを見分ける力も大事になってくる。
より良い意思決定や判断を行うためにも、今一度「行動経済学」を学ぶ価値はありそうだ。
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