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詩集:自家中読

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生活の中から生まれた言葉を縫い止めた刺繍。つれづれ。記録。
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2022年2月の記事一覧

心の冷えていく夜に

心の冷えていく夜に

妊娠中、つわりが酷かったとき
飲みに行ってほしくなかったのではなくて
飲める自由がないことに気づいてほしかった

産後、一時間おきの授乳のころ
睡眠不足のツラさを比べたかったわけではなくて
他にできる家事は自分で終わらせてほしかった

あなたがやっていたことは
相手への思いやりではなくて
自分がやったことをアピールしていただけだと
気づいてほしかった

こんなに頑張る自分を褒めて
こんなに思いやり

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テキスト、トリミング-八月終わり-

テキスト、トリミング-八月終わり-

やまのみどり
揺れる、稲
川から藻のにおい、かすか
山ぎわは白い黄色なライン

仰ぐ空は
山吹から薄紅
とうめいな紫、水色から深い青

そして群青と藍

抜ける風の中に夕げの香り

夕日に向かう単線の汽車
少し重たげに

視界の全てにかかる
ノスタルジックのオーバーレイ

帰るからす
三つ、四つ

音叉

音叉

わたしたちの会話は
心のふるえを
空気のふるえに変えて
おたがいの心に届けてる

あの日
あのとき

ほんのわずかな心のふるえを
ていねいに拾ってくれたあなたに

今度は空気をいっぱいふるわせて
ありがとうを伝えたい