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多拠点ワーケーション〜旅する正社員のリアル(365日編)

風のように自由に、土と混じり合い生きる

風のように物理的にも精神的にも自由に動きまわり、その土地の環境・文化と混じり合いながら生きていく。

多拠点生活×ワーケーションを実践している、旅する正社員のRayです。賃貸マンションを解約し、家なき子になって1年が経ちました。
1ヶ月先の住処が決まっていない・・・一般的にはリスクのある生活かもしれません。しかし、そういった不確実な世界に身を置いてみると、当初予想していたマイナス面よりも、想像だにしてなかったプラスな経験が上回っているように思えます。不確実性バンザイ。
大人になって経験値が増えると、驚きが少なくなりますが、旅をしていると新しい発見の連続で、精神年齢が若返ります。実際、旅先で出会う人たちから、実年齢より10歳ほど若く見られることも。

ワーケーションや人生の意義を問い直したり、地域課題と向き合ったり、旅のサブスクの主要サービスADDress/Living Anywhere Commons/HafHを使ったり、滞在先にある中学校で特別授業をしたり、国土交通省の「二地域居住ハンドブック」に登場したりと、ワーケーション道を邁進しています。
このnoteでは、旅における偶然が織りなす体験や出会い、それらが社会にもたらす効果、そして、定住せずに暮らすノウハウなど、幅広くご紹介します。365日の濃密体験を元にしているので長文ですが、ご笑覧ください。


なぜ多拠点ワーケーションをやるのか

ワーケーションの目的

豊な人生をおくる。これはワーケーションを実践する前には、あまり意識していませんでした。仕事を通じて社会貢献することが最優先という価値観だったので。しかし、ワーケーションを通じて、全国各地で地産地消したり、早朝にスキーやシュノーケルをしてから仕事をする等、生き生きとした人生を歩んでいると、周りの人から「豊な人生ですね」「レイさんのような豊かな大人になりたい」と言われることが増えて驚きました。

ワーケーションを始めたキッカケは「なんか面白そう」という好奇心でしたが、旅を続けることで「豊かな人生をおくる」という目的が朧げに見えてきました。1年中旅をするには断捨離が必要なため、物質的な豊さが減っていくのに反して、精神的な豊かさが向上します。いざ自分の身に起きてみると面白い体験です。

ちなみに、世の中でワーケーションが普及したこともあり、観光庁がワーケーションの形態をまとめています。さまざまな個人や企業が、それぞれの目的に合わせてワーケーションを実践すれば、個人・企業・社会がもっと豊かになりそうです。

ワーケーションの効果

ワーケーションの目的が豊かな人生をおくるという「個人的」なものでも、結果的に「社会的」な効果を生むのが、ワーケーションの興味深い特徴です。

同じ地域に1ヶ月ほど滞在していると、短期間の観光ほど浅くもなく、かといって、移住ほど深くもない、地域との程よい「関係」が生まれます。観光する「交流人口」と移住する「定住人口」の間に存在する「関係人口」です。また、関係人口の中にもさまざまなグラデーションがあります。僕は下記の図だと、おそらく「風の人」でしょう。

例えば、宮古島に長期滞在したとき、ビーチクリーン活動への参加や、メロン収穫のお手伝いなどしました。それに加えて、宿のオーナーと毎晩泡盛を飲みながら、地域の課題を色々と聞く中で、廃校を活かすアイデア、農業にAIやIoTを活かすアイデアなどを話して、実際に取り入れられそうなものもあります。

また、地元の食堂のおばあと仲良くなり、毎週ランチで話をしていると、近くにある地元の景勝地の地名が、実はGoogle Mapで間違っていることが分かりました。そこで、Googleに申請して地名を修正したところ、「そんなこと出来るの?」と驚かれました。

さらに、自分自身がAI開発に関わっていることもあり、宿のオーナーと一緒に宮古島の教育委員会に提案して、中学生向けのAIの特別授業を開催したりもしました。

このように「風の人」として、その土地に新しい風を吹かせられるのは、個人としても豊かな体験です。このような現象は「よそ者効果」として学術的にも研究されているようです。5つの効果を見ると、なるほど納得です。

  1. 地域の再発見効果:よそ者は地域に不慣れなことが幸いして、逆に地域資源の価値や地域のすばらしさを見出すことができる

  2. 誇りの涵養効果:地域外の視点を持つよそ者を意識することで、自らの地域のすばらしさを認識する

  3. 知識移転効果:よそ者が地域にない知識や技能を持ち込む

  4. 地域の変容を促進する効果:よそ者の持つ異質性は、地域側に「驚き」や「気づき」をもたらし、そこから地域が変容する

  5. 地域とのしがらみのない立場からの解決案:地域のしがらみに捕らわれない立場だからこそ、よそ者は優れた解決策を提案できる

各地域の行政の取り組みを見ていると、観光客を増やす、または、移住者を増やす施策が多いようです。しかし、観光客が増えても地域課題の解決につながるとも限らず、また、人口減少の日本で移住者の争奪戦をしても先行きは暗いです。それよりも、「複数の地域にゆるく関われる」関係人口の方が、個人にとって移住よりハードルが低く、地域にとっても課題解決につながる可能性があって、みんなハッピーではないでしょうか。

なにを多拠点ワーケーションでやるのか

ワーケーションの仕事

自分でコアタイムを決めて仕事をしています。これは、オフィスでの裁量労働や自宅でのリモートワークと変わりません。むしろ、朝の散歩や昼の休憩時に、美しい景色を眺めることで、メリハリが付いて効率的に仕事ができているように感じます。

また、新しい企画を考えるなどクリエイティブな活動をするときは、野外で仕事をするようにしています。景色が雄大だと、自然と視野が広がるようです。

あと、ワーケーションを実践していると、直感に反して、有給休暇の取得が減ります。ワーケーションをする前は、長期休暇を取っていましたが、それは遠方への移動時間のためだったと気が付きました。日常的に観光地にいれば、移動のための休暇が不要になります。
例えば、夏直前の1~2週間だけ夜に咲くサガリバナも、仕事が終わった後にサクッと見に行けたりします。

また、ワーケーションの経験が少ない人からは、「誘惑が多くない?」と聞かれることも多いです。しかし、日常的に観光地に長期滞在すると、観光したい欲求はあまり生まれません。「地元の人は地元の観光地にあまり行かない」のと同じ心理メカニズムが、長期滞在者にも当てはまるようです。
例えば、宮古島は、夏前は晴れの日が少なく、休日も家でのんびり読書などしていました。そして、雲の動きを見ながら、一瞬の晴れ間を狙って、宮古ブルーを見に行くこともできます。

ワーケーションの旅

1ヶ月単位の長期滞在というスタイルを取っていたので、折り畳み自転車を郵送して、自転車で行ける範囲で旅を楽しむことが多かったです。自転車の移動は、徒歩よりも範囲が広く、クルマよりもジックリ回れるので、地域で新たな発見をするのに最適な移動手段だと思います。

偶然の出会いも、旅の醍醐味です。例えば、宮古島の行きつけの居酒屋では、某有名スタートアップの創業者の皆さんと出会い「翌朝カンパチ釣りに行くけど、一緒に行く?」という初対面にも関わらずお誘いいただき、ノリで参加したら、その日一番大きなカンパチを釣り上げてしまいました。水深180mから手動リールで釣り上げる約30分の格闘で、腕がお亡くなりになりましたが。

また長期滞在していると、地元民より地元に詳しくなることもあります。僕が滞在していた宮古島のお隣「来間島」では、梅雨明けから毎朝シュノーケルをして、地元民よりもポイントに詳しくなりました。その結果、地元民のためにガイドしたり、お忍びできたプロ・ミュージシャンをガイドしたり、まるで海人でした。

どうやって多拠点ワーケーションをやるのか

ワーケーションの衣

365日ワーケーションを始めるにあたり、最初に頭を悩ますのは、衣服をどうするかです。できるだけ断捨離してミニマリストになるのは当然ですが、それでもある程度の分量になります。そこで、スーツケースをいかに活用するかがカギだと考えて、立てたまま衣装棚になるスーツケースを見つけました。少しお高いですが、全ての家財を持ち歩く家具と考えれば、お得な買い物だと思います。

とはいえ、日本には四季があり、1つのスーツケースに全てを収納するのは無理があります。そこで、シーズン毎にダンボールに入れて郵送して保管できるサマリーポケットを利用しています。全国どこでも取り出せる宅配収納サービスは、ワーケーションの強い味方です。

ワーケーションの食

ワーケーションの醍醐味は、地産地消グルメです。たまに外食もしますが自炊が基本です。長期滞在していると、多くの時間は観光ではなく食材調達に費やされ、休日のほとんどは地元スーパーや道の駅などを徘徊しています。
例えば、宮古島では、梅雨の時期だとマリンアクティビティの満足度が下がりますが、その分、フルーツの満足度は上がります。

ランチは外食することが多いですが、ご当地グルメの名店を食べ歩く大人の遊びもできます。短期の観光では時間がないため有名店に行きがちですが、長期滞在だと複数店を試して、隠れた名店も発掘できます。
例えば、富士河口湖では、ほうとうを毎日ストイックに食べ歩いて、ミシュラン調査員ばりの比較しました。

また、長期滞在していると自然とお店の常連になります。そこでの地元民との交流も、かけがえのない経験です。
例えば、宮古島では島の定食屋に通い、店主の島生活における壮絶な人生は涙なしでは聞けませんでした。知人を連れて行った際には「いつも息子がお世話になってます」と挨拶してくれるほど親密な関係となり、沖縄の第二の母です。

ワーケーションの住

家なき子になると切実な課題が、住処をどうするかです。最近は、旅のサブスクとして多拠点生活をしやすくなっているので、色々と利用してみました。旅人として気になる、拠点数、居住空間、滞在日数、価格、ユーザー層の観点で比較してみます。

ADDress

  • 拠点数は全国200箇所以上あり、都道府県を制覇するには十分の数があります。

  • 居住空間は、空き家をシェアするスタイルが基本で、1拠点に数部屋あり、共同のキッチンやリビングで自然と交流が生まれるのが特徴です。他のサービスより個室率も高め。

  • 滞在日数は最大で1~2週間のため、短〜中期で転々とするスタイルが合います。ただ、需要と供給のバランスで、人気の場所は2~3日しか連泊できないこともあります。

  • 価格は、44,000円/月(月14泊チケット)が基本です。例えば、1月1日~1月14日を予約するとチケットを使い切り、1月2日になるとチケットが1枚復活して、新たな予約ができる仕組みです。家なき子だと、15日先以降の家が未確定のまま生活することになるので、88,000円/月(月31泊チケット)の方が安心です。

  • ユーザー層は、若者の一人旅から、子連れの家族、引退後の夫婦などさまざまです。そのような多様な価値観の人たちと旅先で交流するのも醍醐味です。

Living Anywhere Commons

  • 拠点数は全国50箇所ほどあり、徐々に数が増えているようです。過疎地の廃校を活用するなど、都会から離れた自然豊かな場所に多いようです。

  • 居住空間は、大きな施設をシェアするスタイルが基本で、1拠点に数10部屋あり、人数の多いイベントなども開催されています。ドミトリーが多い印象ですが、オプションで個室も選べたりします。

  • 滞在日数の上限は基本的になく、短〜長期で自分に合ったスタイルを選べます。短期のつもりが、気に入ったから長期滞在するケースも多いようです。

  • 価格は、27,500円/月が基本で、ダントツに安いです。拠点数が少ないこととのトレードオフではありますが、2~3週間以上の長期滞在するスタイルには適していると思います。

  • ユーザー層は、20~30代の若者が多い印象です。地域に貢献したいという志の方も多く、イベントで交流するのも一興。僕は沖縄うるま拠点の立ち上げプレオープンに参加して、生ごみ処理のコンポストを制作するなど、貴重な体験をしました。

HafH

  • 拠点数は世界で1,000箇所以上あり、全国を旅する時も強い味方です。

  • 居住空間は、ホテルやゲストハウスとの提携が基本で、中には高級リゾートもあります。

  • 滞在日数の上限はプラン毎に異なり、1泊・3泊・5泊・10泊・上限なしがあります。ただし、滞在にはコインを利用する必要があり、上限なしプランでもコインが不足する場合があるので、長期滞在すると厳しいことも。

  • 価格もプラン毎に異なり、2,980円/月で手軽に始められます。家なき子は、ADDressやLACと併用して、拠点間の移動で利用するのがオススメです。

  • ユーザー層は、ホテル好きな独身者が多い印象です。ハフコミュというSlackで運用されるコミュニティーがあり、イベントの企画など活発にされているので、イベント目当てに旅するのも楽しいです。

ホステル・ゲストハウス等
サブスクサービスではありませんが、直接、ホステル・ゲストハウス等と契約して1ヶ月プランを利用することも可能です。宿を探すのが大変ですが、ADDress / LAC / HafHを使う中でお気に入りの宿ができて、長期滞在のために直接契約するというパターンも良さそうです。

さいごに

リモートワーク環境が整ってきたことに加え、旅のサブスクサービスなどの充実もあり、多拠点ワーケーションを実現できる社会になってきました。

そんな中、あるYahoo社員と旅先で出会いました。「どこでもオフィス」という制度を利用してワーケーションしているようです。この魅力的な制度で、中途採用の応募者数は1.6倍に増加したという実績もあります。
一方で、そのYahoo社員の社内の知り合いからは羨ましがられるけど、独身でもワーケーションする人は少ないないそうです。130人以上が東京圏外に移住したようですが、Yahoo社員は全国に6,000人以上いることを考えると、移住した割合はそこまで多くありません。

つまり、リモートワークの環境が整っていても、ワーケーションに踏み出すにはあと一歩勇気が必要なのかもしれません。その一歩を後押しできればと、今回のnoteを書いてみました。以前に、ワーケーションの基本的な内容や、より手軽な月10泊ワーケーションについても書いているので、ご興味あればのぞいてみてください。

今回ご紹介したようなワーケーションの実践に興味のある方は、良ければInstagramの他の投稿ものぞいてみてくださいね。

https://www.instagram.com/ray.30cm.ns/

ぜひ、ワーケーションを実践して、豊かな人生をおくり、豊かな社会にしていきましょう。

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