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全裸の呼び声 -16- #ppslgr

 輝ける流星の一撃は、かすみがかって周囲をどんよりさせる不快な暗黒露出闘気を真っ二つに切り裂き、大地に着弾した衝撃の余波は残り霞を一発で吹き飛ばした。あたり一面に、あの不快極まりない汚濁した大気が戻ってくる。さらには、流星の着弾点を中心に光輝のドーム状結界が立ち現れたではないか。

「裸道流奥義、裸身流星脚!からの、光輝夏浜裸身結界シャイニング・ヌーディスト・ビーチ!!」
「助っ人。助っ人……?」

 輝ける流星の正体を見て、レイヴンはいぶかしんだ。それは、全裸中年男性だった。それもただの全裸中年男性ではなく、ひかりきらめきかがやいている。ひかりの全裸中年男性だ。特に股間はひときわ強くひかりかがやいている。

「きっ、貴様は光の露出者!?」
「光の露出者だぁ?」

 敵から上がった詰問の言葉にますますもって不審がる表情を強めながらも、黒ずくめは毛深露出者を脇に挟んでヘッドロックから絞め落とし、地面へと叩きつける。教授は教授で、全裸の乱入者を注視しながら、露骨に動きが鈍った小男露出者に渾身のナタ殴打を浴びせた。三倍で持久戦に持ち込む程度の戦力差であれば、三分の一となった今はもはや二人の敵ではない。

「あれはまさか、世界に危機が迫った時に現れるという光の全裸中年男性……!伝承では聞いていたけれど実在したんだ!?」
「頭痛くなってきた」

 人の命の扱いが格段に軽いことを除いて、比較的良識を持ってはいる黒ずくめ。彼は、際限なく増える露出不審者の存在にこめかみ抑えながらも、スウェイバックで褐色露出者のフックを回避しカウンターで相手のこめかみに銃把を叩きつける。そのたった一回で、リボルバーも銃身が目に見えて曲がってしまう。もっとも、撃つ前にはすでに腐食で使い物にならなかったがゆえに使い捨てたのだが。

「ようやく見つけたぞ、露出会!今度こそおヌシらが何を企んでいるか洗いざらい白状してもらおうか!」
「グヌゥーッ!煩わしい野良犬め!裸ーッ!」
「裸ーッ!」
「露ーッ!?」

 闇の露出者と光の露出者が交差した時、吹き飛んだのはうすらハゲの闇露出者の方だった。

「クロスカウンター、しかも一方的な一撃」

 レイヴンの眼は、常人には捉えがたい一連の攻防を捉えていた。ハゲ露出者が正面上方から繰り出した正拳突きに対し、相手の勢いを活かす形で拳を叩き込み、なおかつ相手の一撃は最小限の動作で受け流し無効化していた。まさに、達人の所作であった。

 強打を受け派手に宙を飛んだハゲ露出者は、宙返り受け身から路面に跡を残し着地すると握り込んでいた何かを、空中へばらまいた。爆発物を予期し身構えた三人だったが、淀んだ空気の中で輝くそれらは、コインの群れであった。一同と距離を取っていた観衆が、一気に鉄火場になだれ込む!

「ここは引くぞ同志!」
「裸ーッ!」

 暗黒露出集団は一目散に、皆バラバラの方角に駆け出して行く。とっさに後を追わんとする二人だったが、その時には服を観衆に掴みとられていた。

「アンタ!アンタ観光客だろ!なんか買ってくれや!」
「なんかくれなんかくれなんかくれなんでもいいからくれ!」
「これはかの初代ドブ沼公由来のツバで……」

 一般人に手を上げるわけにもいかず、ほうほうのていで人だかりから抜けたした頃には、闇の露出者も光の露出者も姿を消していたのである。

【全裸の呼び声 -16-:終わり|-17-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

前作1話はこちらからどうぞ!

現在は以下の作品を連載中!

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