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全裸の呼び声 -27- #ppslgr

「最後に一つ」
「まだあんのか!?まあいい言ってみな」

「ここ一週間出没するようになった、全裸露出者が頻繁に出入りするような施設。心当たりないか?」
「あ~、正直大した害もねぇから考えたことなかったぜ。なんだい、それを教えりゃおまえさんがたが連中を掃除してくれんのか?」
「まあ、そのために来たんだしね」
「ほっほう、じゃあ捜し物に付け加えてやる。我が物顔でのし歩くからうっとうしいのなんのって。服もなしに歩きまわりゃ早々にくたばるかと思いきやピンピンしてるしな。じゃあ連中の拠点っぽいの見っけたら、黄色だ。覚えたな?」
「あいよ」

 態度はともかく、わずかに一人と交渉した結果としては上々といっていい。二人は不遜な態度の老人に軽く会釈し、探索へと戻る。

―――――

 今まで登ってきた道からそれて丘陵を下りつつ、二人はあのすり鉢の鍛冶場を目指す。そこは二つの丘、新ドブヶ丘と旧ドブヶ丘の境目、一番低くなる立地とあって、一際異様な雰囲気が漂っていた。汚れとは低きに流れるものである。

「順番的には、まず武器を獲得した後に、連中の拠点を叩きたい。申し訳ないがそれでいいか?」
「問題ないよ。赤の狼煙が確認出来たら、まず最優先でそちらにいくってことで」
「ああ。青の狼煙は近場なら覗いてみる方向で良いだろう」

 優先度としては、鍵となる異界の主が最上位、次が露出会の拠点となり、それ以外の優先度は比較的低い。だが、主についてはまるで場所がわからず、拠点についてはまだあてがあるが、確証もない。何より、つめている構成員の数も少なくないだろう。というのが二人の見方であった。

 結果として、まずこのドブヶ丘で機能する、まともな刀剣を入手しないことには露出会ともドブヶ丘害獣とも渡り合うには心もとなく、また明確に場所がわかっているのも鍛冶場だけ、との結論になったのである。

「率直に言って、すまん」
「いいっていいって、私だけ問題なく戦えるのも不可解だし、手ぶらで来たわけじゃないんだから」
「それについてなんだが、ここに入ってから何か不自然な体験とか、なかったか?」

 レイヴンの問いかけに、アノートは真顔になって考え込んだ。サンプル数が少ないとはいえ、異能に格差が生じているのは不自然だからだ。ここが人為的変質空間であるから、なおのことであった。

「……いや、ないね。まったくだ」
「そうか。やはりたまたまなのか、それとも」
「もし客人扱いを受けてるとしたら、ちょっとぞっとしないね」
「客あつかいならさっさと主が出てきても良さそうなもんだが」

 ふと立ち止まって辺りを見回すも、相変わらずの奇妙な建物並び以外にはなにもない。時折すれ違う住人が、一行から何かむしり取れないか虎視眈々と狙っているくらいであった。

「やっぱりいない。あの時ちらっと顔だしたのは一体なんだったんだ」
「あんがい、恥ずかしがり屋とか」
「迷惑な話だ」

 この状況下で隠れ見されたところで手間が増えるばかりであった。

【全裸の呼び声 -27-:終わり|-28-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

前作1話はこちらからどうぞ!

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