閃光のハサウェイを、観た
絶対アニメにならないだろって思ってたのが来てしまった。
逆シャアとユニコーンの後、というソワソワする時代
閃光のハサウェイの舞台は宇宙世紀105年で、有名すぎる逆襲のシャアとユニコーンガンダムの戦役の後にあたる。かなり大騒ぎをしたわずか12年程度でまた争い始めているのでなんとも進歩がないといったらアレだが、まあそう。バンダイの呪縛。
大まかなストーリーだけは大昔にゲームで履修していたので、映画館で観ておこうと思いつつめちゃくちゃ腰が重かった。基本的に明るいところがない話だと知っていたので。
とはいえ、見れる時に観ておかないとまあ公開するやろうな……と思って関東最後の回に滑り込んで履修してきたのだった。
ガンダムの宇宙世紀で、有名所は知ってるって人なら多分おわかりいただけると思うんだが、過去の作品の後の時系列でもって非常に後味の悪いお話をやるので、単体の作品である以上にそれまでの作品の文脈が折り重なってしまってひっじょーに情緒がメチャクチャになる。本作はガンダムをよく知らない人にも受けたって話なんだが、正直そこらへんが実感わかない。単体で観て楽しい作品かな?っていまでも首を捻っている。
壊れた人間の手遅れ感を念入りにお出ししてくる。
主人公のハサウェイ・ノアはアムロ・レイとシャア・アズナブルの最後の戦いとなった時に、無断出撃した結果初恋の相手の死を間際で見ることになった。逆襲のシャアでは目の前で撃破されたんだが、閃光のハサウェイでは誤って自分の機体で撃墜したことに変更されているようだ。鬼か。
そのへんの細かい人間事情は公的には伏せられているため、一般人には初出撃で一機撃墜!スゴい!エラい!って持ち上げられてハサウェイもそのたびに視線を宙に漂わせながら若気の至りっすよとかいって誤魔化していてまあ地獄味がすごい。
結果として、地球からの人類追い出しを主張するテロリスト、マフティー・ナビーユ・エリンを名乗り行動を起こすんだが……まるで、過去と未来のベクトルに心を引き裂かれて、現代のいまそこに心あらずみたいな印象を受ける。
これは実際作中でも念入りに描写されていて、閃光のハサウェイの作品のコアの部分になっている。まあタイトルどおりなんだから当然といえば当然。
第一部は主要な人物であるギギ・アンダルシアとケネス・スレッグ大佐との交流が前半部分で描かれるんだが、この二人の方は自身のオリジンに彼らなりの気負いを持ちつつも、実際には相当に恵まれた側の人間であることが示唆されている。その一つが、キルケー部隊の命名の話。
キルケーとはギリシャ神話における魔女、ないし女神で、昨今ではキュケオーンの人で有名。創作時系列としては閃光のハサウェイの方が古いので、まったくもって不幸な概念衝突事故だ。
キルケーは英雄オデュッセウスの物語における障害、みたいな位置づけで、ともするとするっと名前が忘れられがちなポジションだろう。ライバルガンダムの機体名称がペーネロペー、そして素体がオデュッセウスガンダムという名称から、関連する名前としてケネスはキルケーを選んだように思われる。
たまたま現代の日本では有名になってしまったものの、キルケーは存在自体はちょっとマイナーめの伝承だと思う。ところが、言い出したケネスだけでなくハサウェイもギギも何の話かすっと思い出して話題についていっている。これは宇宙世紀の時代ではおそらく充実した文化環境に身を置けた時期があることが読み取れる。つまり、生きることに必要な知識だけでなく、教養としての文化を得る機会が多くあった、ということだ。
三者そろって、非常に恵まれた成長環境に置かれていたことが示唆されつつ、ハサウェイだけがテロリストとしての道を選択していて、ほかの二人は社会に銃を向けるような生き方は選んでいない。このことはいかに過去の過ちが彼の心中をどうしようもないほどに毀損しているかを浮き彫りにさせている……と読み取ったのだった。
まだ一部がおわったところであり、二部が控えているのでそっちも観た上で作品を咀嚼したいものである。
戦場へ
というか、ブライトさんとの付き合いがはちゃめちゃに長いせいで(スパロボだと毎回お世話になる)、まるで付き合いの深い上司の息子がテロリストになってましたみたいな感じでとっても複雑なお気持ちになってしまうのであった。
今回はここまで、またな。
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