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全裸の呼び声 -3- #ppslgr

 それぞれ二撃を持って洗脳露出者は完全に沈黙。
よって路地裏は光と闇の使徒だけの舞台へと変じた。表通りを行き交っているはずの住民は、いかなる無関心によるものか覗き込むものもいない。

 両者の向き合いは銀河衝突めいた緊張感を生み出し、畳縦三畳ほどの間合いはまるで空気が凝固し質量を加重したかのごとき抑圧を生む。そして、全裸入道が動いた。

「裸ーッ!」

 独特の猿叫と共に繰り出された一撃は、ぬめつく路面を砕き撃ち抜くも、そこに光の戦士の姿はない。彼は突風に流される吹き流しのように致命の一撃を避け、全裸入道の懐へと潜り込んでいた。

 これは、全裸回避!

「裸ーッ!」
「露ーッ!?」

 全裸入道が拳を引き戻すよりも早く、伸び上がるように全裸戦士が繰り出した一撃は……現代で言うところのアッパーカット!しかして、その一撃は破城臼砲めいた破壊力でもって輝くをともない全裸入道のみぞおちを撃ち抜く!たかだかと宙を舞う全裸入道!

 だが、全裸入道もさる者。恐るべき拳撃を受けてなお、猿めいて空中回転受け身を取る。それを壁蹴り三角跳弾にて上をとる全裸戦士、疾い!

「裸ーッ!」
「露ーッ!?」

 繰り出されたのは……ハカマダを救ったあの彗星の一撃!おお見よ!完全無欠なる空中運動から繰り出されたその一撃の正体は、蹴撃である!直撃の瞬間、腕交差によって防御するも、濡れた地へ叩きつけられる全裸入道!

「ぬぅーっ……よもやこの地でこれほどとは……ヌシが光の露出者であること、惜しく思うぞ」

 素早く身を起こし、着地した全裸戦士に向かって左手を猫手にて正面に突き出し、右腕を引いて腰を落とした奇妙な構えを取る全裸入道。だが、その視線が不意に全裸戦士から、彼の後方にあるなにか別の存在へと移った。

「どうした、臆したか!」
「……残念だが、ヌシよりも優先すべきモノが見つかってしまったようだ」
「ムッ!?」

 警戒を解かずすり足で間合いをつめる戦士を、全裸入道は奇妙な跳躍でもって置き去りにし、不意に姿を消した。彼の朗々たる声だけが後に残る。

「我らの企み、止めたくば我らを追い求めるが良い……ヌシ一人で出来るものならな……」

 しばし、残心した全裸戦士であったが、追撃がないことを確認するとその構えをときハカマダへと歩み寄った。彼の目はうつろであった。

「ああ……深きそこ……露出されし……おおいなるモノが……アアーッ!」
「すまぬ……ワシが遅かったばかりに、このような……本当にすまぬ」

 戦士は届かぬ詫びを入れると、ハカマダを肩がけにし、残りの二人をそれぞれ片腕で抱え込んだ。なんと三人を一人で抱き上げてなお、その歩みはこゆるぎもしない。そのまま、彼はたかだかと雨を切り裂き跳躍した。稲光が彼の姿を幾度となく照らす。

「世界に危機が迫っておる、闇の露出による脅威が……急がねばならぬ」

 彼の姿は、汚濁の雨の向こうへと消えていった。雨天の闇に交じる光点を気にするものなど、今のこの街には誰一人としていなかったのだ。

【全裸の呼び声 -3-:終わり|-4-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

前作1話はこちらからどうぞ!

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