見出し画像

全裸の呼び声 -2- #ppslgr

 瞬間、彗星のごとききらめきが、大男がかかげし腕を射抜いた。すると、あれほどびくともしなかった拘束からハカマダの身が解き放たれ、汚濁の路面へと転がる。ハカマダはピクリとも動かない。

 急襲をかけた光は、対面の壁に反射したかと思えばくるくると宙返りの後に拳を大地にたたきつけてしなやかに着地してみせる。

全裸だ。中年男性の。

 乱入者の全身はこの暗雲低迷の街にあって春の日めいてほのかに光り、その局部は夏の太陽のごとく煌めいていた。輝ける全裸中年男性は精妙なる闘志をともなったまなこで大男をにらみつけ、公的に知られる格闘術とは全く異となる構えを取る。

「やはり露出会……おヌシらが暗躍しておったか!」

 一方、大男は蹴りぬかれた腕を自らへ曲げ、手のひらを凝視したのちに握り込んだ。その目は煌めく全裸中年男性を見てはいない。だが、くぐもった声で大男は光れる全裸の詰問に応じた。

「その姿……輝ける全裸戦士、光の露出者、か。逆に問おう。ヌシほどの露出を極めた真なる露出者が、なにゆえ惰弱なる非全裸の肩を持つのだ?生命とはもとより裸体で生まれ、全裸にて生きるモノ……それが自然の理なのだ。それなのに、哀れなりし非全裸の着衣者共は着衣によって自然のことわりから離れ、露出から背を向けるばかりか全裸を悪徳の振る舞いと断罪し、ひかりさす場から追放さえした。なんたる傲慢!なんたる暴虐!答えよ光の露出者、これほどの仕打ちを受けてなお、ヌシは非脱衣者の味方をするというか?」

 全裸の大男、いわば全裸入道ともいうべき人類と異形の境界線に存在するモノの糾弾を、輝ける全裸は一笑にふした。

「笑止……!極限の露出とは自身の葛藤を自らの意思でのりこえ、己の覚悟でもって決断した先にある人類の極地なり!対しておヌシら闇の露出者の行いたるは、一方的に意思の尊重なく露出を強要す、いわば自由の蹂躙!ましてや自然において全裸露出生命は多数派に過ぎず、それを絶対と遵奉するおヌシらこそが傲慢というものよ!」

 全裸入道は光の露出者の反論を眉一つ動かさずに最後まで受け止める。両者の間に、止むことのない汚れた雨が降り注いだ。

「よかろう、同じ露出の道を征く者同士ではあるが、やはり我ら露出会は光の露出とは相容れぬと理解した」

 全裸入道が、握り込んだ手を広げ、かかげる。

「やれ」

 瞬間、サギシタとタナボタの姿が消えた。次に現れたのは輝ける全裸の左右!二人は猛禽めいた構えで輝ける全裸者へ掴みかかる!

「裸ーッ!」
『露ーッ!?』

だがしかして、壁に叩きつけられたのは露出洗脳を受けた二人の方だった。カビた石壁に走る亀裂が、彼らが受けた恐るべき一撃の威力を物語る。

「むう……」
「一の型、拒絶の拳」

 輝ける全裸戦士の拳からわずかに湯気があがった。常人であれば一撃の元、昏倒も確実な一撃を受けてなおも露出洗脳者はよたつき立ち上がる。彼らの腕が霞む!

「裸ーッ!」
『露ーッ!?』

 それでも、大地に倒れたのはやはり二人であった。恐ろしいほどの拳。
 露出動体視力を持たぬ者には到底とらえきれぬ速さで全裸戦士はまず右側のサギシタの拳をなめらかにすり抜け肘を食らわし、ほぼ同時に反対側のタナボタへと蹴り足を繰り出して撃退したのである。

【全裸の呼び声 -2-:終わり|-3-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

前作1話はこちらからどうぞ!

現在は以下の作品を連載中!

弊アカウントゥーの投稿は毎日夜21時更新!
ロボットが出てきて戦うとか提供しているぞ!

#小説 #毎日Note #毎日投稿 #毎日更新 #パルプ小説


ここから先は

0字

パルプスリンガー、遊行剣禅のパルプ小説個人誌です。 ほぼ一日一回、1200字程度の小説かコラムが届きます。 気分に寄っておやすみするので、…

ドネートは基本おれのせいかつに使われる。 生計以上のドネートはほかのパルプ・スリンガーにドネートされたり恵まれぬ人々に寄付したりする、つもりだ。 amazonのドネートまどぐちはこちらから。 https://bit.ly/2ULpdyL