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冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第ニ十四話 #DDDVM

「ほらあれ、見えないかしら」
「み、見えません」
「溝……かね?」


シャンティカ君が指差す方向は天井。そこにはネズミの掘った水路の様な溝が見受けられる。私はワトリア君の眼鏡にひと工夫かけて彼女にも溝が視認できるようにしてみた。

「あっ、見えます見えました。確かに天井にちっちゃな溝が……」
「まずね、あの玉……多分心臓なんだろうけど、あれって真正面から酸をかけられた溶け方じゃないのよね」
「というと……?」
「真上から、中心部を狙って正確に注がれないとああいう溶け方にはならないと思うの」
「つまり君は、犯人が桶の様な入れ物ではなく、管でもってここまで液を通したと」
「そういうことね」
「ふむ……」

天井に刻まれた溝だが、確かにこの迷宮の壁材には溝どころかわずかなへこみさえ見当たらない。恐ろしく精緻で平らな造形には、どれほどの職人がたずさわったのか私にも想像が難しいほどだ。

そして件の溝だが、確かになにかに溶かされた様な形状も見受けられる。これが迷宮における建設意図に沿った造形ではない可能性は高いだろう。

「でも、私達が肩車しても届かないくらい高い天井に、管……何故でしょう」
「理由付はまあ、後でも出来るさ。大切なのは運搬方法の目処がたったかもしれない、というところだとも。シャンティカ君、この溝だが入り口の方にも?」
「ええ、この部屋の中から外までは続いてたわ。でも通路の途中からは途切れてて」
「それはおそらくは、先程の構造改変の影響だろうね。でもエントランスには痕があるんじゃ無いかな」
「なら、戻るときは確認する」

これで一歩前進、といった所か。
少なくとも空間転移といった未だ基礎理論の研究レベルに留まっている魔術が運用されてないのは幸いな所だが(もちろん、異世界間の跳躍転送は文字通り神の御技である)また一つ解かなければならない謎がある。

「次は何を持って万物を溶かす雨粒を運んだかだが……」
「それ、証拠として残りそう?」
「物品その物は残念ながら、見ての通り回収されたか放棄された後で消滅したか……そのどちらかだと思う」
「流石に犯人もそこまで間抜けじゃないか。じゃあ天井の跡は……」
「不可抗力でついてしまった物だろう、迷宮公ご自身が気付かなかったのは」
「それは、この迷宮の壁面には神経が通っていない、いわゆる不随意な部分ではないかと」
「なるほど、私の鱗の表面が削れても、そこには神経が通っていないから痛くない様に、この壁面にも公の神経は通っていなかったんだ」
「さっすが医学生!ヨシヨシしてあげる!」

多分、ワトリア君の髪をワシワシ撫でているシャンティカ君はさておき、もう一つ手がかりになり得る物はまだ残っている。それは、公の中に未だ遺されている遺物の在庫状況……である。

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