走れ、穿て、守れ -2-

「状況は？」
「道中説明する、乗って！」

　5分後、”Note”内屋内駐車場で合流した俺達は即座にS・Rの所有する色鮮やかなグリーンの、カエルめいたフロントを持つ自動車に乗り込んだ。

「ちょっと、その長物邪魔くさくない？」
「使い道無かったらトランクにしまわせてくれ」

　S・Rに指摘された長大なアンチマテリアルライフルを座席になんとか持ち込む。未だに事情の説明はないがこの剣幕だとそれなりに大ごとだ、普段使いの拳銃とは別に火力の高い銃が必要だと踏んだが、アテが外れるといいのだが。

　こっちがシートベルト締めるより早くアクセルが踏まれ、S・Rの愛車が駐車場を走り高速射出カタパルトへと車体を装填した。

「よーし、いい子だフロッギー。射出シークエンス及びに着地地点はいつも通りだ、いけるね？」

　運転席のコンソールに肯定を示すサインが躍る。この車の搭載AIの愛称が「フロッギー」というらしい。と、すぐにベクトル操作による加速射出の負荷が俺の身体にかかる。本当に急ぎの案件の様だ。

　筒状の射出カタパルト内のオレンジに輝く電灯が高速で流れていったと思えば、すぐに外へと撃ち出される。大砲の弾めいて東京湾内の人工島から本土の着地用に用意されたポートスペースへと吹っ飛んでいく。

「姐さん、着地より先に上部ルーフ解放よろしく」
「あいよ！」

　快適な大砲移動を楽しんでいるばかりもいられない。俺の眼はポートスペースに似つかわしくないいかつい車の集団が居座っているのを既に視認している。待ち伏せの可能性が大だ。

　上部天井のルーフが解放されると同時にアンチマテリアルライフルごと乗り出すとまずは如何にもいかがわしい感じの黒塗りの高級車、その前輪に照準を合わせ引き金を引く。散る火花、脱落するタイヤ。

　それと前後しアスファルトのポートスペースへと車体が着地、すぐさま車輪を高速回転させ、その場から走り出して高速道路へと向かう俺達にいかつい車団はすぐに追撃してきた。

「完全に待ち伏せされてるが、姐さんなにやったん？」
「恨みなんて思いあたりがありすぎでどれがどれとか覚えてないねぇ！」
「そりゃまた豪儀なこって」

　嘆息しながらも追走してくる連中に第二射をくれてやる。大口径に見合った射撃音をエンジンの音が上書きしていき、ボンネットに大穴を開けたじゃあくな黒塗りベンツが操作不能に陥ってスピンアウト、アウトバーン脇に激突、炎上。

「R・V！運転はイケる！？」
「すまん！ペーパーだ！」
「アンタあんだけSA乗りまわしてるのに車はダメなのかい！？」
「人型兵器と四輪駆動車は別物だって！」

　S・Rの文句に言い返しながらルーフに潜り込み追手からの銃撃をかわす。彼女もまた運転席側から身を乗り出して後方へと銃撃掃射、正確な銃撃に追走する一大のフロントガラスが血に染まって減速、後続を巻き込んで大破した。

「アンタのそのデカ物が役に立つなんてね！」
「最近物騒だからな！備えあれば憂いなしだ！」

　一般車両がビビって車線をあけていく中、カーチェイスは続く。

【走れ、穿て、守れ -2-：終わり：-3-へ続く】

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