見出し画像

全裸の呼び声 -29- #ppslgr

(世界を元に戻した後、死人も生き返ると思うか?)
(思わないね、一都市程度ならなんらかの形で死んだと帳尻合わされるかも)

 読者の皆様がたにはわかりやすい説明が必要と思われるので、あえて注釈しよう。今のドブヶ丘は個人意思を無視して設営されたテーマパークとするならば、こうしてドブナイズドされた人物達は強制的にきぐるみを着せられ、テーマパークを盛り上げさせられている演者にあたる。

 ここできぐるみ演者を殺した場合はどうなるか。ふたりとも確証こそなかったが、世界が元に戻っても何らかの形で『死』だけが保存され、きぐるみの中の人達は死んだまま世界だけが元に戻ることになると勘案していた。

「面倒な……」

 愚痴が口をついて出るが、さりとて一般市民を本人の全く責のないところで死なせて知らんぷりするほど、黒ずくめも人でなしではなかった。

「私達は多少の得物が得られればいいので、ちょっとここは引いていただけないかな?」
「んだとこらぁ!」
「テメェら、どう見てもカタギじゃねえだろうが!」
「ヨソモンがオレらを無視してヤッパ買いたあいい度胸だオイ!」

 ヤクザと言ってもピンきりで、こうも喧嘩っ早いわけではない。が、こういうものと人格のテクスチャが張り替えられている以上、彼らも被害者だった。しかして、丸く収まる気配もない。

「ここの鍛冶師は何処だ」
「オマエ、オレらの話聞いてたかぁ?」

 白背広をパツパツに着込んだ角刈りの古めかしいヤクザが、一歩進みでてレイヴンへガンつける。普段であれば鉛玉の一発も空撃ちすれば萎縮するだろうが、あいにくと手ぶらだった。

「聞いていたとも。察するに貴様らはほんの一本もまだ売ってもらって折らず、そこによそ者である俺達が買付にきた。ここでこちらが刃物を買えたら先を越された貴様らの名折れになる。違うか?」
「ぐ……」

 先頭の角刈りヤクザがだまり、取り巻きが一斉に拳銃を引き抜く。一触即発の事態。すべての銃口がレイヴンに向けられていた。満開の銃の花だ。

「オレたちにも面子ってのがある……行きずりのドブネズミにも、その程度わからんのかい」
「通りすがりにそしられて欠けるとは随分と脆い面子だ。安物のガラスか?」
「コノヤッぶへぇ!?」

 この場すべてのヤクザの注目が黒い方に集まった瞬間、なんの脈絡もなく角刈りヤクザがもんどりうって倒れる。アノートの右腕には、手加減はしたと思しきトゲナシメイスが握られていた。

「あっ、アニキィ!?」

 いきなり状況が変わったことで動揺し、ボーリングのピンめいて立ち並んだヤクザの隙間を黒い風が吹き抜ける。ついで、疫病に吹かれたかのようにバタバタと倒れるヤクザ達。誰も彼も、一撃のもと急所を突かれ悶絶する。

「慰謝料だ、もらうぞ」

 手近なヤクザを蹴り転がし、銃を奪い取る黒ずくめ。拾った側からコートの内ホルスターに突っ込み、持て余したぶんはアノートにも投げて渡す。

「もっといてくれ」
「はいはい」

 苦笑しつつ、銃を受け取る教授。

【全裸の呼び声 -29-:終わり|-30-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

前作1話はこちらからどうぞ!

現在は以下の作品を連載中!

弊アカウントゥーの投稿は毎日夜21時更新!
ロボットが出てきて戦うとか提供しているぞ!

#小説 #毎日Note #毎日投稿 #毎日更新 #パルプ小説 #パルプスリンガーズ

ここから先は

0字

パルプスリンガー、遊行剣禅のパルプ小説個人誌です。 ほぼ一日一回、1200字程度の小説かコラムが届きます。 気分に寄っておやすみするので、…

ドネートは基本おれのせいかつに使われる。 生計以上のドネートはほかのパルプ・スリンガーにドネートされたり恵まれぬ人々に寄付したりする、つもりだ。 amazonのドネートまどぐちはこちらから。 https://bit.ly/2ULpdyL