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全裸の呼び声 -24- #ppslgr

「予想はしてた!してたがネズミからしてアレか!」
「ますます典型的な異界化異常現象だねぇ」
「ギェギェギェギェーッ!」

 暴れ牛の大群を彷彿とさせる怪異ネズミ集団は、変異ヒモノやらタコの切り身など、血抜きされていない鳥の死体などを踏みつけ、その針金のような手足で掴み取って貪り食らう。露天に残された商品は生物干物パルプ雑誌にジャンク類まで見境なしだ。そして、食あたりか何かでひっくり返って動かなくなった個体をも共食いする様は、それはもうひどい有様であった。

「おいそこのわけぇの!いい若いモンがネズミ程度にアタフタとみっともねぇな!一匹ぐらい退治してみせろや!」

 混沌参拝道を駆け上がる二人の頭上から、一喝が降って湧いた。ひどいだみ声の。流し見ると、二階のベランダ柵に腰掛けた老人からだ。

「言ってくれる!」

 しかし、実際このまま逃げ続けてもネズミ群は諦めてくれそうにもない。レイヴンはアノートに目配せした後、かろうじて屋台に転がっていたダマスカス模様の牛刀を掴み取って両の逆手に構えた。

「逃げても無駄そうだ、ここでやる」
「良い判断だ」

 すぐさま、立ち止まった黒ずくめに、距離を詰めた奇怪ネズミが飛びかかる。その骨ばった手足は哺乳類よりも鳥類か、昆虫のたぐいに近い。レイヴンは中腰になって、牛刀を掲げた。思いの外、すっと滑り込んだ刃が、ネズミの喉口から胸、腹、股間まで一息に薙いだ。後方で臓物を撒き散らして、ネズミが転倒する。それを見た他のネズミどもが、一斉に死骸へと群がった。だが、目もくれず目の前の二人に襲いかかる連中の方がなお多い。

「疾ッ!」

 異常な見た目だが、生物である以上は血があり肉があり、臓腑があり、骨がある。闇雲に切れば死なないし、的確に斬れば即座に死ぬ。左から食いつこうとした頭部の横合いから牛刀を突きこむと、狂人めいた眼を割って刃先が脳に潜り込み、反対側の眼を砕いて飛び出した。一息もつかず、ビクリと脈打って肉に変わる。次に右側で立ち上がり上から喰い裂こうと試みたネズミを、アッパーカット迎撃。閃いた刃が胸、首、喉、顎を寸断しそのまま頭を刎ね割る。

 精妙的確に黒ずくめが奇怪ネズミを処理する一方、アノート教授の立ち回りはより一層凶悪だった。彼の右手が閃いた瞬間、奇怪ネズミの頭部がクラッカーめいて弾ける。手にした棒の先には、雲丹めいた球体。聖水散布機とも卑称された武器、モーニングスターである。

 そして、同胞の死を踏み越え迫りくるネズミ群を、彼の左手から伸びる何かが無造作に両断。盛大にドブがかった血が飛び散ってはドブヶ丘商店街の通りを染めた。繰り出されたのは、大型の回転旋盤である。

 さらには教授が両手の武器をひとまとめにすると、恐るべき殺戮回転ノコギリ斧と変わる。その殺戮兵器が無造作に振るわれるたびに、奇怪ネズミは物言わぬ肉塊へと変じていった。

【全裸の呼び声 -24-:終わり|-25-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

前作1話はこちらからどうぞ!

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