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全裸の呼び声 -31- #ppslgr

 銘のない刀は、二人が説明を受けている間もドブヶ丘でもっとも低く、汚れた場所にあった。何もかも腐食してしまうこの汚染された大地において、なんら形を崩すことなく姿を保っている様は異様ですらある。

「不満かえ?」
「そもそも人間が振れる物体か、アレは」
「さーあ?殺しの威力だけなら保証はするよ。なんせアレのおかげで、ここいらには害獣も出ないくらいだ」

 その言葉を聞いたレイヴンは、強めに眉をしかめる。

「本末転倒だな。刀が無いなら牛刀かナタか、そっちのほうがマシだ」
「フン、親切のしがいもない」
「人間が持てもしない代物は道具とは言わない」
「センセイッ!」

 話し込んでいた間に意識を取り戻したのか、ヤクザ連中が掘っ建て小屋から溢れ出てくる。当然、すでに銃は巻き上げられているのでさしたる脅威でもない。

「センセイ、本当にそいつらにヤッパを売るっていうんですかい!?」
「いらないってさ。良かったねぇアンタら」
「ええっ、じゃあオレらなんのためにぐぇえ!?」

 会話の途中で、ヤクザ二人が蹴り払われる。やったのはレイヴンだ。そして蹴り込みの勢いのままにサイドステップ。直後、それまで一同がいたポイントに筋骨隆々なる全裸が降り来たり、自身の大質量で産業廃棄物の湿地をへこませる。

「見つけたぞぉ政府の犬共!」

 異常巨躯、特徴的ヒゲ、そして全裸。カニオストロ。異常全裸脅威を見たヤクザ連中が戦慄する!

『露出会!幹部!?なんでどうしてここに!?』
「散れっ!邪魔だ!」

 レイヴンの一喝に、ヤクザ集団は右往左往しながら逃げ去っていく。一方で両腕を広げ殺人ナタを構えるアノート。

「こんなところに遊びにきていいのかい?幹部クラスが」
「グワッハッハッハ!なんのことやら、ワガハイは先の屈辱を晴らしに来ただけのこと!聞けばそこの黒いの、貴様このドブヶ丘ではあの傍若無人な技を使えんようだな!?」
「それはどうかな。まあ、事実だが」
「フハーッハッ!やはり使えんのではないか!好機!このドブヶ丘最終処分場が、貴様らの墓場となるのだ!見よ!ワガハイの極限大露出!ヌヌヌヌヌヌーン!裸ーッ!」

 これ以上どこを脱ぐんだ、などという突っ込みが入るよりも早く、カニオストロの上半身は内側から弾け飛んだ。いな、内側に押し込められたなにかが、まるで筋肉がせり出し服が弾けるように、外側の人体が弾け飛んだのだ。封を解かれた中身はもとより三まわりほども体積をまし、表面は青白の甲殻が姿を見せ、その両腕には解体建築機めいた大鋏が生じた。

 率直に言って、カニである。正確には人間の下半身にカニが上半身としてくっついている、といった表現が似つかわしい。

「なるほど、だから浅瀬ねぇ」
「シューハッハッハッハ!これぞワガハイの内なるケモノを解き放った極限露出体!この姿を見せたからには貴様らの命運もつきたも同然!」
「何を根拠に断言してるんだか……」

 【全裸の呼び声 -31-:終わり|-32-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

前作1話はこちらからどうぞ!

現在は以下の作品を連載中!

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パルプスリンガー、遊行剣禅のパルプ小説個人誌です。 ほぼ一日一回、1200字程度の小説かコラムが届きます。 気分に寄っておやすみするので、…

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