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全裸の呼び声 -22- #ppslgr

 股間のブツをもぎ取られるなどという衝撃的な扱いを受けて、オク・ダークは白目を剥いて卒倒していた。良くも悪くも、まだ死んではいない。欠損部位から流出しているものが、血ではなく正体の怪しいどす黒い液体なのが気がかりだったが、さりとて手がかりのチャンスを不意にするわけにもいかない。

 レイヴンは景気のいい音とともに平手打ちを見舞うと、オク・ダークを失意のどん底から引きずりだした。

「アバッ、小生の、小生の、大事な大事なタコが……」
「おい」
「ヒッ、貴様ら小生からまだ他に奪おうというのか!?」
「聞きたいのはひとつ。ドブヶ丘における、君たちの活動理由だ」

  アノート教授が構えた、古式決闘銃の暗い銃口がオク・ダークの視線とかち合う。一発しか装填できない代わりに口径を引き上げたそれは狩猟銃の威力を上回る凶悪なブツだ。オク・ダークは喉を鳴らした。

 思わず後ずさったオク・ダークの背は、すぐ後ろに立っていたレイヴンの足に触れた。白と黒の死神が彼を見下ろしていたのだった。そして騒乱の顛末を戻ってきた住人達がかたずをのんで見守っている。

「ヌフッフハッ!腐っても幹部である小生がそんな安易に吐くとおも、ヒーッ!?」

 オク・ダークのすぐわきに、銃痕が生える。教授は手品めいて決闘銃を消すと、今度は反対側の手に同じ物を振り出して見せた。

「この銃は特別製で、水銀が詰まった弾が込められているんだ。まあ、君たち闇の露出者にも……結構痛い思いをさせられるはずでね」
「暴力反対!」
「今更言うな今更」
「露ーッ!?」

 レイヴンが無感情に背中を蹴り上げると、そのまま自身の背を曲げて狼狽するオク・ダークの顔を覗き込んだ。猫の上のノミを見るような眼に、オク・ダークは心底、戦慄した。

「もうめんどくさいから、お前達が何を探しているのかあててやろう。ズバリ、この魔境の元凶それそのもの、そうだな?」
「なっ、バッ、何故それを!?」
「何故もカカシも、お前が教えてくれたんだよ」
「ム、ムゥウーッ!?読心術とでもいうのか!卑怯だぞ!」

 その時、オク・ダークの身体がずるり、と半ば地面に沈み込んだ。二人はとっさに反応するが、予想外の挙動に対応が一瞬だけ遅れる。その隙に、オク・ダークは首まで地の下に滑り込んでいく。自分から漏出した墨めいた液体の中へ。

「お、覚えておれ無礼千万なる非脱衣者ども!もぎ取られた我がタコちゃんの仇はっ、必ず、必ず取ってやるからな!」

 その言葉を最後に、オク・ダークの姿は二人の視界から消えてしまう。教授が引き金を引いたが、吐き出された弾丸は硬い地面に深く食い込んだのち、弾痕を残すにとどまった。

「シクッた、たかが股間にタコかと思いきや、奇妙な真似しやがって」
「でもまあ、私達のやることもはっきりしたね」
「ああ、何はなくとも、このドブヶ丘の元凶を奴らより先に見つけ出して説教だ。とはいうものの、気が乗らんことだ」

 レイヴンが顔を上げた先には、かつて枡形山と呼ばれた丘陵地のうねりだった、今は細長く切り出された御影石めいた何かが並び立つ異形の魔都であった。

「こっからが本番なんだろうなぁ……」

【全裸の呼び声 -22-:終わり|-23-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

前作1話はこちらからどうぞ!

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