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冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第五十話 #DDDVM

謁見室を、再び重苦しい間が支配した。
女王陛下は固く口を真横一文字に結び、近衛騎士といえば厳しい眼差しを一行に向け、この場において大臣ただ一人がにやついた底意地の悪い笑みをたたえている。それでもその表情が下卑た印象を与えないのは、眉目秀麗な面立ちあってのことだろう。

永遠にも思える沈黙の後、意を決した少年は自身と同世代である陛下へ毅然と告げた。

「陛下、ごめんなさい!」

叫びと共に、サーン少年は深々と己の頭を床につけんばかりに下げる。

「オレっ、先生助けることしか頭になくって!色々考えたけど陛下に言えることなんてなんもなくて、どんな罰も受けます、悪いのは俺だけなんです!」
「軽率にどんな罰も受ける、などと言うものではありません」

ピシャリとぶつけられた返答に、少年はびくりと身をすくませた。
アルトワイス王国女王陛下は、玉座より立ち上がられて咎人たる少年の眼前まで、歩みを進める。近衛騎士もまた、甲冑の音鳴りを伴って側に続く。

「サーン、おもてをあげ、そして私を見てください」
「……はっ」

ワトリア君の位置からは、二人のうち女王陛下の様子しか見えない。彼女の青空よりも青い瞳はまっすぐに少年の瞳へと合わされていることが見て取れる。

「奪うことで大切な方を救える、そんな選択肢が提示された時。その未来を拒否出来る者がどれほどいることでしょう。私とてあなたと同じ一個人の立場であれば、同じ道を歩まない保証はありません。此度は、運命の悪戯によってあなたが奪う側であり、私が奪われる側だったのです」
「陛下、もしかして迷宮公は陛下の」
「幼くして即位した私の、後見人の一人であり……そうですね、祖父代わりの様な存在でした」

陛下の言葉を受けた狼狽えようは、まさに雷に打たれたかのようだった。おそらくは、彼の中では迷宮公なる存在は王国に仕える便利な魔神、くらいの扱いだったのかもしれない。だが、そうではなかったのだ。

「陛下……ッ、俺、おれっ……!」
「あなたが泣き出してどうするのです、もう」

背を震わせて慟哭するサーン少年を前に、女王陛下もまた不器用な微笑みを浮かべて答えた。

「もちろん、私があなたを赦免するのは寛容であるがゆえでもなければ、対面を気にしてでもありません。確たる理由が無ければ、あなたの扱いは極めて悪いものになっていたでしょう。そのことをお忘れなく」
「ひゃい……」
「今告げた通り、サーン。あなたを赦免します。ですが、完全に無罪放免というわけにもいきません。わかりますね?」
「それは、まあ……なんなりと、陛下」
「ですから、そう安請け合いするものではありません」
「ハッ」

改めてかしこまるサーン少年に対し、まるで幼馴染が苦言するような雰囲気で釘を刺す女王陛下。

「ですが、そうですね。まず先に赦免する理由からお答えしましょうか。それは一重に……公の願いであるがゆえです」

ワトリア君が、パッと脇に控えていたレオート二世殿に視線を向け直した。

【冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第五十話:終わり|第五十 一話へと続く|第一話リンクマガジンリンク

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