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誰も悪くないこれは悲劇や
2019年10月22日 00:02
スーパー銭湯〈松の湯〉。ここでは全てが手に入り、代わりに全てが奪われる。快楽と健康と引き換えに〈客〉が支払わされる代価はなんだ? 答えは金と時間。すなわち、社会と世界との接続点。気が付いたときはもう遅い。思考力は既に湯の中に溶け、右腕に巻いたタグが自分たちを縛る鎖であると自覚することもできなくなっている。「134日目……」 館内の電灯が灯り〈朝〉が始まった。目覚めてまずその数を叩きこむ。
2019年10月7日 01:49
霊安室の青白い電灯に照らされて遺体はまだらに腐っていた。義体の材質は製造元によって異なり、死後、その差異は顕著になる。たとえば死斑の進行の早い右上腕は皮膚の保色性に劣るリ業製、毛の脱落の激しい左脛は樹脂毛髪を使用しているしゞま製というように。大きな額の黒子は黄通電機の広報刺青か。だが視界にうっとおしいポップアップはなく、正式に契約を結んだものでないことは明らかだった。「義体のちゃんぽんは損す