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5冊読了(7/24〜8/3)

1『おうちの科学』内田麻理香

2『サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3』村上春樹

3『僕たちは戦後史を知らない』佐藤健志

4『図解 眠れなくなるほど面白い 物理の話』長澤光晴

5『蜘蛛の糸・杜子春』芥川龍之介


読書を始めたのは高校生の頃で、理由は友達が少なくて休み時間を持て余していたからです。
最初は僕もたくさん友達を作って楽しい高校生活を送ろうとなどと画策していたのですが、どうもこの学校には面白い人間が一人も存在しないようであると(もちろんそんなはずはないのですが)、入学して最初の2ヶ月ぐらいで見切りをつけて(もちろん2ヶ月で全員の人柄を知ったわけではないのですが)、クラスメイトとは必要以上に友好を深めるのを拒否して(もちろん上手く馴染めなかっただけですが)、休み時間は一人で黙々とミステリー小説を読んで過ごすようになったのでした。

クラスに一人はいるこういう根暗なタイプのやつが、何かの拍子に天性の才能を発揮してクラス中を沸かせる大活躍をすれば、漫画の主人公のような扱いをされて一目置かれそうですが、僕にはそのタイミングは与えられず(というかそんな才能はなく)、ただただミステリー小説を読むことで殺人事件の犯人が使ったトリックの知識だけが増していったのでした(いや、もちろんもっと色んな学びがありましたが)。

10代から20代が終わるまではひたすら面白い娯楽作品を読み続けましたが、ちょくちょく純文学みたいなものも読んではいました。
でもミステリー小説以上に面白いと思えるものは少なく、面白いと思えても何が面白いのかわからず、なのでそれに特化して読み続けるということはできませんでした。

でも最近になって太宰治や芥川龍之介などのド定番の近代文学を読み始め、ちょっと文学の面白さがわかってきたかもと感じております。
それこそ最後にどんでん返しが起こってびっくり仰天するミステリー小説に引けを取らないような面白さです。

この歳になってやっと小説以外の本を読むようになり、色んな教養に興味を持ち始めたので、その中の一つとして文学というものに触れてみています。
実際の作品を読むと、あらすじや解説を見聞きしただけでは体験できない面白さがあって、自分の感性の幅が広がっているように感じます。

あの頃休み時間に教室の隅で、密室殺人に用いられた物理トリックに驚嘆したり、不可能と思われた犯行を可能にするアリバイトリックに感服したり、終盤のある1行で物語の世界がガラリと変わる叙述トリックに震撼したりした経験は、僕の人生における大事な経験の一つですが、もっと色んなタイプの小説を読んで文学の奥深さを学んでいても良かったかもなぁと今更ながら思います(いや、まあそんなに思ってないけど)。


さて、
1は日常で起こる現象を科学的に解説してくれる本です。
暮らしのサイエンス的な本は結構よく目にしますが、やっぱり身近に感じて面白いですよね。

料理やその他の家事に関する内容が多くて、主婦の方向けの内容になっていました。
へ〜と思う部分が多く、解説も難しい専門用語が少なくて易しい内容だったので、1日1項目ずつ読んでいって楽しめました。


2は村上春樹さんのエッセイです。
僕はハルキストではありません。
小説も読んだことはありますが、正直あまり肌に合わないというか、そんなに面白いと思えたことがないです。

エッセイは初めて読みました。
「村上ラヂオ」って、雑誌「anan」に連載されていたコラムなのですね。
それをまとめたシリーズで、『サラダ好きのライオン』がその第3作目ということみたいです。
連載コラムなのでどこから読んでも良いみたいなので、3作目から読んじゃいました。

村上さんが作家業をしていく中での日々の出来事や感じたことが、小説とは違う、口語体や軽妙な文体で書かれている内容です。
易しく読みやすい文章で、村上さんならではの知識や経験を書いてくれていますが、特にすごく面白いというふうには感じられず、村上作品のこれまでの印象と変わらない結果になりました。
つまらなくはない、というのが村上作品を読んだいつもの感想です。


3は戦後史の本です。
いやー、難しかった。
何が書かれているんだかずっとよくわからないまま読み終えてしまいました。

アマゾンのレビューに、この本の著者が考察している内容を簡潔に紹介してくれている文章があり、それでやっと理解できました。
そういうことが書かれていたのね、と。
もちろんそれは一重に、僕の読解力や歴史に関する知識が少なかったからです。
文章自体はそんなに堅苦しかったり難しい言葉ばかり出てくるわけではないので。

敗戦した日本人の価値観が、それ以降の出来事によってどう変わっていったのか、戦前と矛盾する点が多いのではないか、ということを戦後の時代の流れごとに解説していくような内容です。

理解が難しいと感じたながらも学びにはなったと思うのですが、でも昭和の終わりに生まれた自分にはあの戦争はやはり遠い昔の出来事で、その後のアメリカとの関係性なんかも既に形作られた状況で生きてきたから、頭で表面的に理解して「へー」と思うのが精一杯で、なかなか実感を得るのは難しいですね。

所詮は自分の生まれる遥か前の出来事だから、江戸時代やもっと昔の歴史を学ぶのとほぼ変わらないことになってしまっているのが憂慮されるところで、あれが自国が経験した最新の戦争であることには変わりはないから、表面上だけでもわかっておくことも大事かなとは思っています。

あれが遠い昔のことと捉えられることに喜びを感じながら、そして最新が永久に更新されないことを願いながら、書物によってその時代の知識を得ていくということは、あの時代を生きた人々の恩恵を受けながら暮らしている我々が、せめて行っていくべきことかなと思います。


4も身近な科学の本です。
眠れなくなるほど面白い物理の話。
身近な家電とかスポーツとか乗り物とかの原理を、物理学の視点で解説してくれる本です。

図解が多くて、専門書よりはだいぶ易しく解説してくれているのでしょうが、僕にはこれもかなり難しかったです。
内容を理解するには、一般的な知識レベルよりは少しハードルが上な感じがします。
少なくとも高校で習うレベルの物理を完璧に習得しておくぐらいじゃないと、全部の内容を理解できないんじゃないかなぁと思います。

僕は高校生の頃に本を読みだしましたが、だからといって勉強も真面目にやっていたかというとそんなことはなく、成績は平々凡々だったので、高校で習った物理なんて覚えていなかったので、この本は難しかったです。
物理に詳しい人にはかなり面白いと思うんですけど、そうじゃないと、面白くて眠れなくなるというよりは、理解が困難で眠れなくなる、あるいは意味わかんなすぎて眠くなる物理の話の本でした。


5は芥川龍之介の本です。
初めて読みました、芥川龍之介の作品を。
めちゃくちゃ面白かったです。
びっくりしてしまいました。

文豪の作品を読もうと思い立っても芥川さんはなかなか手を出しにくくて、自分には理解できないんじゃないかとか、好みとして合わないんじゃないかと勝手に決めつけてしまっていました。
それは僕が、近代文学でいうなら武者小路実篤のような、読みやすくてユーモアのある作品が好きだと感じていたからです。

芥川を読もうと思ったのは、前回の日記で書いた、又吉さんのエッセイ本『夜を乗り越える』がきっかけでした。
あの本に芥川の作品の紹介が載っていて、読んでみようと思って古本屋へ行きました。
なんとなくタイトルを見たことのある作品ならなんでもいいやと思って手に取ったのがこの本でした。

薄い文庫本ですが十編のお話が収録された作品集です。
どの話もとても面白くて文章センスも良くて驚きました。
表題作もなかなかでしたが、特に『蜜柑』と『魔術』という作品がかなり面白かったです。
たぶん若い頃には感じなかった感動だと思います。

この作品集を読み終えてから、また『夜を乗り越える』をパラパラめくったのですが、又吉さんが芥川の作品で特に薦めている作品の一つが『蜜柑』でした。
僕はそれを忘れていたので、「おお、そうでしたか」と驚いて、「ですよねー、面白いですよねー」と嬉しくなりました。

ユーモアは多くないというのは初めの印象通りだったのですが、作品によってはそれに特化したものもあるようで、『猿蟹合戦』がそうでした。
おとぎ噺の猿蟹合戦をもとにしたパロディ作品で、馬鹿馬鹿しいことをあえて堅苦しく真面目な文体で描写しているところに、高いユーモアセンスを感じました。
タイトルがそのままなところも凄い。

この本は年少文学として書かれた作品を集めた作品集だそうで、内容的には子供向けとは言わないまでも、芥川作品の中では読みやすいものが集められているのだと思います。
その意味で、初めて芥川作品を一冊読もうと試みた僕にとってはぴったりの本でした。

芥川さんにハマってしまった僕は、既に2冊、同じ新潮社文庫から出ている作品を購入して読んでおりますので、近々また感想を書くと思います。

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