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『人を賢くする道具』のまとめ

各章を一ヶ月ずつ読んできました。

今回は本書全体をぎゅっとまとめてみます。

本書には何が書かれているのか?

さまざまな話題が登場しますが、中心となるのはテクノロジーと人間の知性の関係です。

著者は、人間の認知を体験的なものと内省的なものとに区別し、それぞれに適したテクノロジーの在り方があると説きます。その上で、最近の(つまり著者がこの本を著した時代の)テクノロジーは、体験的なものをエンハンスするのには優れているが、内省的なものについてはそうではない、という懸念を示します。二つの認知は共に働いてこそバランスが取れるのに、片方だけが強まるのは危ないよね、という視点です。

加えて、人間を評価する眼差しが人間中心の視点ではなく、機械中心の視点になっている点も著者は問題視しています。

たとえば、動作を正確無比にくり返し、情報を細部まで記憶していることは人間の脳の特性とは合致しません。それは機械が得意なことです。にもかかわらず、そうした対応ができない人間が「劣っている」かのように評価されてしまっているというわけです。さらに、テクノロジーの制約や制作者の発想の限界によって、「人間が使いやすい」ようにデザインされず、ますます人間がその能力を発揮させづらい状況が生まれていると著者は指摘します。

そうした状況を変えていこう、という期待と願いが込められているのが本書です。

そのような著者の問題意識を引き受けるならば、たとえばSNSや電子書籍とのつき合い方はどうするのか、デジタルノート環境をどう整えていけばいいか、という現代的な課題を立ち上げることもできるでしょう。

本書が書かれた時代と比べて、私たちの認知がより体験寄りになっていることは間違いなく、そのカウンターとして内省的な認知を確保していくことはこれまで以上に重要なテーマと言えるでしょう。

情報をオートマティックに処理するのではなく、むしろ機械からのインフォメイトを利用して、頭をうまく働かせられるようになること。昨今のメディアの状況とは相反するものかもしれませんが、これからも時間をかけて考えていきたいところです。

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