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『人を賢くする道具』「第3章 表現のもつパワー」のまとめ

概要

人間の心(認知)は、高い能力を持つがそれ単体でそうした力を発揮するわけではない。外部にある情報をうまく使うことで能力が発揮される。さらに人間は、自らでそうした能力を発揮させやすい「道具」をデザインすることができる。その点が、人間を人間たらしめている(他の動物と大きな違いを生んでいる)要素だと言える。

暗記力を鍛えなくても、紙とペンが(そして今はコンピュータが)情報の保存を担ってくれる。読み書きの能力ですら、後天的に身につけて、それが残りの生涯で大きな力を発揮する。

そうした能力を向上させるものを「認知のアーティファクト」と著者は呼ぶが、そのアーティファクトの力は「認知」の力に依っている。認知をいかに高め、利用するのか。それこそが認知のアーティファクトの目的だと言える。

そこでポイントとなるのが「表現」だ。表現によって、私たちはさまざまな認知を可能とする。重要な要素だけにフォーカスし、それ以外の要素をそぎ落とす。それが可能であれば、目の前に対象となるものが存在していなくても構わない。ペンと消しゴムで交通事故がどのように起きたのかを説明することができる。私たちは半歩だけ目の前の現実(物理的な制約)から抜け出ることができるようになるわけだ。

適切な表現は、人間の知的能力(情報処理能力)を高める。求められている作業(タスク)に沿った能力が発揮されやすくなる。逆に表現がまずければ、人間の知的能力はうまく発揮されなくなる。表現のいかんによって、タスクの難易度が変化してしまうのだ。

だからこそ、著者はUI(ユーザーインターフェース)に強いこだわりがあるのだろう。まさにそれは「表現」そのものだからだ。

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