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『人を賢くする道具』「第8章 未来を予言する」のまとめ

この章には何が書かれているのか?

(執筆時点から見て)今後のテクノロジーがどのように発展していくのか。その際の課題は何なのかが検討される。

中心となるのは、テクノロジーの発展の予想ではなく、その社会的インパクトの予想が難しいという点。個人用ヘリコプター、原子力発電、コンピュータ、電話といったテクノロジーは事前の予測とはまったく違った展開となった。どのようにその技術が受け入れられるのか、技術以外の要素がどうなっていくのか。それらを加味しないと適切な予測にはならない。

という点が確認された上で、著者なりのテクノロジーの未来の予測が開示される。デジタル情報、出版、教育、エンターテイメント、通信、仕事場などの分野について言及がある。

また、著者の懸念点として以下のような要素も挙げられている。

  • プライバシー

  • アクセスへの社会的なアンバランス

  • ソシオパス

  • 人間同士のインタラクション

2023年の現在から見ても非常に現代的な問題だと言え、その先見性は注目に値する。

最後にはVRなどについても触れられていて、著者は「社会的な共同作業のためのテクノロジー」の意義を検討していた。現状もzoomなどのツールによって、ネット上での共同作業に関してはある程度整備が進みつつあるが、それがVRなどと結びついたときにどう変化していくのか。非常に楽しみではある。

ただし著者が最後に投げ掛けている「新しいテクノロジーを使うよりもそれについて読むほうが楽しいのはなぜか?」という問いは留意しておくべきだろう。記述の中のテクノロジーは何もかもがスムーズに動き、操作で迷うこともなく、やりたいことがストレートに実現できるのだが、現実のテクノロジーはそうはなっていないことが多い、という指摘だ。似たような状況は、現代でもごく普通に起きているだろうから、手放しで「未来図」を喜ぶわけにはいかない。

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