見出し画像

『七時間目』シリーズレビュー

講談社青い鳥文庫から出ている藤野恵美作の『七時間目』シリーズ三冊、まとめてレビューです♪

まずはざっとあらすじを、(青い鳥文庫の裏表紙風に?)ご紹介。

シリーズ①『七時間めの怪談授業』

画像1

主人公、羽田野はるかの携帯電話に、9日以内に同じ文面を3人に送らないと呪われるという「呪いのメール」が届きます。どうしようと悩むはるか。そのケータイを、呪いを信じない学校の先生が没収してしまったからさあ大変!『ほんとうに呪いがあるなら、放課後先生に怪談を聞かせて、怖がらせてみせなさい』と言う先生。もし先生が怖がったらケータイを返してくれるというのだけれど、呪いを信じていない先生を怖がらせるお話なんてできるの!?

シリーズ②『七時間目の占い入門』

画像2

佐々木さくらは転校生。自己紹介で占いが趣味と言ったおかげで、すぐにクラスに溶け込むことができました。実は、前の学校ではクラスから浮いた存在でのけ者にされていたのです。転校をきっかけに、占いを覚えてみんなと仲良くしたいさくらなのです。でも、今度はさくらが広めた占いのせいでクラスの女の子同士が険悪なムードになっちゃった。いったいどうしたらいいの?

『七時間目のUFO研究』

画像3

6年生の親友同士、あきらと天馬の二人はペットボトルロケットを飛ばして大会に出ようと頑張っています。その飛行実験中、天馬が偶然UFOを目撃! すぐに学校で噂になり、新聞記者やあやしげなテレビの取材まで町にやってきて大騒ぎになってしまいます。でも、天馬は見たというUFOが実はあきらには見えていなかったのです。みんなの盛り上がりでなかなかそれを言い出せないあきらを後目に、騒動は大きくなるばかりで……。

―――

と、まあ、そんなかんじのお話。面白そうでしょ?w

私はとっても楽しめました。

実は、①の『七時間めの怪談授業』のだいたいの内容は別の本(山本弘さんの『BISビブリオバトル部2 幽霊なんて怖くない』)で紹介されていたもので先に知っていたのですが、それを差し引いても十分おもしろかったです。

それぞれ、小学校高学年の子供たちが、普通の授業の後、タイトルになっているなにかの、怪談や占いやUFOをテーマにした特殊な授業(?)をするというスタイルになっています。すべて別々のお話で別の学校、キャラクターたちも違っていますので、単独のお話として読めます。

占いもUFOも怪談(おばけや幽霊)も、どれもこのぐらいの子供たちにはとっても「気になる」テーマですよね。で、「信じる/信じない」で、グループや派閥が生まれてしまって、お互いを認め合えずに喧嘩になったりいじめの原因になったりするんですよねぇ。
そしてそのグループ間の溝は大人になるまで埋まることなく続いていってしまったりして。
私もそういう溝を埋められず、決定的な別れや疎外を経験してきたので、この三冊のお話はずいぶんと感情移入してしまいました。特に②の『七時間目の占い入門』では身につまされる部分や、「ああ、あるある!」「こういう人いる!」「そうそう、そうなのよ……」ってつい言ってしまったりw
そうした子供たちの人間関係や悩みの描写もたいへん素晴らしく、ドキドキさせながらわかりやすくスムーズにお話は進行するのです、が、なんといってもこのシリーズが素晴らしいのは、三冊通してしっかりと「リテラシー」を教えてくれているところです。

よくあるオカルトにどっぷりつかってそれが世界の隠された真実だ! って決めつける内容の本や、逆にオカルト全否定の、心を失くした科学には幸せ求める夢がないって感じのガチガチな本ではなく、どちらの見方にもよりそう形の、それでいて玉虫色ではない、両極端な結論ではなくちゃんと現実を見すえた話しになっているところがとても良いのです。

占いを信じていても、オカルトを信じていても、UFOを信じていても別に良いけれど、それを信じているかいないかだけで人間を批判したり攻撃してはいけない。ましてや差別するなんて。
そうした人としての基本、見えないモノを信じるにせよなんにせよ楽しむ気持ちや姿勢、心構えを子供にもわかるように子供の視点でうまく描いているところがとっても素晴らしいのです。

モチロン、オカルトに対する姿勢のありかたについてだけ語られているわけではありません。①ではケータイのスパム(ていうかチェーンメールですね)に対するリテラシーがそれだし、③はTVやマスコミに対するリテラシー、②は主にオカルトですが、三巻それぞれの底に流れているのは人と人との関係性のリテラシーな気がします。小学校高学年の主人公たちは悩んだり苦しんだりしたうえで、この対人リテラシーを学んで成長します。(その結果が①~③の別のリテラシー問題の解決につながっているところがまたよくできているんです)

これが、一見して怪談や占いやUFOのオカルト万歳って感じのタイトルとかわいらしい絵柄の表紙で興味ありそうな子供たちに手に取りやすいように作られているってところがミソですね。やるじゃん、さすが青い鳥文庫。そして著者の藤野恵美さん、すばらしいです。良い仕事されています。全国の小学校の図書室に必須の本です。司書の友人にもおすすめしなくっちゃ(知ってるだろうけど)

って思ってたら新型コロナちゃんのせいで学級ならぬ学校閉鎖ですって!!><
うーん、全国のパパさんママさん、学校がなくて暇を持て余しているお子さんにこういう本をプレゼントされるといいかもですよ?(w
あ、もちろん大人の方が読んでも楽しめると思います。ご自分用にもぜひどうぞw

なお、上のほうでリンクを張ったのは2017年以降に出版された新装版です(電子書籍版もあり)。2005年あたりに出た旧版(トップの写真の下に重なっている2冊はそれです)は、アマ〇ンあたりで1円とかで古本でているようです。おすすめですよー☆

―――


この記事が参加している募集

推薦図書

よろしければサポートお願いします!いただいたサポートはクリエイターとしての活動費にさせていただきます!感謝!,,Ծ‸Ծ,,