記憶は脳の一部に貯蔵されているのではなく、思い出す瞬間に、毎回、再構築される【心理学】
「過去は変えられない」とよくいいます。
しかし、その過去は本当に正しい過去なのでしょうか。
「正しい」過去とはなんなのでしょうか。
自分が記憶した過去が正しい過去なのでしょうか。
今回のテーマである、
「記憶は脳の一部に貯蔵されているのではなく、思い出す瞬間に、毎回、再構築される」
というのは、神経学者のジェラルド・エデルマン博士による理論になります。
記憶の基本
記憶は、私たちが経験したことや学んだことを心に留めるプロセスです。これには、過去の出来事、知識、技能などが含まれます。
私達は意外と昔のことを覚えています。
小学校のときの通学路を思い出してみる
例えば小学校の通学路を少し思い出してください。
かなり前のことだけど覚えていますね。
玄関から出て、道を通って、ここには電信柱があって、この横断道でよく待って、校門の横にはこんな木があって、みたいにかなり鮮明に覚えていると思います。
脳における記憶の保管
一般的に、記憶は脳の特定の部分に「保存」されていると考えられていました。たとえば、海馬は記憶の形成と保管に重要な役割を果たします。
記憶の再構築
最近の研究では、記憶は脳の一部に静的に「保存」されているのではなく、思い出すたびに再構築されるという考えが提唱されています。これは、記憶が動的なプロセスであり、毎回少し異なる可能性があることを意味します。
催眠療法という心理療法でもこの特性を使ってセラピーを行うこともあります。
記憶の柔軟性
記憶が再構築されるという考え方は、記憶が時間とともに変化しやすいことを示唆しています。私たちの現在の心理状態や環境が、どのように記憶を思い出すかに影響を与える可能性があります。
例えば、母親の行動に反発していたけど、親になると理解できたので解釈が変わった、みたいなことがあります。
思い出すプロセス
記憶を思い出すとき、私たちは過去の情報を組み合わせて、意味のある全体像を作り出しています。これにより、記憶は単なる再生ではなく、創造的なプロセスとなります。
影響要因
情動的な要因やコンテキストなどが記憶の再構築に影響を及ぼし、思い出の精度や詳細に変化をもたらすことがあります。
例えば、楽しく二人で過ごした思い出も、別れると思い出が変化すると思います。
記憶の誤り
記憶の再構築の性質上、誤りや歪みが発生しやすいです。これは、誤った記憶や記憶の歪曲の原因となることがあります。
記憶の再構築をパソコンに例えると
ハードドライブとメモリ
パソコンのハードドライブは長期記憶に似ており、大量のデータを長期間保存します。一方、RAM(ランダムアクセスメモリ)は短期記憶に似ており、一時的に情報を保持し、高速にアクセスできます。
データの処理
パソコンでプログラムやファイルを開くとき、データはハードドライブからRAMに移され、処理されます。これは、脳が記憶を思い出すときのプロセスに似ています。記憶は長期記憶から引き出され、短期記憶や意識の中で活性化されます。
データの組み合わせと再構築
パソコンは画像ファイルやテキスト、動画などを組み合わせて新しい文書や動画などを作成します。脳も同様に、異なる記憶の断片を組み合わせて新しい思い出を再構築します。
データの更新と変更
パソコンでファイルを編集すると、元のデータは変更されます。同様に、脳でも記憶は思い出すたびにわずかに変化し、新しい情報や経験によって更新されることがあります。
階層的なデータ構造
パソコンではファイルやフォルダが階層的に整理されています。脳も同様に、記憶は関連性や重要性に基づいて階層的に組織化されます。
エラーや歪み
パソコンのデータは時に誤りや破損が生じます。記憶もまた、時間の経過と共に歪んだり、不正確になることがあります。
しかし、脳はパソコンよりもはるかに複雑で、そのプロセスは単なるデータの保存と回復を超えています。記憶は、感情、感覚、認識、そして個人の経験と深く結びついているため、パソコンのような単純なデバイスとは根本的に異なります。
これは以前の自分が正しいということにこだわらない、という話に繋がります。
「自分の過去の認識は基本的に怪しい」ということを知っていれば、自分が正しいことにこだわることはあまりよくないということは理解できると思います、
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