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監査法人1年目の教科書 -退職/転職のしかた編-

退職/転職方法を経験を基に書いてみました。監査法人入社前、もしくは入社まもない皆様もいつかは検討する日が来るかと思います。その日に向けてどんなことを考えるとよいか、私の経験を踏まえ書いてみました。退職の手順等細かい話に入る前に、まずは私の先輩の言葉から紹介させてください。

私の先輩の言葉

マネージャーになった瞬間、退職した先輩の言葉が忘れられません。悲しい顔をして「もっとチャレンジすればよかった。」とおっしゃっていました。「だからララさんにはチャレンジしてほしい。俺の思いを託すのもあれだけど。」と。

米誌『Emotion』に掲載された「The Ideal Road Not Taken」という研究論文があります。人生で後悔していることは?と80歳以上の方に聞く研究です。約7割の方が「チャレンジしなかったこと」と答えるそうです。

転職することがチャレンジとは限りませんが、多くの人にとってはチャレンジ入り口ではないでしょうか。私がそうだったように。

この記事が、挑戦しようとする皆様の参考になることを願って以下書きます。

私の退職理由(参考)

退職理由は人それぞれかと思いますが、ご参考までに。私の退職理由を一言でまとめると、生涯年収を最大化したいと思ったからです。それを少しブレイクダウンすると以下になります。

焦り

このまま監査法人にいると監査法人以外で働けなくなりそう、という焦りを感じ始めたからです。

社内でしか役に立たない業務が非常に多い印象です。働き方改革という名で、新しいツールが次々と導入されます。監査ではなく、ツールの操作を調べる時間の方が長くない…?しかもこのツールって法人出たら絶対使わないよね…?としばしば思っていました。

そんな状況下では、給料の高い仕事で求められる能力を伸ばせないと感じていました。給料の高い仕事とは役員、幹部候補ポジション、PE、ベンチャーキャピタルなどです。

自分が思い描く将来に繋がらないから

私は家庭優先のタイプです。経済的に自立し、家賃20万円相当の家に住みたいです。そして願わくばあたたかい家庭を築きたいです。果たして監査法人でこのまま勤務していて、その将来に繋がるのだろうかと不安になりました。

監査法人で順調に昇進していくとマネージャーです。マネージャー層は社内業務で忙しいです。コンサルタントのように価値を生み出す作業ではなく、社内の申請であったり、新人さんの研修です。

そんなことに時間を使っていたらいよいよ監査法人でしか生き残れない人材に成り果ててしまうのでは?そんな風に思い始め転職しました。


自分の得意が監査と合っていないから

やはり反比例する能力はあると思っています。例えば戦略的に大きな絵をかく能力と、細かいところに気づく能力は、一方が高ければ、一方が相対的に低い傾向にあると思います。

監査業務は細かいところに気づく力がスタッフのうちは重宝されます。昇進し、マネージャーになると、戦略や計画を描ける力が重宝されます。私は戦略や計画を描く方が得意です。自分の得意が活かせるマネージャーになるまで待つか、先んじて転職してしまうか?私は後者を選びました。

転職活動の流れ

自分のキャリアを検討する

どんな選択肢があるのか、人生で何を達成したいのか、逆になりたくない状態は何なのか。じっくり考えていきます。自分のアイディアが出やすい状態で考えるのがおすすめです。私は大抵真っ暗な部屋にアロマキャンドルだけつけて集中するか、陽当りのいいカフェのテラスで考えてます。

話を戻し、ポイントとなるのは、この段階では求人を見ないことです。もう皆さんなら聞き飽きてるかもしれませんが、転職は手段であり目的ではありません。手段はすぐ目的のふりをします。現実を見るのは後の工程でOKです。まずは理想を。

このことは皆さんも過去を振り返ればご経験あるのではないでしょうか。辛く長い公認会計士試験を乗り越えてきたのは、試験のその先に欲しいものがあったからのはずです。

転職も同様であり、転職する前より、その後が大事です。転職後も見据えて、転職活動するのが得策でしょう。

ここで自分の将来なんて分からないよ、という人もいらっしゃるでしょう。その場合は単純に年収いくら欲しいのか、を考えるとある程度選択肢を絞れます。高年収を得られる職業や立場はそんなに多くありませんので。

転職の選択軸を決める

なりたい姿に近づくために、満たさなければならない条件があるはずです。例えば独立を目指すのであれば、税務の経験かもしれないですし、上場企業の役員になりたいのであればマネジメント経験や専門性でしょうか。自分の転職の中で必ず必要となるものや、譲れないものをいくつか選び、優先順位をつけましょう。

私の最優先の軸は、将来の選択肢が増えることでした。

求人を探す

ここから現実を見る時間です。自分の理想と現実をすり合わせていきましょう。理想と現実はめっぽう仲が悪いですが、その仲裁を皆さんならできるはずです。選択軸に照らし譲れるところは譲り、譲れないところはとことん追及しましょう。

エージェントを利用する

エージェントを利用する人、しない人いると思います。私はエージェントを利用した方がいいと考えています。こちらは以前私が書いたnoteで、なぜエージェントを利用した方がいいと思うかを書いています。Q.転職エージェント利用は必要でしょうか?|ララ (note.com)

履歴書・職務経歴書を書く

転職エージェントのアドバイスも受けつつ書き上げましょう。応募先ごとに微修正が必要ですので、適宜添削を受けましょう。ただエージェントを信頼しすぎるのは問題です。後述しますが、相談できる人には全員に相談しましょう。必要あれば添削もお願いしましょう。私は家族に誤字脱字や、読みにくいところがないか確認してもらいました。

応募し、面接を受ける

細かいポイントは私より、エージェントさんに聞いた方が良いかと思います。業界等で異なるかと思いますので。大体転職しようと考えてから内定まで早い人で2週間、私は2カ月かかりました。


転職時に参考にした書籍

私の感覚で役に立ったのは以下の2冊のみです。2冊以外にもいろいろ読みはしましたが、自信をもって薦められるレベルではないです。やはり転職は一人ひとり違うものですから、合う合わないがあるのでしょう。ぜひ書店に立ち寄って、参考になりそうな書籍があれば手に取ってみてください。

イノベーション・オブ・ライフ

転職以前に「幸せな人生とはなにか?」「どのようにして人生を豊かにしていくか?」「人生の落とし穴は何か?」生き方を考えさせてくれる本です。PEファンドに転職した先輩からおススメされて私も読みました。必読書であると思います。

転職と副業のかけ算

どのようにして生涯年収を最大化していくか、が書かれています。著者の実際の体験も豊富に書かれていますので、転職を追体験できます。転職が人生にどんな影響をもたらすか、ぐっとイメージしやすくなりますのでぜひ読んでほしいです。


新卒の就活と異なる点

即戦力が求められる

新卒の時はポテンシャル採用がメインだと思います。しかし第二新卒はまだしも、中途採用は確実に即戦力として採用されます。監査法人にいる間に履歴書にかけることを増やしておきましょう。

働きながら転職活動する必要がある

ここがなかなか大変です。監査法人就活でも大変だった思いますが、自分の体力的な限界に照らして無理のないスケジュールを組みましょう。そこは応募先も考慮してくれますので遠慮せず、面の皮厚くいきましょう。

情報が少ない

新卒採用のように面談や、説明会がある会社は少数派です。とにかく情報が集めにくいです。業界雑誌や、有報、法人内でその業界に詳しい人に繋いでもらいましょう。

あと投資銀行に転職してから覚えた情報収集技は「各業界にある協会に聞く」です。必ずと言っていいほど○○協会などがあります。公認会計士協会もありますよね笑 そこに電話して業界のこと聞くと結構教えてくれます。広報担当者の方は暇していることが多いようで、いきなり電話しても詳しく教えてくれます笑 この記事の中でもしかしたら一番価値のあるノウハウはこれかもしれません。


退職の手順

所属グループの人事担当パートナーに退職したい旨を伝える

転職予定の最低でも1カ月前(社内フローに最低でも1カ月かかるので)、余裕を持つなら2,3カ月前です。

ポイントは「退職の報告」にすることです。もう退職することは決まってるんです、ときっぱりで伝えることです。

退職の「相談」にしてしまうと、退職時期が後ろ倒しなりがちです。実例として半年ずれ繁忙期も働くことになった人を見ました。最低でも以下の問いには、きつ然とした態度答えられるようにしましょう。

■異動じゃダメなの?異動させてあげるよ
 異動が今すぐ叶うとは限りませんので注意
■今じゃなきゃダメなの?

自分の監査チームの主任等に退職したい旨を伝える

こちらもポイントは「退職の報告」にすることです。上司によっては泣いてくれますが、情に負けないことです。皆さんの人生は、皆さんが決めるのです。生き方を選べる権利が皆さんにはあるのです。それに本当に仲がいいなら、どの会社に属しているかは関係ないです。続く関係は続きますし、続かない関係は続きません。達観して一時の感情に負けないようにしましょう。

社内ワークフローを回付する

社内wiki等を検索する、もしくは先輩方に聞けば教えてもらえると思います。各法人準備されたフローがあると思いますので、そちらに従いましょう。

貸与物の返却

定められた日に漏れなく返却しましょう。退職すれば基本的に会社と無関係な人間になりますので、守るところはしっかり守りましょう。なお法人によっては、直接返却以外に郵送でもOKなようです。

※注意点
補修所や、公認会計士協会の登録情報を変更する必要がありますのでその手続きも忘れないようにしましょう。各法人の内部でワークフローがあるはずです。


辞める前に考えるべきこと

以下全て後悔しないことを目的としています。いい転職もあれば、残念ながらうまくいかない転職も実際に見てきました。後悔先に立たずです。少なくとも以下の問いを考えると、後悔を少しでも減らせるかと思います。

将来のキャリアに繋がっているか?

転職は一時点のものではありません。キャリアの中の通過点です。今一度、どんな人生にしたいのか、考えてみましょう。ここで2,3年ならまだしも、10年以上先のこと考える必要があるの?と思われるかもしれません。

私は自分が弱者である自覚があり、だからこそ10年以上先のことも見据える必要があると考えています。近くばかり見ているから船酔いするのです。遠くを見据え、資源の投入先を選択し集中することで強者に勝つことができるのです。この世は残念ながらサバイバルです。下りエスカレーターに乗った日本では、少しの努力では現状維持ないし後退です。どこかに資源を集中投下して、下りエスカレーターを登っていく必要があると思います。(そもそも日本で生きる必要がないかもしれませんが。私は日本が好きなので笑)

このことは投資銀行で働いている今、より実感しています。経営陣に危機感がないぼーっと経営されている会社は市場から淘汰されています。危機感がある会社はなんとか生き残っています。もちろん空振りしてるケースもありますが。

やはり弱者が生き残るには先手を打つ必要があります。その場その場の瞬発力では限界があるのです。

監査法人でできないのか?

監査法人の業務内容は非常に多岐にわたります。転職せずとも携わることが可能な場合もあります。なお監査法人の異動には基本半年以上かかりますので、時間軸も考慮する必要があります。「いやいやもう監査法人にいたくないんだ」という人もいるでしょう。そのような感情的な限界との兼ね合いになりますが、社内に残るという選択肢もあることは忘れないでいただきたいです。なんだかんだ監査法人はすごいです。

相談できる人には相談にしたか?

どうしても自分で見えないことがあるのです。転職はチーム戦です。最終的には自分で決断を下す必要がありますが、相談は可能な限り多くの人にして、盲点をなくすことが大事です。検討漏れがないことが、後悔のない転職に繋がります。

盲点をなくすと言えば、この本。社会人の必読書であると思っています。

Amazonでギフトとして送られている本No.2になっているようですね。人に送りたくなる気持ち良くわかります。実際私はチームメンバー全員に読むよう送りました笑

最悪のシナリオを想定し、手は打ったか?

無策で転職してきて「将来どうするのだろうか」と心配になる方も身近で見ています。リスクがあるからやめようではなく、見えていないリスクをなくすのです。リスクのない転職なんてありません。リスクを可能な限り把握し、諦めるところは諦め、対策を打てるところは打ちましょう。その際に有効なのが、最悪のシナリオを想定してみる、というものです。「どうにかなる」時もあれば「どうにもならない」時もあるでしょう。

最後に

皆様が転職を通して、より豊かな社会人生活になることを祈っています。冒頭に書いたように、一人でも多くの方の背中を押すような記事になっていたら嬉しいです。なお以下の記事が「監査法人1年目の教科書」シリーズすべてを集約したものです。私がこのシリーズを始めたきっかけ、込めた願い等も書いていますのでよかったらどうぞ!




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