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『なぜ食材に塩をするの?』と聞かれて絶句した瞬間の話

私たちは料理人は、「塩をする」事に何の疑問も抱いてません。しかし、あなたが『なぜ野菜に塩をするの?』と聞かれた場合、適切な返答を用意していますか?

『なぜ塩をするの?』

さぁ考えてみてください。

例えば「浸透圧で食材から水を出す」,「下味をつける為に、塩をする」この2通りの答えしか聞いたことがありませんが、これではしっくり来ませんよね。

「塩をする理由が分からない人間」にとって、食材から水を引き出す理由も分からないでしょうし、下味をつける意味も理解できないかも知れません。

しかし時に料理は、理論だけでは説明できない部分がある事だけは、皆が承知している事実だと存じます。

この「浸透圧で食材から水をだすためだよ」には、浸透圧の原理の説明と、食材から水を出したらなぜ美味しくなるのかを説明する義務が生じます。

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現代において情報がたくさん溢れる中”、まずは”その細かな説明“が上司に出来ることがいい料理人を作る条件として加えられている様な気がしています。そのような時代だからでしょうか?

浸透圧を説明するには、まずは食材の構造を知る必要があります。これは簡単に「人間と同じ様に水分から構成されている部分が多くある。例えば細胞やタンパク質の中にも水分は含まれているよね?」という説明から理解できると思います。

塩(塩化ナトリウム)は水に溶けると、ナトリウムイオン(Na⁺)と塩化物イオン(Cl⁻)に分かれます。このイオンが存在することで、溶液の浸透圧が変わります。浸透圧とは、濃度の違いを均一にしようとする力です。
食材を塩水に浸けると、食材の内部と外部の塩水との間に濃度差が生まれます。逆に、塩漬けした食材を水に浸すと、今度は外部の水の濃度が低くなります。この場合、食材の内部の塩分が水に移動し、濃度差を均一にしようとします。水分も同様に移動し、最終的にはバランスを取ろうとする動きが見られます。

要するに、塩によって「濃度差を解消しようとする力が働き、濃度を均一にするために水分が塩をした部分に移動する現象」です。

私はよく『なんで?なんで?』と聞いて避けられることが多かったのですが、その頃、こんな風にも思っていました。「理論が説明できないのに、どうやって再現性のある料理を作り続けるのか?」と。

依然語ったことがあるように、”知ったうえで手を抜くのか”、”知らない上に手を抜くのか”とでは、最終的な料理の仕上がりに差がでると感じています。

高級料理の技術をビストロレベルに適応させること、またその逆も然り、は異なる結果を生み出します。このプロセスにおいて、高級志向を根差したスタッフが創り出す空間と、ビストロしか知りえないスタッフが提供するサービスには、微妙な違いがあり、これが顧客体験に大きな違いをもたらすことがあります。

「料理は最終的には感情であり、食材の正確な扱いとそれに対する敬意がすべて」:Thomas Aloysius Keller の言葉の真意|フランス料理のサイエンス-Pro (note.com)

もう一点の問いかけを投げかけます。

「オーブンと低温調理はどちらが美味しい?」

これに答えるには、いくつかの前提の説明が必要です。

いつものような科学的な説明はしませんが、詰まるところ「中心温度を何分で何度に仕上げるか」という過程にしか違いがないという事実を理解する必要があります。

明確に理解をするには、「熱力学」や「ニュートンの冷却方式」、また料理の科学の基本的な要素である「メイラード反応」について深く理解する必要があります。

オーブンでも、均一に加熱される真空調理でも、食材の温度が環境の温度に近づくにつれて、温度が上がる速度が遅くなるニュートンの冷却法則の基本的な考え方を用いて、料理の加熱や冷却時の時間管理を計算式を数学で出すことができます。

これを経験だけに基づいて行うのか、理論に基いた上で技術で熟すのか、ではまた再現性に違いがでるでしょう。

「おお!今日の火入れは最高だ」

これは現場でよく耳にしますが、私はいつも呆れた顔でそれを見ています。こんな言葉にも聞き覚えがあります。「おお、ぴったり100g!!」。この言葉にも呆れます。

生産者は私たちだけですが、食べ手は千差万別であり一人ひとり毎日違う人間がその料理を食べるのです。

すべてを100gピッタリにすることが大事なのではなく、人間の調整によって生じる誤差を計算に入れた料理構成の理解が必要です。あるいは、その誤差に対する諦めの理解も重要です。

つまり、料理の全体的な仕上がりが平均点で評価されるとき、例えば80点や100点、50点という凹凸の評価よりも、連続して70点を出し続け、69点や71点の微細な誤差評価のほうが良い場合もあります。

少なくとも食べ手はそう感じるでしょう。

感覚や技術に頼る場面が重要な場合もあれば、完全な理解が求められる場面もあります。それらを適切に理解することがまた新しい美味しさを生み出すキッカケになるのかもしれません。





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