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今日のつれづれ〜営業さんとお客さんの関係〜

ハローワークに行った。
手続きが済んで、外へ出ると、スーツ姿の女性に声をかけられた。

「お仕事をお探しですか?」
はい、と言うと、さらに近づいて、
「わたくし、お仕事のご紹介をしております、〇〇と申します。お時間いま大丈夫でしょうか?」
大丈夫でもなかったけれど、どんな話だろう?とちょっと気になったので、はい、と言ってそのまま立ち止まり、話を聞くことにした。

渡された名刺を見ると、人材派遣会社の人だった。
工場での検品の仕事があり、すぐ紹介できるという。
検品かぁ…。
と内心思い、実際あまり捗々しい顔をしていなかったのだろう。
簡単で、工場といっても静かで綺麗な環境だと押してくる。

その工場は市外で、私の家からは結構遠い。
しかも検品といえば、勤務時間中ずっと神経を尖らせてチェック作業をしなければならず、やはりちょっと声をかけられたからといって、すぐ働きたい気持ちにはなれなかった。

でも、なかなかにその営業の女性も引き下がらない。
「早く就職が決まれば、早期就業手当もまとまった額が出ますよ!」
家はどこだ、そこからだと電車でどのくらいだ、など、気を引こうと一生懸命だ。
どんな仕事を探しているか、と聞かれ、案外まだ自分の中で定まっていないことにハッとしながらも、前職が事務職だったこともあり、適当に事務職、と答えてみたが、その答えには返事はなく、ひたすら検品の仕事を勧められた。

事務職はたぶん、こんなところで営業せずとも、引き手数多なのだろう。急いでいたので、これ以上話に付き合うこともできず、失礼した。

その後すっかり忘れていたが、ふと、もらった名刺がぽんと机に放り出してあるのを見て、その時のやりとりを思い出した。
と同時に、私はあるおばあちゃんを思い出していた。

昔、介護の仕事をちょっとだけ、ほんのちょっとだけしていたことがある。
独り暮らしのそのおばあちゃんは、家に来たセールスマンから、高額な布団や印鑑などをかなり買わされていた。
おばあちゃんの話によると、次々、セールスマンが来るのだという。
もしかすると、一度その手の商品を購入してしまうと、ブラックリストというか、購入してもらいやすいリストに載ってしまうのかもしれない。

支援者側からすると、かなり高額な商品を、いとも簡単に次々購入してしまうので、これはまずいと問題視していた。
そこで、この商品は本当に必要だったのか、セールスマンが来ても、必要がなければ断れることを、繰り返し説明したのだけれど、最後におばあちゃんは怒ってしまった。

「私が買いたいから買ってるんじゃ!」

おばあちゃんは若いころ、ミシンの訪問販売をしていたという。
セールスマンを見ていると、若いころが思い出されて、つい気の毒になって買ってしまう。
でも、自分のお金で買っているのだから、つべこべ言わんといてほしい、と言うのであった。

営業はノルマがつきものだ。
この人材派遣会社の女性も、きっと会社に帰ったら、今日の目標達成数など報告の義務があるのだろう。

何年か前、一ヶ月くらいだったか、これは無理!と思ってあっという間に辞めた会社が、ノルマ達成に全てを賭けているような会社で、そのときの営業さんたちの様子と重なった。

営業する側は、数字が取れなければ自分の給料や進退にも関わるし、それは必死だ。
相手が困惑していようとどうしようと、なりふり構わず、とにかく自分のこと最優先で働きかけてくる。

それはこちら側からすると、ただの迷惑、なことも多い。
故に、お客さんからキツい態度で返されることも多いだろう。
営業さんも、人間だ。
キツい態度や言葉を返されれば、ストレスも溜まるに決まっている。

人生寄り道も必要、といったりするけれど、寄り道だらけの人生を歩んできた私は、いろんな人の背景を、少し想像できるようになったのかもしれない。
とはいえ、高額な買い物を続けたおばあちゃんのようになってはいけないと思うが、自分に必要のない話をされたからといって、高圧的な態度を取るというのも、良いわけではない。

相手の言葉に乗せられず、常に冷静に、自分にとってそれは必要か、必要でないかを考え、必要でなかったときも、そこに一人の人間がいることを忘れることなく、きちんと断れる人になりたいと思う。





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