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How Might We...?デザイン思考で一番重要なのは課題のリフレームだと思う

あくまで私の経験則ですが、デザイン思考のワークショップで一番勢いが落ちるのはアイディエーションのフェーズです。そこまでにたどり着くまで共感マップやジャーニーマップなど、ユーザーへの理解を深めるアクティビティを重ねてきても、そこから具体的にアイデアを考えるまでにステップのジャンプがある気がしていました。AIがよしなに顧客体験を良くしてくれる、AIがよしなにユーザーが欲するコンテンツをレコメンドしてくれる、など。どんなにリサーチに力を入れてもそれがアイディエーションにうまく活かされている気がしませんでした。
春に受けたAnalysis & Synthesisという授業(必修)を受け、とっても致命的なことに気づきました。私たちが今まで課題のリフレームのフェーズをすっ飛ばしていたことに。Analysis & Synthesisという授業の名前の通り、デザイン思考はユーザーを理解して洞察を得る分析(Analysis)とそれらのインサイトを統合して解決策を考え出すSynthesisが肝になります。(ダブルダイヤモンドの発散と収束の図がこれをうまく表現していると思います)

ダブルダイヤモンド

確かにこの図でもリサーチをして、分析をしたら、"Generate many ideas" 「たくさんのアイデアを生み出す」と書いてありますが、実際にアイデアを考える前に、果たしてどんな問題を解決するのか、アイディエーションの方向性を決める必要があります。さもないといろんな方向に発散してしまい、収集不可能になります。
リサーチ、分析から見えてきた問題点や根本原因を元に、解決すべき課題を定義すること、これを課題のリフレーミングと呼びます。How Might We(どのようにしたら〜ができるか)という手法で、ご存知の方も多いと思います。ただし、How Might We、個人的にとっても難しく。。。デザイン思考の一連のアクティビティの中で一番難易度が高いのではないかと思いますし、それこそ特別な訓練をした人でないと質のいいHow Might Weを定義することができないような気すらしています。

私自身もこの手法をマスターできている気はしないので今回は備忘録として手法をご紹介します。コツをご存知の方がいらっしゃったら教えてくださると嬉しいです。🙇‍♀️

How Might Weってどんなの?

How Might Weは日本語でどのようにしたら〜ができるか、という意味で、このHow Might Weを用いて課題定義をします。
例えばこれらが私達が授業の中でつくったHow Might We Statementです。この時、私達はThe SillというアメリカのD2C植物ストアをリサーチしていました。
The Sill、とってもおしゃれなんですが、顧客が"Plant Parents"と呼ばれるほど植物をペットのように愛着を持って育てる人たちで、オンラインがメインプラットフォームな為、購入前に実際に触ったり見たりして健康状態が見れないことが顧客の大きなペインポイントでした。また、お店の人に手入れの仕方を気軽に質問できないことも課題の一つでした。このインサイトを元にしたHow Might We Statementが以下になります。

・How might we create an immersive online shopping experience for our customers that feels analogous to in-person shopping? → どのようにしたら実際の店舗で買い物をしている時の体験がオンラインで実現できるか?

・How might we enable our customers to “see” their plant before buying? → どのようにしたら顧客が植物を買う前に実際に商品を「見る」ことができるか?

どうでしょう?いろんなアイディアが生まれてきそうじゃないですか?このような、抽象的すぎず、具体的すぎず、それでいて解決しなければならない問題の方向性はきちんと示されているのが良いHow Might We Statementです。How Might We(以下HMW)を考えることによって、適度に制約を設けながら、アイデアを発散しやすくなります。この微妙なラインを狙うのがとっても難しく、ほぼコピーライティングの次元です。
上記のHMWにたどり着くまでチームではかなり苦戦しておりHMW improve the delivery service of The Sill? 「どのようにしたらThe Sillの宅配を改善できるか?」というステートメントを考えて、教授のJeremy Alexis先生から「僕が今まで見た中で最悪のHMWだね。笑」と言われてしまいました笑  とにかく練習が必要なのは明らかなのですが、今回HMWの作り方について調べてみました◎

前提

リサーチが済んでいること。

HMWの作り方 - その1

1. リサーチの結果をもとにまずは問題を定義する

リサーチの結果、ユーザーのペインポイントや課題感をいくつか洗い出すことができていると思います。それを元まずは問題を定義します。(ニーズステートメントとも呼ばれています)以下のフレームワークを用いて作ることができます。

[ユーザー]は[要望・ニーズ]をする必要がある。なぜなら[リサーチの結果・洞察]だからだ。 

[User] needs to [need] because [insights].

ニーズステートメント

例えば
第一子を控えている親(ユーザー)は貯蓄投資口座を開く必要がある。(ニーズ) なぜなら彼らは子供の将来の教育計画を立てたいが、たくさんの貯蓄投資口座の選択肢と口座開設の方法に圧倒されているからだ。(リサーチの結果・洞察)
というような具合です。


2.問題を要素分解する

ニーズステートメントができたら、How Might Weステートメントのブレーンストーミングを開始することができます。ただ、この時点ではまだとてつもない大きな問題なので、実行可能な小さな断片に分解します。
さきほどの例ですが、これをいくつかの要素に分解することができます。

  • 選択を手助けする

  • 手続きを手助けする

  • 投資型貯蓄の意味を理解させる

  • 投資型貯蓄を通して教育計画を立てる方法を教える

などなど

3.できるだけたくさんのHow Might Weを考える

まだ慣れていない人はこのフレームにはめて考えるとわかりやすいでしょう。

[ユーザー]が[期待される効果が得られる]ようにするためには、どのようにして[あるべきユーザー体験]を実現することができるか?
How might we (intended experience) for (user) so that (desired effect)?

How Might We Statement
  • 第一子を控える親[ユーザー]が自分の選択に自信を持てるようにする[期待される効果]ためには、どのようにして投資型貯蓄の選択をより簡単にする[あるべきユーザー体験]ことができるか? 

  • 未来の親たち[ユーザー]が圧倒されないようにする[期待される効果]ためには、どのようにして投資貯蓄口座の選択プロセスを明確にする[あるべきユーザー体験]ことができるか?

  • 将来の親たち[ユーザー]がそれほど混乱しないようにする[期待される効果]ためには、どのようにして投資貯蓄口座について教育する[あるべきユーザー体験]ことができるか?

この時に重要なのはあるべきユーザー体験を考える時にあくまで体験レベルで考えるのであって手段・方法を明確にしないことです。(ex: モバイルの画像認識機能を使って、など)
一つの文章だと考えにくい場合は部分ごと(ex: ユーザー、期待される効果、あるべきユーザー体験)に考えて最後に1文に結合するのがよいと思います。

4.(必要に応じて)制約を設ける

制約を加えることによってよりおもしろいアイデアが生まれる可能性が高くなります。素晴らしいアイデアはよく矛盾やパラドックスを含むHMWから生まれるからです。
例えば:
第一子を控える親[ユーザー]がいかなる金融商品の理解度に関わらず[制約]自分の選択に自信を持てるようにする[期待される効果]ためには、どのようにして投資型貯蓄の選択をより簡単にする[あるべきユーザー体験]ことができるか? 

5.良いHow Might We Statementを選ぶ

できるだけHMWを考えたら、筋の良さそうなものを決定します。そしてこれらのHMWに基づいてアイデアの発散が行われます。(それは次回にご紹介します◎)

「ちょうど良い」HMW

ちょうど良いHMWは抽象的すぎず、具体的すぎない、絶妙なレベルを目指す必要があります。例えば抽象的すぎるHMWはこんなものです:

  • どうしたらインドの公衆トイレをリデザインできるか?

  • どうしたら空港での顧客体験を改善できるか?

  • どうしたら旅をリデザインできるか?

このまま進んだらアイディエーションの際にいろんな方向にアイデアが発散しそうです。しかも抽象的すぎてあるべき姿がイメージできません。

そして具体的すぎるHMW

  • どのようにしたら清潔で安全で人を迎え入れるようなインドの公衆トイレのドアノブをリデザインできるか?

  • どのようにしたら飛行機で配られる耳栓をデザインできるか?

  • ペットボトルを再利用して、飛行機のシートベルトを作るにはどうしたらいいか?

これらは既に解決策(ドアノブ、耳栓、シートベルト)が定義されていて、このまま進んだらあまりアイデアが生まれないような気がしませんか?

ちょうどいいHMWは2つの中間地点を狙ったものです。例えば:

  • どのようにしたらインドの公衆トイレの安全性という概念を生み出すことができるか?(これに制約を加えてもよいかもしれません)

  • どのようにしたら乗客が飛行機に乗り遅れる心配をせずに、空港内をくまなく探検する手助けをすることができるか?

  • どのようにしたら航空会社の安全性の定義をリデザインできるか?

先生が「モネの絵くらいの抽象度を目指せ」と言っていたのが印象的です。

抽象 - MCA Chicago
ちょうどいい - モネ
具体的すぎる - Bob Ross

先程ご紹介したステップを一切無視して、いきなりリサーチインサイトから抽象的すぎるHMWと具体的すぎるHMWを考えた後に中間のちょうどいいHMWを考えるのも一つの手法です。
ただ、最初は何がちょうどいいHMWなのか掴みづらいと思うので、慣れるまではご紹介したステップを踏むのがよいのかなと思います。

HMWが思いつかない時

Stanford d.schoolはHMWが思いつかない時、どうすればよいかTipsをいくつか紹介しています。

  • ポジティブな要素を増幅させる
    どのようにしたらPodcast全体をユーザーにとっておもしろいものにできるか?(Podcast=善)
    どのようにしたら子供たちのエネルギーを使って、他の乗客を楽しませることができるか?(子供=善)

  • ネガティブな要素を削減させる
    どのようにしたらPodcastのおもしろい部分をユーザーに紹介できるか?(Podcastのつまらない部分=悪)
    どのようにしたら子供を他の乗客から遠ざけることができるか?(子供=悪)

  • 悪を善にする
    ポッドキャストの面白い部分を見つけることが、ユーザーにとってポッドキャストを聴く醍醐味にするにはどうすればよいか?
    待ち時間を旅の醍醐味にするにはどうすればよいか?

  • 前提を疑う
    ポッドキャストをもっと触感のあるものにしたり、音声でアシストしたりするにはどうすればよいか?(前提:ポッドキャストではユーザーとのインタラクションがあまり発生しない)
    空港での待ち時間を無くすにはどうすればよいか?(前提:空港では待ち時間がある)

  • 形容詞に着目する
    ブックマークや保存を難しくするのではなく、簡単にできるようにするにはどうしたらよいか?(難しい→簡単)
    ラッシュ時にハラハラさせることなく、快適に過ごせさせるためにはどうしたらよいか?(ハラハラ→快適)

  • 予期せぬリソースを見つける
    ポッドキャスト内の検索を容易にするためにはどのように他のアプリを利用できるか?(リソース=他のアプリ)
    乗客の待ち時間を活用してどのように負荷を分担できるか?(リソース=乗客の待ち時間)

  • ニーズや文脈からアナロジー(類推)を生み出す
    ポッドキャストの面白い部分をブックマークしたり、保存したりすることを、ゲーム感覚でできるようにするにはどうしたらよいか?(アナロジー:ゲーム)
    空港を温泉のような、あるいは遊び場のようにするにはどうしたらよいか?(アナロジー:温泉、遊び場)

  • 課題に正面からぶつかる
    ユーザーにポッドキャストの面白い部分を検索したいと思わせるにはどうしたらよいか?
    子供たちが行きたくなるような空港にするにはどうしたらよいか?

  • 現状を打破する
    ポッドキャスト内の検索体験をもっと楽しくするには、どうしたらよいか?(現状=検索体験は苦痛である)
    空港で元気が有り余っていて遊ぶのが大好きな子どもたちをより他人に迷惑にならないようにするには、どうしたらよいか?(現状=空港で子供たちがうるさく、他人の迷惑になることがある)

上記のプロンプトがすべてのケースにおいて使えるかどうかは時と場合に寄りますが、ブレインストーミングに詰まってしまったらヒントとして参照してください!

終わりに

今回は私が個人的にデザイン思考で一番重要なフェーズだと思っている課題のリフレーミング方法の一つであるHow Might We Statementの作り方についてご紹介しました。私自身がマスターできていないので、参考になったかどうかは不安ですが、少しでもお役に立てていれば嬉しいです。
HMWは方法論がわかっていても質の良いHMWが作れるようになるまでには慣れと練習が必要なのだと思います。コツはできるだけ多くのHMWを作ってみることと、いろんな人の視点を受け入れYes, andの精神でいろんな観点でブレインストーミングしてみるのがよいと思います◎

こちらのnote(この翌週に公開したもの)ではHMWを元にソリューションのアイデアを自動的に生み出す方法をご紹介しておりますのでよろしければこちらもご覧ください!🕊

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参考文献


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古仲 蘭🇺🇸🍕@Institute of Design

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