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クリエイティヴ・ライティング入門(2)「書く」ことのメリット

記憶の解凍

「書く」という日本語の音「カク」は、さまざまな意味を持っています。「書く」「掻く」「描く」「画く」……。かつて文字は何かの表面をひっかいて刻まれたので「掻く」から「書く」「描く」に転じていきました。
 クリエイティヴ・ライティング講座で受講者のみなさんの「書く」場面に接していると、心理的にも「書く」は「掻く」と通じていることがわかります。感情を書き記す行為には、どこか心の表面をひっかいていいるような感覚が伴うのです。

記憶を文字に置き換えてタイピングしたり、紙に書き記すことによって記憶はより鮮明に定着します。自分の脳のなかにあったもやもやした思いが、言語化されて記される時に感覚はなんとも言えません。記憶に付随している薄皮をそっと剥がす行為は、なぜか快感です。もやもやしたものが文字となり他者に読まれる時に、記憶はある形と意味を持ち始め、頭がすっきりした気分になります。人はもやもやしたものを抱え続けるのはストレスです。書くことは記憶の整理をし、多くの受講者は書くことによって「心が軽くなった」と言います。
 思い……は「重い」に通じます。思いには質量があります。もやもやした形で心にとどまっている思いは、心の中である質量をもってしまいます。言葉にして整理することで、出来事の成り立ちがあきらかになり、あきらかになることで、あきらめがつきます。
 書くことは、そのように心にあるもやもやしたものへの執着を取り払い、整理する機能をもっているのです。
 
 人の記憶はいったいどこに折り畳まれているのでしょうか。大脳辺縁系にある海馬が記憶と深く関わっている、という説がありますが、人間の記憶がどうやって保存されているかはまだ科学で解明されていない領域です。記憶の所在はわからないけれど、創作には記憶がとても重要です。表現は記憶で出来ているのです。記憶を想起することは、特に文章表現には必要なことです。

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