046 | 東京大学生産技術研究所に「はじめての真空」展を見に行った



先週末、自転車で環七を走って東京大学生産技術研究所がある東大駒場キャンパスに向かった。目当てはこれ 「はじめての真空」展を見る事。








林 主 税 氏 に つ い て
林 主税さんは日本真空技術株式会社の設立に参加し、社長・会長・顧問を歴任した真空界の松下幸之助みたいな偉い技術者だ。


 小さな容器に液体を詰めるのは真空充填。
 真空パックは酸素濃度を下げる事で参加を防ぐ。
 魔法瓶や真空調理器は、外壁と内壁の間を真空にして熱伝導を防ぐ。
 たまごのパックやお惣菜のカップは真空成形で作られる。
 素材を凍結状態のまま真空乾燥させる = フリーズドライ。
 吸盤は、大気との圧力差を利用して吸着する。

普段の生活や身の周りに「真空」がある。








真 空 の は か り 方


旧東京帝国大学 理学部時代の有窓真空管。


真空計は、鑑賞するための工芸品のような繊細さで、加工されているように見える。左が静止軌道上の気圧をはかるBA真空計、右はオーロラの出る高度の気圧をはかるピラニー真空管。








真 空 の つ か い 方
真空管のラジオはリアルタイムで見ていない。自分が子供の頃のラジオはもうトランジスタだったな。


ナノ限界の制御、電子ビーム、単一電子トランジスタ、分子線エビタキシー。素敵単語がいっぱいだ。


会場の感じ。
ケースの中の心臓のようなキュートな物体はRS-684。旧ドイツ軍が海上で使用した(と考えられてる)モールス信号用の送信管だ。








ニュートリノをとらえる光電子増倍管。 ← もうこの言葉だけでわたくしご飯3杯いけます。


その、かっこいい光電子増倍管が神岡鉱山の地下1kmに、11,100本も取り付けられ、そこはと言うと直径39.2m、高さ41.4mの大空間で、並々と超純水で満たされている、その名もスーパーカミオカンデ。もう吐血しそうです、ロマンだ。


みんな大好きニキシー管。








真空のコリドー。











会場の深部に鎮座する、松ぼっくりのお化け、または真空の王とでも言うべき、圧倒的な質量と存在感。説明プレートによると「分子蒸留装置」か「2,0001/1minのキネー型油回転真空ポンプ」のどちらからしいのだけど、ド文系の私はどっちなのかよく分からなかったところを「はじめての真空」展のディレクションをされた角尾 舞さんが教えて下さいました。

これは「ターボ分子ポンプ」という、1秒間に1万回くらい回転する真空ポンプの大型だそうです。こんな巨大で鋭いものが1秒に1万回もまわるなんて、真空すごい、超すごい!
角尾さん、ありがとうございました。m(_ _)m








真 空 と 人

デモクリトス
アリストテレス
ガリレオ
トリチェリ
パスカル
ゲーリケ
志筑忠雄







スパッタリング = 空槽でターゲットにアルゴンなどの不活性物質を高速で衝突させ、ターゲットを構成する分子や原子が叩き出される現象が起こり‥、って文系には召喚呪文のよう。


21世紀に見る電子管はアクセサリーみたいで可愛い。


マイクロ・ナノデバイスとバイオテクノロジー。


「はじめての真空」の会場は、ヒンヤリした無機物感が漂うけど、その 真 空 がどのようなものなのか、技術にどう利用されているのかを伝えんと、この展示を企画した人、参加した人、また真空に携わってきた技術者の、想いが静かに高圧で充満していた。

よく見るとエントランスのタイトル垂れ幕の下に、醤油らしき赤茶色の液体が充填された、お弁当用の液体容器が置かれていた。
http://www.hayashi-fund.iis.u-tokyo.ac.jp/exhibition/

一期:2016年6月11日まで
二期:2016年7月13日〜7月23日