螢・納屋を焼く・その他の短編(村上春樹)
⬛︎螢
喉の奥の異物感が取れなくて自律神経が乱れて眩暈がするような感覚。静かな予感とか透明な無力感とか、そういう言葉が当てはまる。
人がいなくなったり死んでしまったりするのは一瞬なのに、どうしてずっと苦しいのだろう。
どこか、漱石の三四郎やこころを思わせる息苦しさ。
⬛︎納屋を焼く
世の中のありとあらゆる角度から見て賞賛されるタイプの人間の中に潜む、モラルインモラルの関係性。納屋を焼く、はメタファーなのかそれとも…
突然やってくる大きな変化は、小さい変化を見落とした結果だ。
モラルがあるからインモラルがある。
それを自己完結できたとしたら?
⬛︎踊る小人
わたしには、ちょっとしたホラーだった。支配欲、羨望、あらゆる欲望に呑み込まれる機会は誰にでも訪れる。自分が踊っているのか、踊らされているのか?
⬛︎めくらやなぎと眠る女
『大丈夫です、閣下がインディアンを見ることができたというのは、インディアンがいないってことです。』
そこにあることを完全に認識したということは、ないということも完全に認識できるということ。
⬛︎三つのドイツ幻想
私は、小説を読むといつも描写が映像になって見える。でもこの短編だけはどう頑張ってもモノクロの世界だった。もちろん1945年が舞台であることも影響しているかもしれない。
ドイツ・ベルリン・図書館・天使が出てくるからかもしれない。
ベルリン・天使の詩を思い出しながら、性欲について考えた短編。
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