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残された者たちが背負う痛みー少女たちがみつめた長崎(渡辺考)

長崎の女子高生達が、戦争当時に学生だった被曝経験者にインタビューをした記録をまとめた本書。

長崎で原爆が落とされる4ヶ月前の、女学生の日記。
『近頃はすぐなんでもおかしくなる。どうしてだろうか。ちょっと何かあるとおかしくなる。これは心のどこかにゆるみがあるからであろう。』

投下当日の日記。
『私は血まみれの顔をさはつてみるとぬるぬるとした血の中にたくさんの傷口があいている。私はもう目の前が真っ暗になってしまった。ーー夢であつてくれ 夢であつてくれ。此の悪夢からさめたならば、どんなにかうれしい事だらう。』

頭痛、腹痛、精神の苦痛。魚雷工場で初潮を迎えた者もいた。
女学校の引率の先生達は、みな独身女性が選ばれた。きっと現場に行くと亡くなる人が出るのだろう。生徒たちの予感通りになってしまった。
最後まで負傷した生徒達の安否を確認、看護し続けた先生は原爆症になって亡くなった。当時31歳。私と同じ年齢だと思うとさらに込み上げるものがある。

そして身体の傷は、精神の傷をも作ってしまった。
"ある男の人から、『女が顔に傷があると大いに結婚にさしさわるよ』と、明言された悲しさは、深く心に残ります。わたしはは顔の傷をかくすため、厚化粧をしました。わたしの青春は本当に灰色でした。"

正しいと信じることをしっかりと主張できているか。長いものに巻かれていないか。
本当の民主主義とはなにか?ついても考えさせられた一冊。
終戦記念を迎える時期におすすめしたい。

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