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夢は現実よりも鮮明に残酷に現実的だーTVピープル(村上春樹)

ここで短編集を挟んだ。
読みやすく、一気に読めた。

⬛︎TVピープル
自分が見えてる現実が、もしかしたら"現実"ではないのかもよ。TVピープル達は突然部屋に入ってきて、謎のTVを置いていった。
彼らは飛行機を作っている。でもそれは飛行機ではない。
どう足掻いたって飛行機に見えないものも、色を変えたり1日経てば飛行機に見えるんだ。
そうなのだろうか?
もしそうなのだとしたら、私たちは多くの現実を自分が見たいように歪めているのだろう。

⬛︎飛行機―あるいは彼はいかにして詩を読むようにひとりごとを言ったか
夫と子供の居る人妻である彼女と、年下の彼の話。
彼は詩を読むようにひとりごとを言う。
彼女は泣く。
どこかしら宗教味を感じる神々しさのある短編だった。

⬛︎我らの時代のフォークロア―高度資本主義前史
ダンスの五反田君のような人たちの苦労を見た。この道が正しいと進む人はどこまでも、ある意味誠実に生きている。たとえそれが道徳的に間違っているとしても。道は一つしかないのだと。

⬛︎加納クレタ
残酷なんだけれど、好きな短編。
ミック・ジャガーの声を真似て唄いながら妹クレタのために死体を埋める加納マルタが好きすぎる。

⬛︎ゾンビ
人の内なる不安が自分を襲う。夢の世界は現実と繋がっていて、現実よりも鮮明に残酷に現実なのだと思った。

⬛︎眠り
本作が一番強烈だった。
少しずつ確実に変化する自分を置き去りにしたまま日々は過ぎる。
眠りを手放してでも自分を取り戻したかった彼女の気持ちを自分と重ねてしまった。
傾向という言葉で消費されてしまった心の叫びは死をも意識させる。どこで間違ったのだろうか?

【眠り】についてはもう少し深く考えたい。また機会を作りアウトプットすることにしよう。

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