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イタリア・南チロルを歩く 第3回目 Montan/Montagna

2月に入り朝晩はマイナス、日中は10度越えとか、何かと温度調整が難しい南チロルの南部「低地」に住んでおります美波ラーナです。

さて、今回歩く南チロルの小さな村は前回歩いた「Auer/Ora」の村から東にある山を登っていくと最初に見えて来る村「Montan【独】Montagna【伊】」を紹介。

前回歩いた「Auer/Ora」はこちらから

Auer/Oraから車でヘアピンカーブを攻める事およそ5分でMontan/Montagnaの村が見えてくる。標高は497m、ヘアピンカーブを頑張った分は登っている。当たり前だ、それ。


リンゴ畑から遥か先には州都Bozen/Bolzanoが見える

村の中心に行くまでに歩いていると左側に広がるパノラマ。Etsch/Adige川の東側では一番高いところにある村だけに視界を遮るものも少なくて、空気も心なしか澄んでいる気がする。いや、間違いなく空気が良い!人口は約1700人、平日のお昼前の広場付近には老人ホームからコーヒーを飲みに出てきたおじいちゃんだけだった。おじいちゃんは私のようなアジア人が珍しかったのか、私のことを「ジィー・・・・・」と見てきた。まあこの辺の村にひょっこり行ったら大体こんな風に見られるのが普通なので特に気にするわけでもなく写真を撮ろうかなぁと思っていると、

「Grìeß-di ! (グリースディ!)」

と挨拶してきたのだ。あらあらこれは結構珍しい!しかも南チロル弁で。私も気負う事なく「グリースディ!」とおじいちゃんに返した。おじいちゃんは納得したのかカフェに入っていった。ここでおじいちゃんとの南チロル弁での会話が開始したら私は死亡確定であったろう。ドイツ語の方言の一つといわれている南チロル弁だが、方言を域を超えた別言語と言っても過言ではないのでとてもじゃないが理解不能なのだ。


静かな村に響きわたるのは幼稚園の子供達の楽しそうな声でした

さて無料駐車場から歩くこと、いや上ること3分ほどで村の中心部に到着。村役場と銀行と郵便局が集まって非常にコンパクト。おまけに村のツーリストインフォメーションも同じ建物にある。この広場、いやスペースは村の心臓部なので用事を済ませるための一時駐車場もあり便利だ。まあ私はここには止めないが。空いていないことの方が多いので探す手間を考えたら、舗装されていない無料駐車場に停めて歩く方が確実なのだ。しかしこれも観光シーズンとなってくると無料駐車場に車を停めてハイキングを楽しむ人たちが増えるのでさらに手を打たなければならないのだ。まあ大体停められるけれどね。


左から郵便局、銀行、村役場とコンパクトにまとまっている

この「Montan/Montagna」 の村の特徴はなんぞや?と思いながら少し村を散策すると、壁に施されている伝統的な画が沢山ある。消防車、音楽団、パン屋さんなど看板の代わりに壁に描かれている。壁に描かれた日時計も心なしか他の村より多い気がする。壁画に書かれた文字はほとんどがドイツ語だ。それもそのはず、この村の93%がドイツ語話者なのだ。幼稚園、小学校もドイツ語の学校しかない。イタリアなのにドイツ語しか通じないのか?って思いますよね?ドイツ語が話せる人ならイタリアなのにドイツ語通じてラッキー!ってなりますが、イタリア語を話す人は?普通にイタリア語で大丈夫です。先述したおじいちゃんとの会話はイタリア語では難しいかもしれませんが、大体の村の人はイタリア語が話せます。なので安心して足を運んでください。まあこんな言語環境なのでドイツからこの村へ引っ越して来る人も少なくない。


こんな格好良い壁画が村のあちらこちらに。これは消防署の壁画

まあなんとも長閑で静かな村だが、小高い丘の上にある地理的に重要なこの村を「イタリア化政策」で何度も取り込もうとしたが、その度に住民が激しく抵抗したために今の形となっている。ドイツ語9割越えも抵抗運動の一つの結果だろう。ここは南チロル人にとって重要な村なのだ。


イタリア色は全く伺えない

南チロルの名もない小さな村「Montan/Montagna」は静かで、穏やかで、ゆっくりと時間が流れる村だ。きっと昔からこの村はこうなんだろう。その「変わらない暮らし」を歴史の悪戯から守り通した「変わらない暮らしを変えない」村人の精神は誇り高い。美しい村だと思う。


変わらない事を変えない美しさ

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