女の朝パート48

10月9日水曜日 ここは八王子。


八王子駅構内は行き交う人々を他所に穏やかな空気が流れていた。

人の流れは変わらずあるけれど朝の通勤ラッシュとはまるで違う。


同じように、

ここスタバにも似たような空気が流れている。

居心地が良い。

珈琲も美味しい。

晴れ渡った空に浮かぶ真っ白な雲、

その近くを飛行する大きな機体、

遠くに見える山々、建物の輪郭。

今は全てはっきりと見えている。

これまで、どうでもいいと思っていた事が、

今はあるがままの姿としてこうもはっきりと見えてくる。


生きて本当に良かった。



暗転




左から右への一本道。

猛烈な勢いで疾走している女の姿が飛び込んでくる。

世界陸上が盛んな今日この頃だがあの様な美しさとは完全に無縁だ。

着衣を乱し、スカートを捲し上げ、

口から白煙を吐き出し、

鬼のような形相をしながら走っている。

何だか不気味だった。とても怖かった。

なるべくなら関わらない方が良いとも思った。

その時だった。

疾走していた女がいきなり消える。



暗転



女は完全に均等を失っていた。

腰が砕け白眼を剥いている。

目の前の珈琲に口もつけず、ただぼっとしている。

椅子が支えになっているおかげで、座った姿勢を辛うじてキープしている。



あれは幻覚だったのだろうか?

あの女は確かにスタバ女だった。

気付いた時にはもういなく、

構内から直進した所にあるスタバに吸い込まれていった気がした。




暗転




予測通りスタバ女が現れる。

椅子に座ると先ずは写メ。

順調な運び出し。ちゃんと手順を踏んでいる。






暗転


立川から青梅線に乗って仕舞うとは予想外だった。

お仕事には余裕で間に合うし、スタバにも来れたけれど、今日はちょっと驚いた。

しかし、洗濯機が壊れていないだけで、こうも幸せだとは、、。

新しい洗濯機を買えた喜び、

新しい洗濯機が届いた時の嬉しさ、

新しい洗濯機を取り付けてくれた気立ての良いヤマト運輸のおじさんといけめん、、。

願ってなくとも喜びは拡がる。



暗転


女が一人でどうでもよいことをつぶやいていた。

知ってか知らずか、スタバ女は尚も沈黙を貫いている。







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