女の朝パート113
2月12日水曜日。
今日の東京の最高気温は17度。
永くて寒く、
何だか物憂げさしか感じない季節、冬が終わり、
暖かくて柔らかく、何だか胸のときめきを感じる季節、春の到来を肌で感じる今日この頃。
新緑の芽、開花する蕾、虫達の孵化。
地球上に存在する全ての命たちが、
自分達の時代の到来だぁと叫ばんばかりに、
どこからともなく嬉々として、
全身でその喜びを表しながら、
今すぐにでも神出鬼没してきそうではないか?!
珈琲を飲みながら女が一人ぶつぶつ呟いているとき、
その隣にいたおんなの顔は、
その女とは違い何だかとても陰鬱だった。
良く見ると、
そのおんなのテーブルだけには、
本来あるべき、
スタバのエンブレム、セイレーンが刻まれたマグカップが置かれていない。
不思議だった。
色々不思議だと思った。
ここでは皆がスタバのエンブレム、セイレーンが刻まれたカップをテーブルに置いてあると言うのに。。
まるで、⬆️画の丸は、
おんなの心に空いた穴を、そっくりそのまま表しているようにさえ見える。
しかし、おんなは強かった。
一人孤独の縁にたたされ、寂寥感や絶望感に苛まれようと、いずれ来るであろうその時を、
一人じっと待ち忍んでいるようにも見えたからだ。
そんなおんなを見かねたのかどうだかは解らないけれど、
緑色のエプロンをつけたイケメン店員さんがおんなに歩みよる。
そして差し出したのだった。
お待たせして申し訳ありませんでした。
にっこり笑うと、
ごゆっくりどうぞ。とおんなに囁きかけ、
その場を立ち去っていく。
その次の瞬間だった。
先程まで無かったおんなの頬が、
ほんのりとした桜いろに染まったではないか。
そして、ぶつぶつ呟いていた女はいなくなっていた。
ここは八王子のサザンスカイタワー2階にあるスタバ。
完
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